原題 ; VOYAGE OF THE ROCK ALIENS(1988) |
監督 ; ジェームズ・ファーゴ |
脚本 ; S・ジェームズ・ギドッセイ、エドワード・ゴールド、チャールズ・ハーストン |
音楽 ; ジャック・ホワイト |
出演 ; ピア・ザドラ、トム・ノーラン、クレイグ・シェーファー、マイケル・ベリーマン |
ヒロインを演ずるピア・ザドラは「映画秘宝」の記事によれば世界六番目の富豪夫人。1982年の「バタフライ」でゴールデン・グローブ新人賞を獲得するが金で買ったと評判をとり、同作でワースト映画に贈られるラジー賞のワースト主演女優賞、ワースト新人賞をダブルで受賞するという離れ業をやってのけた。その後、同作で更にこの10年のワースト新人賞を受賞、この10年のワースト主演女優賞にノミネート。ピア・ザドラは今世紀最低女優賞にもノミネートされるという快進撃を続けた。映画出演は子役時代の1本を入れても6本しかないようなので、ある意味快挙といえる。 年齢不明の童顔の持ち主で、本作の時は34歳のはずだが確かにティーン・エイジャーに見える。このことはすごいのだが、実年齢を知らなければどこにでもいそうなオール・アメリカンのねーちゃんにしか見えないところが辛い。顔に似合わずドスのきいた歌声は悪くないと思うのだが。 冒頭、黒人チームと白服バイカーチームの対立が、黒人リーダー(ジャーメイン・ジャクソン)とバイカーのレディース(ピア・ザドラ)の恋を交えてロミオとジュリエット風に描かれる。これは本編とは全然関係ないピア・ザドラが金を積んでジャーメイン・ジャクソンと共演したミュージック・クリップ。ここだけ作ってから気が変わって、どうせ金はあるんだしと映画にしちゃったんじゃないかと思う。 全体的にもミュージカルというよりは長編ビデオ・クリップといった作風。 科学調査に出た宇宙人がロックに取り付かれ、音楽性で選んだのが地球だったという設定。 宇宙船がエレキ・ギター型だったりする。 宇宙人が降り立ったのはキャンプ地イリー湖、だが湖水は廃棄物で汚染され怪しげな生物が発生している。 ディーディー(ピア・ザドラ)の恋人フランキー(クレイグ・シェーファー)はロック・バンド・ザ・パックのリーダーだが嫉妬深くてディーディーにヴォーカルを取らせない。 前半は地球人になりすまして地上に降り立った宇宙人のちぐはぐな行動が見せ場なのだが、せいぜいモンキーズの下手なパクリといった出来。 宇宙人のリーダー、アブシッド=ABCD(トム・ノーラン)はディーディーに一目ぼれ。 アブシッドはディーディーを自分のバンドのヴォーカルに誘う。 一方、精神病院からチェーンソーを持った男(「サランドラ」のマイケル・ベリーマン)が脱走。スーパーマーケットでカート一杯の武器を買い込んだりする。チェーンソーしか使わないのに。 ザ・パックはアブシッドを狙うが宇宙人のパワーには敵わない。 最終決着はパーティーでの音楽勝負でつけられることになる。 バンドの対決は、なかなか音楽映画らしい楽しさがあるのだが、ウッドベースにサックスをフューチャーした本格ロック・バンドがペコペコなテクノ・ポップに敗退しちゃうのが時代を感じさせる。 会場の楽屋にチェーンソー男が侵入、警備員との戦いがギャグで描かれるが、やっぱりつまらない。 さらにディーディーの親友ダイアンが襲われるのだが、チェーンソーがエンジン・トラブル、メカに強いダイアンが親切に直してくれたので仲良くなる。 ディーディーはアブシッドに急接近、宇宙旅行とは知らずにツアーに連れて行ってと頼む。 アブシッドは正体をばらすが、ディーディーは気にしない。 一方、フランキーは「もうやんちゃはやめだ」とザ・パックの解散を決意、残されたメンバーは「裏切られた」と仕返しを企む。 アブシッドの星では手術で感情が消し去られると知ったディーディーは同行をあきらめる。 ディーディーはフランキーの元に戻るが、そこに湖の巨大生物(触手のみ)が襲ってきた。 やっと直ったチェーンソーで男が触手の先っちょを切って撃退。 抱きあうフランキーとディーディーを襲おうとするメンバーたち。 危機を知ったアブシッドはメンバーたちを善良なボーイスカウトに変えてしまう。 アブシッドはディーディーをあきらめ宇宙へと帰還するのだった。 曲目は軽いノリで悪くないのだが、どこかで聞いたような印象がつきまとう。よくいえば親しみやすいのだが、裏を返せば特徴がない。 全体的にチープな印象の作りで、大富豪ならもっとすごい映像に出来たんじゃないかという気もするが、本人が画面に出ていさえすれば作品自体の出来栄えはあまり気にしないということなのだろう。ここらへんが超異常の完璧主義を貫いたといわれるハワード・ヒューズとの違いか。どっちが良いとは言えない気もするが。 余談その一=ジェームズ・ファーゴはスピルバーグの「激突」やクリント・イーストウッド作品の助監督を経て「ダーティハリー3」「ダーティファイター」を手がけたが、イーストウッドを離れてからはすっかり最低映画監督に成り果てている。 余談そのニ=ピア・ザドラは、昨年テレビのヴァラエティ番組で大富豪紹介コーナーに出ていた。すっかり太ったおばさんに成り果てていたが、まあ60才近いわりにはやっぱり若く見えた。今でもテレビで自分の番組を持っているとか言っていた。 |