ゾンビチャンネル

　原題　；　THE　VIDEO　DEAD（1987）

　監督　；　ロバート・スコット

　脚本　；　ロバート・スコット

　音楽　；　スチュアート・ラビノウィッチ、レオナード・マーセル、ケヴィン・マクマホン

　出演　；　ロクサーナ・オーゲセン、ロッキー・デュヴァル、ジェニファー・ミロ

ゾンビの存在に独特な定義を与えた珍作。
シリアスなのかコメディーなのか中途半端な出来栄えで、ホラー映画としては殆ど恐くない。
間の抜けたブラック・コメディーというところか。
ビデオのキャッチ・コピーは「飛びだせゾンビ、また来て「死人！世にも醜悪なゾンビが登場するお笑いホラー！」。
ある朝、作家のヘンリー・ジョーダンのもとに心当たりのないテレビが配達される。夜になると、勝手に電源が入りゾンビ映画を放映し始めた。コンセントを抜いても点いてしまう。
真夜中、ジョーダンが寝てしまってから、画面のゾンビたちが次々とブラウン管を抜け出すのだった。
翌日、誤配に気づいた配達員が訪れると、ジョーダンは惨殺されていた。
３ヵ月後、空き家となったこの家にブレア一家が引っ越してきた。先行して着いたのは娘のゾーエ（ロクサーナ・オーゲセン）。
家に忍び寄るボロボロのズボンの男。これは弟のジェフだった。両親は海外勤務中で帰国は来週。
翌朝、ジョシュア・ダニエルズと名乗る男が訪問してきた。彼はテレビに似ているが違うという物を探していた。ジェフはテレビの販売人と勘違いして追い返す。
ジェフは屋根裏で問題のテレビを発見した。彼は近所に住んでいるエイプリルと知り合う。
話している隙にエイプリルの散歩させていた犬が逃げ出し、森で死んでいた。死体を持ち帰る二人の後ろ姿を醜いゾンビが見つめる。
ジェフがテレビを点けると、またもゾンビ映画を放映中。だが、途中で画面が途切れ、謎の女（ジェニファー・ミロ）が話し出した。気がつくと女は部屋の中に実体化しており、服を脱いでジェフに迫ってくる。
いつの間にか女はブラウン管に戻っていた。その女をゴミ処理人と称する男が殺す。女は朽ちた死体と化した。男はテレビを地下室に持っていき、画面の前に鏡を置くよう忠告する。
ジェフは女の脱いだ服が実体として残っていることに気づき、忠告通りにするが、テレビから出てきた手に掴まれてしまう。なんとか手斧でゾンビの手を切断した。
残った手が蠢き続けるので、ディスポーザーで砕く。
エイプリルの外出中にゾンビが家に入り込む。生に執着があるゾンビたちは家庭生活の真似事を始める。
物音に起きたエイプリルの母親がゾンビに襲われた。アイロンを頭に突きたてて反撃するが、絞め殺されてしまう。続いて父親も犠牲になる。
さらに近所のおばさんも殺され頭から洗濯機に突っ込まれて洗われ、その亭主も首を捻られて死ぬ。
両親の死体を見つけたエイプリルはショック状態。ジェフは彼女を家に連れて帰る。
そこにジョシュアが再びやって来た。今度は話を聞くことにする。
彼はテレビから出てきたものに妻を殺され、そのテレビをオカルト研究所に送ったが誤配されてしまったのだ。
洗面所でエイプリルがゾンビを見て気絶してしまう。
ゾーエは、ゾンビに連れ去られるエイプリルを見た。ジェフたちは、ジョシュアの助言に従って家中の鏡を集める。ゾンビは自分の醜い姿に耐えられない。自分は人間になれないという思いが殺戮に駆り立てるのだ。
奴らを倒す方法は二つ。一つは狭い部屋に閉じ込めること。狂気に駆られて共食いするのだという。
もう一つは人間を殺すと同じ攻撃をすること。実際にはダメージなどないにもかかわらず、自分は死んだと思い込み朽ちていくのだ。
翌朝、ジェフとジョシュアはゾンビを倒しに出る。
まず一体を弓で仕留めた。感覚はないのだが、思い込みで痛がる。ジョシュアは止めを刺すためにチェーンソーを取り出す。
「悪魔のいけにえ」の大ファンというジェフが大喜びでバラした。
二人はゾンビのいそうな小屋に到着。ジェフが罠を仕掛けている間にジョシュアが踏み込むとエイプリルが惨殺されていた。
ジョシュアは、餌としてジェフを木から吊るす。小屋の中で銃を構えるジョシュア。チェーンソーを手に宙吊りで待つジェフ。
ゾンビがやってきたが、ジョシュアは出てこない。群がってジェフの足を掴もうとするゾンビたち。
なんとジョシュアは小屋の中で寝込んでいた。ようやく起きた彼は攻撃を開始。次々とゾンビを倒していく。
ジェフは最後に残った花嫁ゾンビに落としたチェーンソーを奪われてしまう。ジョシュアが鏡で醜い姿を見せ撃退する。
花嫁ゾンビ追跡を始める二人。チェーンソーの音に近寄ると罠だった。ゾンビは自分から突き出た矢でジョシュアを刺し殺す。
チェーンソーを手に追ってくるゾンビ。小屋へと逃げ込んだジェフはゾンビの首をはねるが、自分もチェーンソーに貫かれてしまった。
朝になってゾーエは家を出ようとするが、再び動き出したゾンビに包囲されてしまう。
怖がられるから殺すのだというジョシュアの言葉を思い出したゾーエは、ゾンビたちを歓迎する。彼女はゾンビを地下室に誘い込む。
地下室のドアには鏡が掛けてあるので近寄れない。ジョシュアの言葉どおりゾンビたちは共食いを始め、テレビの中に戻っていった。
家を抜け出すゾーエ。彼女は言葉を失って精神病院に収容された。見舞いに来た両親は家で見つけたといってテレビを置いていく。
映し出されるゾンビ映画。ゾーエの悲鳴で映画は終わる。
この作品では、死者が甦ったゾンビというより、ブラウン管で繋がった異世界からやってくる妖怪とでもいうようか設定になっていることが目新しい。
リージェントのロカビリーっぽいあんちゃんのゾンビなんか印象的だし。
人間の生活に憧れ、自分の醜さを憎むゾンビたちの行動をもっと生かした展開にすれば、ブラックユーモア作品として面白くなったかもしれない。
受像機の中の謎の女と自称ゴミ処理人とか、意味不明でいきあたりばったりな印象の部分も多い。
スタッフ、キャストともに全く無名なのだが、ただ一人謎の女を演じたジェニファー・ミロは、ザ・ナンズという伝説的なパンク・ゴス・バンドのメンバーだったとか（全然知らないバンドだけど）。