原題 ; NIGHT VISIONS(1990)
 監督 ; ウェス・クレイヴン
 脚本 ; ウェス・クレイヴン、トーマス・ボーム
 音楽 ; ブラッド・フィーデル
 出演 ; ローリン・ロックリン、ジェームズ・レマー、ペニー・ジョンソン、ジョン・テニー
ウェス・クレイヴン監督が「エルム街の悪夢」(1984)と「スクリーム」(1996)のちょうど中間点にあたる低迷期に撮ったテレフューチャー。
「CHAMELEON BLUE」の別題もあり、特殊な多重人格で状況により別人となってしまうヒロインにちなんだと思われる。
残念ながらシリアスともコメディともつかない中途半端な出来で緊張感に欠け、気の抜けた作品となってしまった。
いっそのことコスプレ・サシペンス・コメディに徹底すれば、観る側も割り切って楽しめたかもしれない。
死体が大の字(イーグル)に置かれることから、犯人をイーグルと呼ぶ連続殺人が発生。
担当は強引な捜査で上司から睨まれてる一匹狼のマーキー刑事(ジェームズ・レマー)だった。
今回は若い女性心理学者サリー・パワーズ(ローリン・ロックリン)とJ行動を共にすることを命じられる。
新たな被害者が出て現場に向かったサリーは鑑識のカメラマン、マーティン(ジョン・テニー)と知り合う。
サリーはマーキングされた死体位置に横たわり、犯人はレイプ魔だと言い出す。
マーキーは、サリーの奇妙な行動に困惑させられた。
サリーは、犯行現場を地図上でつなぐと何らかの図形になることに着目、次の地点を推測して単身スポーツ・ジムにおもむく。
ここでサリーは突然、休んだインストラクターの代わりにエアロビのコーチを始めてしまう。結局、ジムでの殺人は食い止められない。
次の現場と予想されるクラブにレザー・ファッションで潜入するサリー。
またしても人格が変わり、からんできたチンピラの股間を蹴り上げ、追ってきたマーキーも殴り倒す。サリーが倉庫に入ると、そこには死体が横たわっていた。
ここらへんで観ている側は、サリーの能力が捜査を妨害するだけで何の役にも立っていないことに気づき始める。
サリーの奇矯な行動にあきれたマーキーは一匹狼のくせに「チームワークって言葉の意味を知ってるか」と説教するが記憶のないサリーにはピンと来ない。なんだかコントみたいなやりとり。
サリーには連続殺人犯に13歳のとき両親と兄を殺され、自分も通風口に追い込まれるという過去を持っていた。
犯人は捕まらず、サリーは他人になることで精神のバランスを保つようになったのだ。
次にサリーが犯行現場として見当をつけたのは名家同士の結婚式。
マーティンと一緒に買った赤いドレスを身にまといパーティーに乗り込むサリー。すでに他人となっており、マーキーも分からない。
その時、向かいの丘でスコープが反射するのが見えた。
マーキーは花嫁に飛びつき殺人を防ぐが負傷してしまう。
このイーグル、シリアル・キラーにあるまじき殺人方法に対するこだわりのなさ。まあ、確かに真相からすれば殺し方はどうでもいいのだが、ライフルで狙撃ってのはいただけない。
サリーは、犯行現場の位置がダーウィンの人体図と重なることに気づく。
捜査から外されそうになったマーキーを救うため、サリーは上司に次の犯行推定場所を教える。こんな重要なこと隠しておくから被害者が増えるんだという気がした。
クラブでの死体は直後にサリーが踏み込んだため、犯人が死体を大の字に動かす時間がなかった。ところが病院でマーキーに渡された鑑識の写真では大の字になっていた。
死体は撮影時に動かされていた。犯人はマーティンだったのだ。
そのころハリウッド大通でオトリ捜査をしていたサリーをマーティンが連れ出す。
やりたくもない張り込みでグチをこぼしていた刑事たちは、さっさと引き上げていく。
マーティンのアパートには死体の写真をコラージュにして作った無気味な人体図があった。
「素晴らしいわ」すでに人格の変わっているサリーは感動する。
マーティンのアパートに車を飛ばそうとするマーキーは署を出た途端追突事故を起こしてしまい通りかかった車を奪う。
なんか、オマヌケ3連発といった展開で、ますます力が抜けてくる。
アパートの屋上でサリーの写真を取り終えたマーティンはサリーを落とそうとしていた。
ぎりぎりで我を取り戻すサリー。マーティンはサリーを道連れに飛び降りようとする。
屋上の縁でサリーの手を掴むマーキー。サリーの足にはマーティンがぶら下がっていた。
相棒は絶対に離さないとマーキーは踏ん張る。力尽きたマーティンは落下していった。
ラスト・シーンで二人が改めてコンビを組むなど、シリーズ化を狙ったパイロット・フィルムだったのかもしれない、だとしても当然のごとく没となったようだ。
余談その一=主演のローリン・ロックリンは出演作が少なく、特に代表作といえるものもないが、強いてあげるならスチュアートゴードン監督の「フォートレス」ということになると思う。
余談その二=特殊な多重人格の女性が、その能力で連続殺人の捜査に協力するという似た設定の作品に榎本加奈子が主演したビデオ・ドラマ「ゆりかちゃん」がある。企画・飯田譲治で鈴木清順がカメオ出演しているが、ストーリー展開はデタラメな部分が多い。ただ能力を捜査に使っているという点では本作よりちゃんとしていた。
キラー・ビジョン