インキュバス死霊の祝福

　原題　；　DEADLY　BLESSING(1981)

　監督　；　ウェス・クレイヴン

　脚本　；　グレン・Ｍ・ベネスト、マシュー・バー、ウェス・クレイヴン

　音楽　；　ジェームズ・ホーナー

　出演　；　マレンジェンセン、シャロン・ストーン、リサ・ハートマン、アーネスト・ボーグナイン

ウェス・クレイヴン監督によるサスペンス・ホラー。シャロン・ストーンの初期出演作。いまやベテランとなった作曲家ジェームズ・ホーナーにとっても比較的初期作品に当たる。
ヒッタイトと呼ばれる一族が暮らす田舎の農村。彼らは古い信仰を持ち、機械を否定した生活をしていた。
巨体でスキンヘッドだが精神は子供のウィリアム（マイケル・ベリーマン）は、よそ者の娘フェイス（リサ・ハートマン）をインキュバスと呼んで毛嫌いしていた。
ジムは、都会の学校に進学したため父親から縁を切られ、マーサ（マレン・ジェンセン）と結婚して帰って来て、機械を使った農耕をするようになっていた。
ある夜、不審な物音を聞きつけて納屋に入ったジムは、動き出したトラクターにはさまれて死んでしまう。
一人になったマーサを励ますため、親友のラナ（シャロン・ストーン）とヴィッキー（スーザン・バックリー）がやって来た。
事故現場を見ようと納屋に忍び込んだウィリアムは、逃げるとき靴が脱げてしまう。
父親に叱られたウィリアムは、靴を取り戻そうと夜中に再びマーサの家に来た。窓からマーサの裸を覗いていた彼は、背後から何者かに襲われ殺されてしまった。
ジムの父親で長老のイサイア（アーネスト・ボーグナイン）は、一族に土地を売るようマーサと交渉する。彼はマーサをインキュバスと呼ぶ張本人だった。
ラナは、正体不明の男に呼ばれる悪夢に悩まされた。夢の中の男は蜘蛛に変身したという。
ジョギングしていたヴィッキーはジムの弟ジョンに出会う。彼は父の命令で兄のジムと縁を切っていたが、本当は好きだったという。
二人が話しているところを見つけたイサイアは、許嫁のメリッサ以外の女とは話すなと命じる。
トラクターの修理をしようと納屋で部品を探していたラナが、何者かに閉じ込められてしまう。
蜘蛛の巣だらけの中をさまよったラナは、ウィリアムスの靴を見つける。何者かに脅された彼女の目の前に、ウィリアムの死体がぶら下げられた。
取り調べに来た警察は、何かが起きる前に村を出るようマーサに勧める。
マーサが入浴していると、何者かがヘビを置いていく。ヘビは浴槽へと入り込む。驚いたマーサは火かき棒でヘビをぶち殺した。この場面、カットによってマーサがパンティーをはいてたり、はいてなかったりする。「エルム街の悪夢」のセルフ・パロディであるようにも見えた。
町でジョンに出会ったヴィッキーは彼をデートに誘う。それを見たメリッサはショックを受ける。ジョンは二度とヴィッキーに近づかないと約束するが、婚前交渉に応じないメリッサに欲求不満気味。
マーサとヴィッキーは銃の練習を始めていた。
イサイアのムチ打ちに逆らったジョンを、イサイアは悪魔に取りつかれたと言って家から追い出す。
フェイスの母親ルイザがマーサを訪ねてきた。彼女は「夫は、フェイスが生まれるとすぐに出ていってしまった。男の子だったら殺されていたかもしれない」と、意味不明な身の上話をする。
行くあてもなく町をさまよっていたジョンと出会ったヴィッキーはドライブし、車の中で抱き合う。
霊感でそれを知ったらしいメリッサがナイフを手に家を飛び出していく。
突然ジョンが刺し殺され、車にガソリンがかけられた。ヴィッキーは発進して逃げようとするが、溝にはまってしまう。なんとか脱出したものの追いかけてきた火がまわり、車は爆発してしまう。
マーサはジムの墓が暴かれているのを見つける。棺の中には生きたニワトリが入れられていた。
マーサが家に帰ると不気味な絵が飾られ、ジムの死体が吊るされていた。そこに夢遊病者のようになったメリッサが現われる。だが、マーサを襲ってきたのはフェイスだった。
実はフェイスは男だったが、ルイザが女として育てたのだ。フェイスはマーサに横恋慕して邪魔者を殺していたのだ。
風呂場に毒ヘビを入れたのはルイザだった。
マーサはラナを起こして逃げようとする。襲ってきた二人に発砲するマーサ。フェイスに命中したが、ルイザと乱闘になる。ラナがルイザを撃ち殺した。
フェイスは生きていた。マーサに襲いかかるフェイスを背後からメリッサが刺し殺す。今度はマーサに迫るメリッサ。そこにイサイアが現われ、フェイスの死体を見て「悪魔の手先は死んだ」と言う。その言葉を聞いたメリッサはナイフを捨てるのだった。
事件は解決し、ラナは帰っていった。一人になったマーサの前にジムの亡霊が現われ「インキュバスに気をつけろ」と忠告する。次の瞬間、床を破って怪物が現われ、マーサを地底へと連れ去るのだった。
どうやらヴィッキーとジョンを殺したのはメリッサらしいのだが、はっきりとは描かれていない。
ウェス・クレイヴンが「スクリーム」で復活する前の低調期に撮られた作品で、なんとも中途半端な印象の出来栄え。
中盤まで見せ場が少なくテンポが悪い。
終盤の展開はいかにもこじつけっぽい。フェイスを女として育てた理由を、中盤の母親のセリフだけで説明しようとしているが、父親がどのような人物だったか、どうして男の子だったら殺されるのか、が全く描かれていないので説得力ゼロ。
メリッサが超能力（？）で突然恋人の浮気と居場所を悟ってしまうのも意味不明
唐突なエンディングも、たいしてショッキングな描写ではないし、それまで魔物の話など全く出てこなかったので、狐につままれたような気分にさせられてしまう。
アーネスト・ボーグナインは本作でラジー賞ワースト助演男優賞にノミネートされたが、この役では誰が演じても結果は同じだった気もする。
異色の個性派マイケル・ベリーマンは見せ場もなく序盤で姿を消してしまい、キャラクターを生かすに至っていない。
リサ・ハートマンは新人としてクレジットされているが、テレビでは１９７７年に「奥様は魔女」のスピンオフ・シリーズ「タバサ」でタイトル・ロールを演じている。その後。「哀愁の花びら」をリメイクしたミニ・シリーズ「愛と悲しみのハリウッド」に出演したりもしたが、代表作のないまま今日に至っている。