年度 ; (1979)
 監督 ; 篠田正浩
 脚本 ; 田村孟、三村晴彦
 音楽 ; 冨田勲
 出演 ; 坂東玉三郎、加藤剛、山崎努、井川比佐志、常田富士男、三木のり平
泉鏡花の戯曲を映画化した伝奇ファンタジー。
篠田監督作品は、それほど多く見ていないので断言できないが、「悪霊島」のように細かいストーリー描写が必要な作品よりも、本作のように映像で勝負する作品の方で本領を発揮するのではないかと思う。
坂東玉三郎映画初出演というのもウリの作品。
アップのある映画では、さすがに娘役・百合はきつい部分もあるが、龍神の化身・白雪姫は艶やかで見事だった。
CGもない時代、アナログな着ぐるみとメークで演じられる池の精たちは評価の分かれるところだろうが、水木しげるの世界みたいで個人的には好き。
特にドジョウヒゲの似合う三木のり平と可愛い石井めぐみが印象的だった。あと、そのまんま民話っぽい常田富士男のカニとか。
日照りが続く越前の琴弾谷、夜叉が池のほとりに暮す百合(坂東玉三郎)。
そこにやってきた植物学者・山沢学円(山崎努)。
学円は各地の民話を集めて旅していたが、百合の夫が行方不明の友人・萩原晃(加藤剛)であることに気づく。
晃もまた伝承を集めて旅するうち夜叉が池にたどり着き、鐘楼を突く老人から、鐘を突き忘れると夜叉が池に封印されている龍神が解放され津波が起こって村が呑まれるという言い伝えを聞かされていた。
老人が死後、晃はもし言い伝えが現実となったら百合の命もなくなると考え、この地にとどまって鐘を打ち続けることにしたのだった。
湖底では龍神の化身・白雪姫(坂東玉三郎)が、剣が峰の若者から恋文をもらい、たった一日でも鐘がならなければ、夜叉が池を飛び出して逢いに行くのに、と嘆いていた。
そんなある日、百合の叔父でもある神官が村人を率いて、百合を雨乞いのための人身御供にしようと迫ってきた。
百合を守ろうとする晃との激しいやりとりに、いたたまれなくなった百合は鎌で胸を突いて自害してしまう。
絶望した晃と学円は、百合の体を抱えて鐘楼へと上がり、綱を切って鐘を夜叉が池へと落としてしまう。
その途端、暗雲が広がり雷鳴が轟き、村はあふれる水に呑まれていく。
解放された白雪姫は、歓喜の声をあげながら従者を伴って虚空を剣が峰へと飛び立つ。
夜叉が池のほとりには独り生き残った学円の合掌する姿があった。
夜叉ケ池