原題 ; SEXTETTE(1978) |
監督 ; ケン・ヒューズ |
脚本 ; ハーバート・バイカー |
音楽 ; アーティ・バトラー |
出演 ; メエ・ウェスト、ティモシー・ダルトン、リンゴ・スター、トニー・カーチス |
この作品は絶大な人気を誇る世紀のセクシー女優の新婚初夜騒動を描いたオールド・タイプの艶笑コメディー。 歌と踊りを交えて進行する(4代目ジェームズ・ボンド、ティモシー・ダルトンも唄う。ビデオ・ジャケットでは3代目007とある。ジョージ・レーゼンビーは、なかった事にされてしまったのか)無節操なオール・スター作品ではあるが、それだけなら何てことはない。 大問題は主役のセクシー女優を演じるのが、当年とって85歳のメエ・ウェストということ。 舞台ででんぐり返しを続ける森光子もマッ青だ。 原作はメエ・ウェストが68歳の時に自作した戯曲。 舞台なら、年齢はそれほど問題にならないが、映画ではごまかしがきかない。 おかげで主人公のアップがない映画と化し、画像は全てソフト・フォーカス、照明は鈴木その子方式のきつめとなっている。 その日、ロンドンの高級ホテル、サセックス・コートでは二つのイベントに沸きかえっていた。 一つは稀代の人気セクシー女優マーロ・マナーズ(メエ・ウェスト)と貴族バリントン卿(ティモシー・ダルトン)の新婚初夜、一つは世界平和サミットの開催だった。 さっそくマーロにアメリカ政府の密使がやってくる。 平和サミットを円滑に進めるためにはマーロの接待が必要なのだ。マーロは、これまでも影の大使として歴史の裏で大活躍してきた。 会議の鍵を握るソ連のアレクシー(トニー・カーチス)は今でもマーロに夢中だという。 一方、バリントン卿は過剰なテレビ報道に抗議に行き、ゲイがホモを意味すると知らずに、「ゲイは陽気ってことだ。僕はいつもゲイだよ」と語り、ホモ疑惑を受ける。 マネージャーのダン・ターナー(ドム・デ・ルイーズ)は、マーロが自伝用に吹き込んだテープを始末するのに右往左往。このテープには、アメリカ外交の秘密が詰まっている。 なぜかダンは厨房のオーブンにテープを突っ込んでしまう。 バリントン卿は、ホモ報道の抗議に行ってボート競技の話のつもりで、4人乗りや8人乗りをやったと語って乱交疑惑を受ける。 その頃マーロはアレクシーと食事を共にしていたが、ケーキに問題のテープが入っているのを発見。アレクシーはなぜかケーキをホテルの庭に捨ててしまう。 テープは、宿泊して合宿中の陸上競技アメリカ選手が投げた槍に刺さり、なぜか選手はテープが刺さったまま持って行ってしまう。 マーロはジムにテープを取り戻しに行き、筋肉男集団に囲まれて婆さんが唄う悪趣味な画面が展開。 ところがテープはトランポリンで跳ねて天窓から飛び出し、壁面を飾るライオンの彫刻の口に飛び込んでしまう。 ホテルにはマーロの4番目の夫で映画監督のラズロー(「キャンディ」のリンゴ・スター)も泊まっていた。 マーロはラズローのカメラ・テストに協力するが、それを見たバリントン卿は男優を張り倒してしまう。 マーロの接待で機嫌をよくしたアレクシーのおかげでサミットは大成功、と思えたが食事の内容をめぐって再び紛糾。 今度はマーロの死んだはずの5番目の夫バンス(ジョージ・ハミルトン)が姿を現す。 ギャングのバンスは警察の目をくらますために死を偽装していた。 マーロは、バンスとの離婚手続きをしたかどうか覚えていないがテープには吹き込んだという。テープのありかを知ったバリントン卿は壁をよじ登って取り戻し、コックに変装した男に渡す。 テープは会議場に持ち込まれ、各国代表の秘密が流れてしまう。マーロがバンスとの離婚手続きをとっくに済ましていたことも判明した。 列席の皆が弱みを握られていたのでおとなしくなり、サミットは成功に終わる。マーロは世界を救ったと賞賛を受けた。 だが、マーロが部屋に帰るとバリントン卿は置手紙を残して去っていた。彼はサミットを成功させるために潜入した大物諜報部員だった。 米軍艦の船室でバリントン卿が独り過ごしていると、いつの間にかベッドにはマーロが潜り込んでいた。 その他、ドレス・デザイナー役でキース・ムーン、サミット議長役でウォルター・ピジョン、本人役でジョージ・ラフト、ホテル・ボーイ役で「モンスター・ドッグ」のアリス・クーパーがゲスト出演している。 製作年度を考えても少々古くさい印象があり、テープをめぐる顛末は無理があって苦しい。10年くらい前にビリー・ワイルダー脚本・監督でローレン・バコールあたりを主演に製作していたら傑作になったかもしれない気がする。 メエ・ウェストは1920年代に舞台で好評を博し、30年代映画に進出した。40歳近い映画デビューのため当時話題を呼んだヴァンプ女優の中でも年増だったらしい。 出演作の大半は脚本も兼ねており、なかなかの才女だったようだが、舞台で得意とした際どい下ネタが当時規制のきつかった映画では使えず、本領が発揮できないと40年代には舞台に戻った模様。 なお脚本の内容は基本的にどれも同じで、色っぽい熟女が男たちを手玉に取るというパターンだったらしい。 メエ・ウェストは、この映画の2年後、87歳で大往生したとのこと。晩年まで、こんなムシのいい役を演じていたのだから、かなり幸せな人生だったんじゃないかと思う。 余談=ケン・ヒューズ監督は代表作が「チキ・チキ・バン・バン」と「クロムウェル」。私はこの2作を見ていないし、他に見た作品が皆ひどい出来だったので、個人的には元祖最低監督という印象を持っている。 |