年度 ; (1967) |
監督 ; 森川時久 |
脚本 ; 山内久 |
音楽 ; 佐藤勝 |
出演 ; 田中邦衛、橋本功、佐藤オリエ、山本圭、松山省二、石立鉄男、夏圭子 |
俳優座と新星映画が製作した社会派青春ドラマの代表作。 両親を亡くした佐藤家は、太郎(田中邦衛)、次郎(橋本功)、三郎(山本圭)、末吉(松山省二)、オリエ(佐藤オリエ)の5人兄弟で暮らしている。 金には厳しく、まだ学生の三郎、末吉は1食ごとに食事代を取られていた。 食費滞納をめぐって兄弟げんか。家事を一手に引き受けていたオリエが家出してしまう。 学生運動が盛んな時代。三郎の大学では授業料4割アップに幻滅し看護婦を目指してキャンパスを去る女学生、靖子(栗原小巻)もいた。 三郎は、活動費を持っていった委員長、小川隆(江守徹)の家を訪ねる。工場主だった小川の父(大滝秀治)は、自分は癌を患っており、息子が無事卒業して安穏に生きてほしいと願っているということを話す。三郎が玄関を出ると、小川が立ち聞きしていた。三郎は、とにかく金は戻すように言う。 オリエは幼なじみのマチ子(夏圭子)のアパートに転がり込んでいた。マチ子は務めているプラスチック成型工場が閉鎖中のため、製品である雑貨の行商をしてしのいでいる。 オリエの不在でガタガタしている佐藤家では、受験生の末吉がすっかりナーバスになっていた。 工場に働きに出たオリエは。親切な青年、戸坂(石立鉄男)に心惹かれる。 ある日、オリエの居場所を突き止めた次郎が訪ねてきた。マチ子たちの苦境を知った次郎は、プラ製品の行商に協力する。 オリエは工場の仲間から、戸坂が原爆被爆者であることを知らされた。 マチ子に惚れた次郎は家族に紹介したいというが、彼女は決まった人がいるという。相手は労働活動の指導者だった。 雨の日、ずぶ濡れでオリエが帰ってきた。マチ子たち工員が指導者に行商の売上金を持ち逃げされ活動は頓挫、失望したマチ子は母親の酒場に勤め始めたのだ。 話を聞いた次郎は酒場に行きマチ子を説得する。彼女は母親の店を飛び出し行方をくらましてしまう。 太郎は、会社の先輩、桜井(井川比佐志)から娘、淑子(小川真由美)の結婚相手にという話を持ちかけられた。太郎はすっかり感激する。 マチ子が弁当屋で真面目に働いていることを知り、次郎は喜ぶ。 太郎の働く工事現場で事故が起こる。太郎は怪我をした仲間のためにカンパをつのるが、会社からの保障の薄さに激怒する。彼は経営者に談判しようとする。暴力沙汰を起こしても無駄だと三郎は止めるが、兄の熱い思いには共感していた。 小川の父が亡くなり三郎は通夜に列席した。小川は棺に納めた遺品まで漁ろうとする親戚たちに腹を立て掴みかかる。三郎と2人きりになったとき、小川は工場で頑張るつもりだと告げた。 三郎は、靖子と再会。彼女は看護学校に通い始め元気にやっていた。 オリエの交際相手が被爆者であることから太郎と三郎が対立。無知な太郎に、三郎は現在無事に過ごしている被爆者は一般の健康人と違わないことを説明する。 三郎はオリエの交際を知って文献を片っ端から調べていたのだ。次郎と末吉もオリエに味方する。 戸坂は、身を引いて会社を辞め姿をくらましてしまう。オリエは彼を探し始める。そして靴職人となっている戸坂と再会した。 会社を首になった太郎は、淑子に交際を断られてしまう。淑子は打算的な自分の考えに悩みつつも、太郎の学歴や将来性に戸惑いを感じていたのだ。 失意の太郎が帰宅すると、末吉が受験に失敗していた。 受験を諦めて働くという末吉に、学歴の必要性を感じている太郎は何が何でも大学に行けと言う。 下働きの身は怪我しても二束三文の涙金しかもらえないのだ。納得できないことはしたくないという末吉に、太郎は頑なにゆずらず掴みかかる。 勉強なんかしなくても良い、何年かかっても大学を出ろ、人生には見てくれが大事だ、オリエも俺が相手を見つけて結婚させる、太郎はすっかり自分の世界に浸っている。 独りよがりな長兄に、オリエと末吉は自分の生き方をすると宣言。暴れだす太郎を次郎が羽交い絞めにした。 自分の生き方を他人に押し付けるなといさめる三郎。太郎は、お前は自分と次郎のおこぼれで生きてきたカスだと三郎を罵る。 二人は取っ組み合いを始めた。三郎は、金で死んだ母さんの魂が浮かばれるか、とバイトで稼いだ1万円を燃やしてしまう。金なんて紙っきれだ。人間は、こんな紙っきれより強いんだ。 太郎はショックで失神してしまった。 翌日、工事現場でも仕事に身が入らない太郎を、三郎と末吉が訪ねてくる。三郎は9千円を持っていた。昨晩燃やした金のうち本物は表の千円のみ、あとは本当に紙っきれだったのだ。 末吉は夜間学校に通うことを考え始めていた。とりあえず今はバイトに精を出す二人。 馬鹿じゃねえや、あいつ。太郎は、三郎の機知に感心するのだった。 日本が高度成長を続け、それでも貧富の差が根強く残っている中で、ひたむきに生きる青年たちを描いた力作。 きわめて真摯な力を持っており、多少頭でっかちな印象は部分はあっても、胸を打つ作品に仕上がっている。とにかく社会の中で生きるということに真正面から取り組んだ熱さに満ちている。 同名テレビシリーズの映画版ということは知っていたが、その番組があまりにも社会批判がきつかったため、若い視聴者層に圧倒的な支持を得たにもかかわらず、テレビ局側の思惑によって最終的には打ち切られたことを最近になって知った。映画版も資金的には、かなり厳しい状況の下で製作されたらしい。今見ると、その後大物スターになる俳優座の若手が多く出演しているので、けっこう豪華な顔ぶれに見える。 三部作それぞれが優れた作品と思うが、一本の映画としての完成度は、やはりこの一作目が一番高いと思う。 |