ムービー・マンスリー2003年6月 |
ハンテッド ウィリアム・フリードキンは、実を言うとあまり期待してない監督の一人。「フレンチ・コネクション」はわりと好きだけど、「エクソシスト」はそれほど高くは評価していないし、前作「英雄の条件」は最低の内容だった。今回は追跡シーンなどに職人的演出の冴えが見られ水準以上の作品となった。主人公が実戦未経験のプロフェッショナルという設定も面白い。ラストに、もう一ひねりあればもっと面白くなった気がする。 |
六月の蛇 官能サスペンスを装ったブラック・コメディ。感情移入を拒否したキャラクターたちが、エロスというよりはタナトスのドラマを展開する。ざらついたモノクロ・スタンダードの画面が無機質感を高めている。手ごろな上映時間の作品ということもあり、歯切れ良い演出で一気に見せるが、見終わって面白かったかというと微妙。 |
ザ・コア 地底版「アルマゲドン」だが、意外に楽しめた。主人公たちがステレオ・タイプではあるが魅力的に描かれていて、冒険映画としての完成度を高めている。見せ場もきちんと用意されていて、見ている間は楽しめる作品。人跡未踏の場所というのもミソで、なんか地底らしくないなと思っても、誰も見たことないから反論できない。SFXは技術の最先端という感じがしない。そのため、せっかくスケールの大きいストーリーなのに、いまいち大作感に欠けてしまったのは残念。マグマの流れに乗るクライマックスはジュール・ヴェルヌ「地底探検」へのオマージュか。 |
二重スパイ 1970年代の韓国を舞台にしたエスピオナージュ物。主人公は、脱北者を装って韓国に潜入した北朝鮮工作員という感情移入しにくいキャラクター。この主人公の心情の変化が十分に描かれていないので、後半の展開が生きてこない。そのためラストも平凡な印象となってしまった。冒頭で韓国の公安が「南に自由のないことくらい知ってるだろ」とかいって、主人公をたいした容疑もなく拷問していたのはショッキングだったが。 |
黒水仙 見応えのあるミステリー映画だった。小説で言ったら松本清張のタイプか。長い年月を超えた愛と憎しみが胸を打つ。殺人事件を追う一匹狼の刑事によるアクションから、朝鮮戦争当時の人間ドラマが描かれ、さらに舞台は日本にまでのびる。詰め込みすぎになりそうな内容だが、消化不良になっていないのは、たいしたものだと思う。ストーリーには粗い部分もあるのだが、力強い演出でぐんぐん引っ張っていく。日本の国籍を持ち市会議員まで務めた男が、片言の日本語を話すのは少々困りものだが。 |
恋愛寫眞 魅力的な青春映画に仕上がっていた。挫折しかけたカメラマンの卵が、行方不明になった恋人の足跡を追いながら自らの感性を磨いていく姿が切なく爽やかに描かれている。広末涼子は、無意識のうちに周囲の嫉妬心をかってしまうほどの感性と才能を持つ奔放なヒロインをのびのびと演じている。松田龍平は決して器用な役者ではないのだが、なぜか下手な英語で話すのが好きという無器用な青年を好演。今まで見た中では一番良かった。画面転換のワイプ代わりに衛星写真を使って場所の移動を表しているのも面白かった。大役に緊張したのか、セリフの数よりも瞬きの回数が多くなっていた小池栄子にはちょっと笑えた。 |
マトリックス・リローデッド 斬新なアクション・シーンが売り物のシリーズ第二弾。キアヌ・リーブス演じるネオは超人的にパワーアップ。敵もウィルスのように増殖して質より量で襲ってくるエージェント・スミスや実態を消して攻撃をかわす双子の用心棒など工夫が凝らされている。すごいことはすごいのだが、にもかかわらず見終わったあとの満足感には、ちょっと欠けてしまった。話が途中で終わっているというだけなら、「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」や「スターウォーズ/帝国の逆襲」も同じ。あの2作には、なおかつ完成された作品としての重みがあった。予言の話が腰くだけになりヘナヘナとなったとこで続いてしまうので物足りなさが大きい気がする。まあ、期待の大きさに対してということで、決して水準を下回る出来ではないし、完結編に期待をつなぐことには成功しているので、十分役目は果たしたともいえる。 |