原題 ; THE EDGE OF HELL(1986) |
監督 ; ジョン・ファサーノ |
脚本 ; ジョン・ソア |
音楽 ; ザ・トリトンズ |
出演 ; ジョン・ソア、ジュリアン・ペリ、ジェス・ダンジェロ |
「映画秘宝」にはヘビメタ嫌いの雷神トリトンが降臨してロック・ミュージシャンを次々と感電死させたためコンサート会場ではロシア民謡が演奏されるようになるという壮大な(?)ストーリーの作品として紹介されたが、実態はジョン・ソアなるヘビメタ兄ちゃん製作・脚本・主演によるナルシシズムに満ちたトホホ映画。 とある農家の平穏な朝、朝食の準備をしていた母親の姿が突如見えなくなり、オーブンからは妙な骸骨お化けが飛び出してくる。 一家の全滅を暗示してオープニングは終わる。 この作品、殺人の直接描写はなく、あくまでも暗示するのみで終わっているのが特徴。 演出がスマートならサマになるだろうが、本作では単に貧乏くさい印象。 誰がどうなったか分からず混乱する部分もある。 それから十年後、農家の納屋がスタジオに改築され、ヘビメタ・ロッカー、ジョン・トリトン(ジョン・ソア)率いるバンドが合宿にやってくる。 そこに棲む魔物は、メンバーに化けて誘惑したり、子供に化けて誘い込んだりして一人また一人と殺していく(ことが暗示される)。 四人の追っかけグルーピーが合宿を知って押しかけ犠牲になるというエピソードもあるが、これまた地下室に連れて行かれる場面で終わっているので、何の意味もないし見せ場にもなっていない。 きっとジョン・ソアの知り合いの女たちが「私も映画に出してえ」とかせがんだんで、適当に書き足したエピソードなんだろう。 とにかく残ったのはトリトンと恋人ランディの二人きり。 二人で大きな食卓に座って「みんなサボりすぎだ」と憤慨するお茶目なトリトン。 気を取り直して作曲を始めるが、その間にランディも殺されてしまう。 最後に残ったトリトンの前に、魔物がその姿を現す。 これが昆虫顔のマペットみたいなやつ(サイズは人間大)で、かなり情けない。 「我々の住み処を荒らす者は皆殺しだ」と地縛霊みたいな事を言う。 「誰も死んではいない」意外なトリトンの言葉。 「え、なんで?あんなに殺したのに」うろたえる魔物。 「お前が殺したつもりなのは、おびき寄せるために作り出した幻影にすぎない。俺は最初から一人だったのだ」デタラメな展開。 「俺こそは救世主、雷神トリトンなのだ」大見得を切って変身するトリトン。といっても上半身裸になるだけ。 ジョン・ソアは、素人目にも格闘技系の鍛えた体つきとは違うと分かる、ボディビルによるムチムチ体形。喜んでるのは本人だけで、ポーズつけても、なんだかギャグみたいに見える。 魔物は目玉のついたヒトデを飛ばして攻撃。 ソアは、自分でヒトデを体に押しつけて必死にはがす一人芝居を熱演。 次はトリトンと魔物の肉弾戦。 と言っても、手だけヒョコヒョコ動かすマペット相手に再び一人芝居。 ポコペンと殴られた魔物は「今日は俺の負けだ。覚えておれよ」捨てゼリフを残して赤い煙とともに消えてしまう。 「また会おう大魔神」余裕をかますトリトン。 地縛霊かと思ったら大魔王だって、魔界も人手不足だ。 トリトンは、犠牲になった者たちの墓に向かって「仇は討った」と言い去っていく、って逃げられたくせに。 突っ込み所には事欠かない作品だが、一見の価値あるというわけでは決してない。 余談=映画秘宝」によれば、ジョン・ファサーノは一時的に「エイリアン3」の脚本に加わったが、オチがつまらなくて不採用になったとか。もしかしたらアルバート・ピュンと並ぶ脱力系監督なのかもしれない。 |