原題 ; TOWER OF TERROR(1990)
 監督 ; アーチ・スタントン
 脚本 ; マーク・トーマス・マッギー、ジェームズ・B・ロジャーズ
 音楽 ; チャック・チリノ
 出演 ; ロビン・ハリス、リンゼイ・テイラー、デブラ・デア、オーヴィル・ケッチャム
題名は、数あるおバカ・ビデオ・タイトルの中でもトップ・クラスではないだろうか。
ホラー・コメディで、いわゆるダイ・ハード物ではないのだが、「HARD TO DIE」というまんまな別題もある。
美女とエイリアン」のジム・ウィノースキーが製作、と思ったら監督のアーチ・スタントンもウィノースキーの変名だった。
デタラメさでは「美女とエイリアン」を上まわっており、特に後半は収拾がつかなくなっている。
ドーン(ロビン・ハリス)、ジャッキー(デブラ・デア)、テス(メリッサ・ムーア)、シェーン(ブリジェット・カーニー)に新人のダイアナ(リンゼイ・テイラー)を加えた五人はアクメ下着会社の棚卸で休日出勤。
そのビルの管理人は、五人が殺された事件に関わったことで知られる無気味なオーヴィル・ケッチャム(本人)。
ケッチャム自身の話では、事件の犯人は悪霊化した前の家主ホックステッター。だが、一般にはケッチャム犯人説も根強かった。
そこに怪奇現象研究家ニュートン博士(フォレスト・J・アッカーマン)宛の荷物が誤配される。
中に入っていたのは細工物の木箱で、開けると奇妙な光が飛び出していった。
地下倉庫でスプリンクラーが誤作動、濡れてしまった5人は社長室のシャワーを使って巨乳戦士ぶりを披露。それ以降は下着姿でうろつきまわる。
ここら辺はいかにもウィノースキー作品らしい大バカな展開。
まずテスとシェーンが鉤爪で殺され、次に中華料理の出前が焼き殺される。
ニュートン博士が二人の刑事を呼んでストーリーを説明。殺人鬼のホックステッターは黒魔術の実践者で、死後も箱の中で魂を生かし続ける秘術を研究していた。
誤配されたのは、その箱だった。
ドーンたちは地下室でテスとシェーンの死体を発見、逃げ出そうとするがロビーにケッチャムがいたためエレベーターでオフィスに向かう。すると天井から出前人の死体がぶら下がる。
ドーンは社長が強盗対策で購入した銃を探しに行く。そこにケッチャムが現れたのでナイフでメッタ刺しにする。それでも動き出したため今度はコードで首を絞める。
ドーンがエレベーターに乗ろうとすると、中にはまたもケッチャムが。ドーンはメモクリップを首に刺して殺す。
ドーンを探しに出たダイアナは、なぜか蘇えったケッチャムに襲われ首を折られる。ケッチャムはドーンの死体をエレベーター坑に投げ捨てる。
ドーンとジャッキーは、なぜか二手に分かれてそれぞれ屋上と地下室に向かう。
ジャッキーは、またまたまた現れたケッチャムを階段から突き落とす。それでも立ち上がって追ってくるケッチャム。
屋上に追い詰められたジャッキー。駆けつけたドーンは体当たりでケッチャムを突き落とす。
だが、路上の死体はいつの間にか姿を消していた。
二人は武器販売会社のオフィスを発見、マシンガンで武装する。
またまたまたまた現れたケッチャムを蜂の巣にするドーン。一度は倒れるが、起き上がったので更に撃つ。
そこに死んだはずのダイアンが現れる。
ホックステッターが乗り移ったのはダイアンで、ケッチャムは悪霊と戦い続ける正義の味方だった。
マシンガンの銃撃戦となり、ドーンだけが生き残る。
そこに社長がやってくるが、再び起き上がったダイアンに撃ち殺される。
こちらも立ち上がったケッチャムと撃ち合って相打ちになる。
夜が明け二人の刑事が現場にやってくると、またもダイアンは起き上がりマシンガンを撃ち始める。追い詰められたドーン。
そこに現れたケッチャムがマシンガンを連射、またも撃ち合いになる。
ケッチャムは蜂の巣だが、さしものダイアンも力尽きて動かなくなった。
事件は解決、ドーンとケッチャムは担架で運び出されていく。
ドーンはケッチャムに愛を告白、手を握り合うとウェディング・マーチが流れ、ザ・ビギニングと出て映画は終わる。
倒されても倒されても立ち上がってくる殺人鬼、というスプラッター映画が流行った頃に、ウィノースキー監督は思いついたのだろう。
殺人鬼を正義の味方の変えたら面白いコメディが出来るに違いない、と。
まあ、普通はそれからアイデアを練るのだろうが、ウィノースキーのこと、そこで思考が停止してしまったのではないかと思う。
ラストまでワン・アイデアで押し通してしまったため、何で突然悪霊が滅びたのか全然分からない。
よせばいいのに、と思うベタなギャグを連発する作風は、猫万間に似ていなくもないので憎めない部分もある。反面教師といったところか。
余談その一=この作品、監督だけでなく出演者にも変名が多い。ロビン・ハリスはゲイル・ハリス、リンゼイ・テイラーはカレン・メーヨ・チャンドラー、デブラ・デアはデボラ・ダッチ、という名前で主な活動をしているらしい。本人と表記されているオーヴィル・ケッチャムもピーター・スペロスという俳優の変名で、「メン・イン・ブラックU」に脇役で出演していたりする。
余談そのニ=ニュートン博士役で出演しているフォレスト・J・アッカーマンは、ホラー映画コレクターとして著名な人物。ホラー・パロディ雑誌「フェイマス・モンシターズ・オブ・フィルムランド」の発行者でもある。
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