原題 ; DREAM LOVER(1986) |
監督 ; アラン・J・パクラ |
脚本 ; ジョン・ブアスティン |
音楽 ; マイケル・スモール |
出演 ; クリスティ・マクニコル、ベン・マスターズ、ポール・シュナー、ゲイル・ハニカット |
政治がらみのサスペンス映画を得意としたアラン・J・パクラ監督が、「リトル・ダーリング」など青春映画のアイドル的存在だったクリスティ・マクニコルを主演に描いたサスペンス映画。政治的要素が全くないので、同監督作品中では異色の部類に入ると思う。 フルート奏者の学生キャシー・ガードナー(クリスティ・マクニコル)は父ベン(ポール・シュナー)との日本旅行を控えていた。 彼女は授業の講師をしたピアニスト、ケヴィン(ジャスティン・ディーズ)に誘われ、旅行を中止してニューヨークの演奏活動に参加する。 演奏会は成功、ケヴィンとも良い仲になった。 そんなある日、一人の男がキャシーのアパートに侵入してきた。彼は前の住人マギーの居所を聞きだそうとしているのだが、ついには暴力性を発揮してキャシーに襲いかかる。 キャシーは煮立ったミルクを男にかけ、怯んで彼が落としたナイフを拾って背後から刺し殺してしまう。 ベンは事実を話したら正当防衛が通用しないと判断、キャシーに偽証させる。 失意のキャシーは家を出てケヴィンと暮らすことにした。彼女は悪夢に悩まされ、不眠症となっていく。 病院に行っても、効果ある治療法は見つからない。 そんなキャシーに声をかけたのが研究員マイケル・ハンセン(ベン・ナスターズ)だった。彼は人間を実験対象にして研究する資格を持っていないと言いながらも、彼女を治療しようとする。 その治療法は夢の怖い部分に達する前に起きるようにするというもの。それでは不眠症の解決にはならない気がするが、とりあえず悪夢を見なくてすむのでキャシーは大喜び。 キャシーは夢を見ている間にも筋肉が反応する、珍しい体質だった。 ケヴィンのバンドにレコーディングとツアーの話が舞い込む。 悪夢が再開したキャシーは、ツアー開始までに治療したいとマイケルを訪れる。悪夢の中で出会ったのは殺人鬼と化した自分自身だった。 テストを重ねると、なぜか悪夢は途中から楽しい夢に変わってしまう。キャシーが事実を話して苦痛から開放されたということのようだが、明確には描かれていない。 そんなある日、キャシーはケヴィンの浮気現場を目撃してしまう。 キャシーは、マイケルが開発した新薬の無許可実験に協力を申し出る。夢の中で行動している通りに筋肉が反応するというものだ。彼女はマイケルに犯される夢を見る。 キャシーは、マイケルが約束を違えて途中で起こさなかったことに腹を立て帰っていく。 マイケルは回復剤を射ち忘れたことに気づき彼女の後を追うが、すでにツアーに出た後だった。 ホテルで夢遊病状態となって歩き出すキャシー。彼女自身も回復剤を射っていなかったことに気づき、マイケルに連絡を取ろうとするが、彼はキャシーの後を追って旅立っていた。 テディベアを抱いてドールハウスで遊ぶ夢を見るキャシー。夢と現実の区別がつかなくなってきた彼女は、やって来た父を自分が殺した男と混同していく。彼女は父の肩を刺し、ベランダの手すりに登ってしまう。 駆けつけたマイケルは隣室からベランダ越しに進んでいく。 キャシーが飛ぼうとした瞬間、マイケルは彼女を抱きとめることに成功した。 「パララックス・ビュー」「大統領の陰謀」「デビル」などサスペンス映画を得意としたアラン・J・パクラ監督だが、フィルモグラフィーを改めて見ると決定打に欠ける気がする。 中ではジェーン・フォンダにアカデミー主演女優賞をもたらした「コールガール」が一番良かったと思うが、これを頂点に後は下降線だった気がする。 本作も、かなりタガが緩んでいて緊張感に欠ける。サイコ・サスペンスとしても医療サスペンスとしても中途半端な出来ばえ。 この作品はアヴォリアッツ映画祭でグランプリ受賞ということなのだが、よほど不作だったのだろうか。 クリスティ・マクニコルは、結局成人以降キャリアを伸ばせず現在にいたっている。 ゲイル・ハニカットは、父親の恋人役でワンシーンのカメオ主演。俳優の層の薄さも、この作品の欠点。 |