年度 ; (1969)
 監督 ; 森川時久
 脚本 ; 山内久
 音楽 ; 佐藤勝
 出演 ; 田中邦衛、橋本功、佐藤オリエ、山本圭、松山省二、石立鉄男、夏圭子
自主上映でのヒットを受けて製作された「若者たち」の続編。サブタイトルに「続若者たち」と付く。
内容も前作を引き継いでおり、主人公である佐藤兄弟以外の主要キャストも引き続き出演している。
間崎ミツ(木村夏江)は出稼ぎの父が帰らず、母に恋人が出来てしまったため一人上京した。
トラック運転手の次郎(橋本功)の恋人、町子(夏圭子)は、かって労働運動の指導者だった前の男、塚本に就職を頼まれていた。
オリエが働く製靴工場のはるえは、規則にうるさい寮生活に馴染めないこともあり体調を崩してノイローゼ気味。
はるえは買ってきたウサギを寮長に殺され暴れだしてしまう。彼女は強制的に退職にされ、仲間だったミツも免職にされてしまった。職場の課長(名古屋章)は相手にならず、労働組合も動いてくれない。
話を聞いた三郎(山本圭)は、労働基準法に違反している部分があるにもかかわらず会社に従ったミツたちにも落ち度があると理論家ぶりを発揮。
実利主義の太郎(田中邦衛)は、家賃と食費6千円を払って佐藤家に住むようミツに勧める。
塚本が自殺を図ったことから次郎は、町子が彼女らの貯めた労働運動資金を持ち逃げした昔の男と別れきれずにいることを知って苦悩する。
次郎はミツに復職運動をするように勧める。どこにいっても大変なんだから、今いる所を良くしたほうが早いと。
学生運動に身を投じている三郎が怪我をした。彼は学費を横領した学校の理事を糾弾するが、太郎は役員がそんなことするのは当たり前だと言い出す。
ある日、母親の恋人がミツを訪ねてきた。本気で結婚を考えており、ミツに了解してもらいたいのだ。駅での別れ際にミツは彼に家を頼むと伝える。
母も帰らなかった父も許したミツは、積極的に復職活動を始めた。だが、工員たちの反応は冷たい。
それでも協力してくれる組合もあり、ミツは明るさを取り戻していく。
オリエは被爆者の戸坂(石立鉄男)の消極的な性格が不満で、別れてしまっていた。
太郎は、ようやく手付け金を貯めて土地を買おうとしていた。家族の一軒家を持つのが彼の夢だった。
工事現場で太郎が張り切りすぎたため、10人の労働者が逃げ出してしまう。留守中に訪ねてきた太郎の部下、武は、最近の太郎が会社の言いなりでが、現場で働く人間の気持ちを顧みなくなっていると話す。
土地は諦めて仲間を考えるように言う三郎、主任に抜擢されるチャンスを逃したくない太郎。土地買ってアパート建てて楽して暮らそうという現代っ子の末吉(松山省二)。
オリエは、武に付き合ってくれないかとj告白された。その日、オリエは原水爆反対デモの行進の中に戸坂の姿を見つける。オリエは走り出し、戸坂とともに行進を始めた。
三郎は、ぶち壊し活動を始めた学生運動の仲間、小川(江守徹)に談判する。強硬派の小川は耳を貸さない。
学生運動のニュース映像に「昭和ブルース」がかぶさる。道を見失ってさまよう三郎。
学校のような小さい社会ですら友情が成り立たない現実に、理想家の三郎は迷っていた。
三郎は就職の最後のチャンスとして二次募集のあった会社の面接に行く。学生運動や労働問題が話題となり、三郎は本音を洩らしてしまう。結局、会社が採用したのは当たり障りのない発言をした者たちだった。
それでも理想を捨てられない三郎に、太郎はこれ以上勝手なことを言うなら家を出て行けと言う。すでに太郎は土地の手付け金を払い込んでいた。
塚本が町子の会社の金を持ち逃げしたため、保証人の次郎が穴埋めしなければならなくなった。太郎は町子をスベタ呼ばわりして暴れ、出て行ってしまう。実はその日、太郎はミツにプロポーズしてふられていた。三郎はミツに「大兄が嫌いか、俺は好きなんだ。どうしても食い違うけど。、好きなんだ、すごく」と言う。
次郎は、少しずつ金を返すことでなんとか町子の会社と話をつけた。意地を張って生きてきた町子の心も、次郎の温かい言葉にほぐれていく。
太郎が胃痙攣を起こして倒れた。土地会社が倒産、社長が逃亡して払い込んだ金が一銭も返ってこないのというのだ。次郎は金なんか気にするなと励ます。
三郎は、そのほうが良かったと言って太郎と大喧嘩となり家を飛び出していった。
その日はミツの争議の初公判。とにかく祝おうと言う次郎に末吉が噛みつく。末吉も土地購入に自分の金をつぎ込んでいたのだ。
太郎は、血迷って末吉と二人で暮らすと言い出す。
そこにふらりと帰ってきた三郎は、西表島に教員の口を見つけてきたと言って荷造りをはじめる。
次郎やオリエは、逃げ出してきた教師に教えられるのでは子供が可愛そうだと言う。あと2年はかかりそうなミツの公判を放り出すのかとも。
何やってたって自信がないんだ、三郎は告白する。彼は就職試験で自制できず言いたいことを言った後に、現状に満足していると言いかけた自分が信じられなくなっていた。
それまで黙っていた太郎が布団から起き上がり「駄目じゃねえ、おめえは」と止める。太郎は身ぐるみはがれたわけではなかった。まだ現金を残していた。
太郎は、三郎に金を突きつけ、どこにもいかねえで勉強しろ、そして俺にどうしたら良い社会が作れるか教えろ、人間は何のために生きているのか俺に教えろ。宝物だ、おめえは、と励ます。三郎の顔がほぐれたところでドラマは終わる。
基本的に群像ドラマなのだが、曲がり角を迎えた学生運動を背景に、苦悩する三郎の姿が中心となっている。1作目では少々格好良すぎた三郎の、アンチテーゼ的な意味合いもあるのだと思う。
最終的に三郎がどういう決断をしたかは描かれない。観客個人個人の判断に委ねたということなのだろう。
生きるということへの真摯な取り組みは1作目と変わっていない。
高度成長期の中で企業が邁進していく中、ともすれば下敷きにされてしまう労働者の問題にも正面から取り組んでいる。
反発しあいながらも強い絆で結ばれている家族の物語としても良く出来ている。
就職試験で面接を受ける学生の役で前年主役デビューを果たした原田芳雄が端役出演している。その後の作品も、ほぼ主演級ばかりなので、何かの縁があってゲスト出演したのかもしれない。
挿入歌のブルーベル・シンガーズによる「昭和ブルース」は、その後テレビ・ドラマ「非情のライセンス」の主題歌として主演の天知茂によってカヴァーされたので、かなりスタンダードな曲となった。
若者はゆく
ストーリーは基本的にラストまで
紹介してあります。
この作品はDVDが発売されているので
鑑賞が可能です。御注意ください。