原題 ; THE WIND(1986)
 監督 ; ニコ・マストラキス
 脚本 ; ニコ・マストラキス、フレッド・C・ペリー
 音楽 ; スタンリー・マイヤーズ、ハンス・ジマー
 出演 ; メグ・フォスター、ウィングス・ハウザー、デヴィッド・マッカラム、ロバート・モーレー
凡庸で緊張感のないスリラー映画。
設定からして無理がある。いくら嵐といっても街中だし、電話は通じるのに英語はダメというのも説得力に欠ける。
顔ぶれは揃っているのだが、B級映画らしい楽しさもない。
女流ミステリー作家ショーン・アンダーソン(メグ・フォスター)は新作の仕上げをするため、ギリシアの田舎町へと一人旅をした。
そこは観光地だがオフ・シーズンで人気は少ない。貸家の家主エリアス(ロバート・モーレー)は、この時期には嵐のような突風が吹くので気をつけるよう言って帰った。
ある夜、エリアスは雑用をしているフィル(ウィングス・ハウザー)に火掻き棒で殴り殺された。
この場面からして唐突。わずかに口論の場面があるが、はっきりした動機は分からない。
後半にエリアスの口が悪く憎しみを買っていた、という説明が入るが、それでも説得力に欠ける気がする。
ショーンは、シャベルで穴を掘る男を目撃する。
好奇心を持ったショーンが調べるとエリアスの死体が埋まっていた。
ショーンは、エリアスの妻に電話をかけるが英語が通じない。
夫のジョン(デヴィッド・マッカラム)に電話するが、嵐のため途中で切れてしまう。
それでも内容は伝わり、ジョンは警察を呼び出そうとする、という設定なのだが、次にショーンが電話したときにジョンはのんびりプールで泳いでたりする。こういった細部の間抜けな描写も作品の緊張感をそいでいる。
フィルは窓を破って侵入、ショーンは屋根裏へと逃げ込む。
エリアスの妻が探しに来たので、フィルは彼女も殺害。
ショーンは、フィルに追いつめられていく。
ようやくジョンの電話が警察とつながり、避難していたアメリカ人旅行者ケスナー(スティーヴ・レイルズバック)が様子を見に行くことになる。警官が嵐だからヤダヨ、と言って旅行者にピストルを渡して行かせるのもヘン。
ショーンは、フィルに熱湯をかけて時間稼ぎしたりしている。緊張感に欠ける描写のため、「ホームアローン」じゃあるまいしという気になってくる。
そこにケスナーがやって来た。
エリアスの妻の死体は消えており、ケスナーはショーンの話に半信半疑。
ケスナーは死体とフィルを探し始める。エリアスの死体も運び去られていた。
そのケスナーも背後から胸を貫かれて死亡。
ショーンはカーテンの後ろに潜む人影を包丁で刺すが、それはエリアスの死体だった。
エリアスの息子の猟銃を見つけたショーンは、フィルを狙い撃ちするが全く当たらない。
窓から侵入してきたフィルに、ショーンは強風にあおられた雨戸を叩きつける。
フィルの持っていたナタが、フィル自身の胸に突き刺さる。
安心したショーンは、夜が明けて外に出る。そこにフィルが襲いかかってきた。
海岸の絶壁を逃げるショーン。ついに追いつめられたとき、突風が吹いてフィルは断崖の下へと落ちていくのだった。
あ、やっぱり、という気もするが、脱力感の残るオチだった。
余談=ヒロインのメグ・フォスターは、やけに色の薄い目が印象的。準主演格の「マスターズ/超空の覇者」「ゼイリブ」よりも「リバイアサン」のラストで張り倒される憎まれ役の方が、無機質な印象を与える目の色と相まって最も強く記憶に残っている。本作以降、B級アクション専門女優と化している。
キラーウィンド/嵐の中の猟奇殺人