製作 ; (1954)
 監督 ; 弓削進
 脚本 ; 小川正
 音楽 ; 奥村一
 出演 ; 若杉英二、草間百合子、須賀不二夫、沼尾釣、藤乃高子、細谷一郎、山形勲
江戸川乱歩原作の明智小五郎シリーズ第一作。実際は少年探偵団もので、内容も子供向きに作られている。
連続活劇形式で1本約40分の三部作に分けて公開されたらしい。合計すると二時間を超え、当時のプログラム・ピクチャーとしては長めの作品となる。
第一部 人か魔か?
怪人二十面相(沼尾釣)による犯罪が続いていた。
渡米中の明智小五郎(若杉英二)に代わって二十面相を捕まえようと、小林少年(細谷一郎)は少年探偵団を招集する。
そのとき団員・羽柴荘二少年の出兵したままだった兄・荘一が中京から復員してくるとの知らせが入った。
喜びにわく羽柴家。その羽柴博士(山形勲)の元に脅迫状が届いた。二十面相が博士の設計した超原子炉の図面を狙っているのだ。
委員会は極秘裏に警察に届けることを決定。帰国祝賀パーティーは予定通り開くことになった。
パーティーのさなか、二十面相から電報が届く。今夜十二時、図面を奪いに行くという予告だった。
警察は厳戒態勢を敷き、少年探偵団も庭に罠を仕掛ける。
十二時になり荘一が二十面相の正体を現す。本物の荘一は戦死していた。
博士を縛る二十面相。異変に気づいた少年探偵が呼ぶ子を吹く。
警察が踏み込み博士を助けるが、すでに二十面相の姿はない。
庭に出た二十面相は罠を踏んでしまった。足を引きずって逃げていく。
二十面相が発砲し荘二少年が肩を撃たれたが、少年探偵は追跡を続ける。
邸外に出られるはずはないのだが、二十面相の姿は忽然と消えてしまった。
明智の秘書で探偵団の実質的指導者、高安玲子(藤乃高子)は荘二を病院に連れて行く。
小林少年は池の水面に突き出た竹筒を発見。水中には運転手が縛られて沈められていた。
運転手に化けた二十面相に荘二は誘拐されてしまう。
明智探偵事務所に怪しい紳士が現れた。明智の不在を確認して去っていく男。
羽柴家に二十面相から荘二と引き換えにミイラの像をいただくと脅迫状が届いた。
白昼堂々トラックを横付けし二十面相の手下が像を持ち去っていく。警察も手を出せない。
荘二は無事帰ってきた。追跡を開始する警察。二十面相は同型のトラックを走らせて警察を撹乱(かくらん)、逃走してしまう。
アジトでミイラの柩(ひつぎ)を前に喜ぶ二十面相。その柩の中から明智小五郎が現われた。
明智は国を売るようなマネをするなと二十面相を説得。二十面相は改心したフリをしてだまし、明智を落とし穴にはめてしまう。
その地下室に水が吹き出てくるのだった。
第二部 巨人対怪人
明智は無線機で小林少年に連絡。中村警部率いる警官隊が二十面相のアジトを囲む。
柩の中に隠れて運ばれた明智が、どうやってアジトの場所を知ったのかは不明。
警官隊に二十面相は明智を殺すと脅しをかけるが、小林少年が先生は不死身だから気にするなと主張、警官隊は踏み込んでいく。これもかなり無茶な展開。
玲子と小林少年たちは邸内を探って明智を救出。二十面相には逃げられたが、設計図を取り戻すことに成功した。
明智が玲子に土産のネックレスを渡していると、車に乗った二十面相が通りかかる。追跡する明智。
二十面相は明智に1対1の決闘を申し込む。受けてたつ明智。格闘の末、明智は滝壺に突き落とされてしまう。
帰国した明智が伊豆で静養すると発表された。その近くには羽柴博士の書類保管庫がある。
その保管庫に二十面相からの予告状が届く。管理人から相談を受けた明智は警察には自分が連絡するという。
刑事と称してやってきた男たちは書類を持ち出してしまった。明智に化けていた二十面相が正体を現し、管理人たちを閉じ込めて去っていく。
崖から落ちたはずの明智が何事もなかったかのようにケーキを土産に帰ってくる。彼は二十面相の手下が辺りをうろついていると言う。
明智事務所の前で騒ぎ立てる男がいた。これは芝居で実は明智の情報屋。芝居を信じ込んだ二十面相の手下が声をかけて仲間にしようとする。
二十面相は玲子誘拐を計画、さらに原子委員会の会員に脅迫状を送りつける。
委員の夫人と称する女が明智事務所を訪ねてくる。脅迫状が届いたので調査してほしいと明智を連れ出す。
その隙に二十面相は明智が負傷したとだまし玲子を誘い出した。
手下は情報屋に銃を渡し、十万円で明智を殺させようとする。情報屋は逆に銃を突きつけ、ギャラを百万円に値上げする交渉をするからボスに会わせろという。
玲子を追跡した少年探偵団は明智に出会う。
そのころ二十面相は玲子をナンパしようとしていた。
二十面相は労務者が明智の部下で明智暗殺に失敗したと聞いて逆上、情婦のサリー(草間百合子)にたしなめられる。
サリーは羽柴博士の娘、早苗を誘拐してきた。早苗とともに閉じ込められた玲子は、突然隠し持った伝書鳩を取り出し手紙をつけて放すのだった。
第三部 怪盗粉砕
無線でサリーと設計図受け渡しの交渉をする明智。そこに玲子の鳩が飛んできた。明智は少年探偵団とともに電波の発信源を辿っていく。
アジトをつきとめた明智一行は玲子と早苗の救出に成功する。
警官隊に気づいた二十面相は屋上から気球で脱出。それを追う警官たちが落ちた気球を取り囲む。
カゴに載っていたのは人形。二十面相はいつの間にかパラシュートで逃れたらしい。
人形には設計図と黄金の塔をいただくと予告状が入っていた。
羽柴博士は銀座の大鳥美術店ショーウィンドウの飾られた黄金の塔に設計図を隠していたのだ。人目につく場所のほうが安全だからという理由らしいが、理解不能。
どうやって二十面相がその秘密を嗅ぎつけたかも謎だが、隠し場所がバレたにも係わらず設計図をそのままにしておくのも不思議。
美術店の付近を捜索した少年探偵は、売りに出ていたはずの空き店舗に人が出入りしていることに気づく。中を調べると穴を掘っているのが分かった。
美術店主は偽の塔を作り、本物は床下に隠すことにした。
いよいよ予告の当日、中村警部は万全の体制で警備に当たっていた。
明智は怪しいヘリコプターが待機しているのを見つけ、二十面相が国外逃亡を図ると推理する。
いよいよ時間となり、「床下の本物はいただいた」と声が響く。あわてて確認すると黄金の塔は消えていた。
そこに明智が悠然と登場。飾られている無事だったほうが本物だと言い出す。確かに中には設計図があった。
明智がこっそりすりかえておいたのだ。彼は店の支配人、門野こそ二十面相だと指摘する。本物を監禁してすりかわっていたのだ。
二十面相は床下に掘られた地下道から脱走する。ヘリコプターに集まってくる二十面相の手下どもは少年探偵の仕掛けた罠にはまり次々と捕まっていく。
車で逃走する二十面相を明智がバイクで追う。野原で格闘となり、逃げた二十面相を少年探偵が取り囲む。
二十面相は銃を抜くがパチンコで打ち落とされる。次にナイフを構えるが投げ縄で縛られてしまう。
海中に落ちる二十面相。明智と少年探偵たちは勝利を祝ってバンザイするのだった。
ストーリー的には突っ込みどころが多い。
現代的な味付けとしたのか原子炉図面をめぐる争奪戦が描かれるのだが、二十面相ならやっぱり美術品と考えたのか、ミイラの像とか黄金の塔とかも出てきて混乱してる。
二十面相は太い眉を逆立てたヘンなメークで登場。明智に変装してもホクロがそのままで、観客がニセモノと分かるように演出されている。
情婦のサリーには妙に冷たくあしらわれ、小バカにされているように見えるのが情け無い。
明智がネックレスをプレゼントしたりして恋人か?と思わせる助手の高安玲子。一見しっかりしてそうだが、実はかなりヘン。
二十面相が発砲して怪我人まで出てるのに少年探偵に追跡を命じたり、二十面相に捕まっていきなり伝書鳩を取り出したりする。
どこに隠して持ち歩いていたのかも不明だが、監禁されてかなりの時間が経過するまで使わないのも謎。早苗が誘拐されるまで待てというお告げでもあったのだろうか。
好評だったのかどうか、怪人二十面相と小林少年の配役を変えた第二弾「青銅の魔人」が作られた。
怪人二十面相