ムービー・マンスリー2003年7月
メラニーは行く
「エバーアフター」「アンナと王様」好調だったアンディ・テナント監督だが、今回はノレなかった。フレッド・ウォード他、脇役陣は良いのだが、肝心の主人公が中途半端でイマイチ魅力に欠ける。真実の愛に目覚める、という展開なのだが、玉の輿狙って二股かけてるように見えてしまうし、主人公を正当化するため婚約者の母親を悪役に仕立てた作劇もハナについた。
ALIVE
北村龍平監督が「あずみ」以前に撮っていた作品。まあ、習作といったところか。多分、予算は十分ではなかったのだろうが、映像的にはけっこう頑張っていると思う。だがドラマ部分が弱すぎる。配役は決して悪くないので、脚本と演出の力不足ということなのだろう。ドラマが盛り上がらないと、せっかくのアクションも死んでしまうという見本。
ソラリス
スタニスワフ・レムの名作「ソラリスの陽のもとに」の二度目の映画化。というよりは「惑星ソラリス」のメロドラマ部分をリメイクしたと表現した方が近い内容となっている。何でいまさらという気がしたが、見終わっても同じ印象だった。冒頭には「2001年宇宙の旅」を意識したような映像もあって期待したのだが、中地半端なメロドラマに終始した。肝心の惑星ソラリスに関する描写がスッポリ抜け落ちてしまっているのも残念。技術的には格段の進歩を遂げているのだが、東京の首都高を未来都市として使った前作「惑星ソラリス」の方が豊かなイメージを持っていた気がする。
ホテル・ハイビスカス
「ナヴィの恋」に続く中江裕司監督の新作。不思議な魅力に溢れた作品。初めて見る沖縄の風習だったりするのに、どこか心懐かしかったりする。時代設定はよく分からなかったが、ノスタルジックな雰囲気で沖縄版「三丁目の夕日」という趣もある。主人公たちは皆、おおらかで元気、生きる楽しさを感じさせる。どうやら幽霊らしいおばあさん、妖精キムジナー、帰ってきた御先祖様の霊などファンタジックなエピソードが多いのも魅力だった。
ミニミニ大作戦
スピーディな展開で楽しませるスマートなアクション映画。単なる泥棒物でなく、殺された師匠の仇討ちとしたところが、ドラマに厚みを持たせている。ハイテク技術が得意というヒロインが、最後に腕一つで金庫に挑むなど、展開のひねりもうまい。マーク・ウォルバーグを始めとした主人公たちも魅力的だが、敵役の仲間を裏切って大金をせしめたが、何に使っていいか分からず人真似で暮しているチンピラというキャラクターも面白かった。
デッド・コースター
「ファイナル・ディスティネーション」の続編。一作目の一年後という設定で、「追いかけてくる死の運命」は既知の事柄として設定されているので、細かいストーリー説明は廃し、いかに起こりえない偶然が連発して登場人物が無惨な死を遂げるかという描写に徹底している。潔く見世物に徹した分、一作目よりストレートに楽しめる作品となった。前作の死と物語を交差させて、一作目を見ていれば、より楽しめるようサービスしている点も面白かった。
チャーリーズ・エンジェル・フルスロットル
スチャラカ・コスプレ・アクション第二弾。テンポ良く、お気楽で大好きな作品。ただ、プレタイトルやモトクロスなど派手な見せ場が前半に集中し後半がやや小粒な印象になったのと、デミ・ムーアが「私は天使でなく神になるのよ」とか大見得切るわりにはセコい犯罪なのが残念。一人取り残される妄想に取り付かれるディランというギャグは、もし次作を作るとしたらメンバーが変わるかもしれないという製作者ドリュー・バリモアのセルフ・パロディだろうか。
バトルロワイヤルU鎮魂歌
前作は深作監督の底力を感じさせる鮮烈な出来ばえだったが、今回は何かが違ってしまった。七原秋也は全ての大人たちに宣戦布告するが、無差別テロの大量殺戮で憎しみと悲しみを増殖させ、孤島に籠もって本来仲間のはずの若者たちや末端の兵士たちと殺しあう。権力の中枢は安寧として揺るぎもしないし、世界を蹂躙する超大国は武力介入の口実を得る。無意味な局地戦に命を捧げて犬死していく若者たちの姿は胸の詰まるものがあるが、彼らを死地に追いやっているのは七原という印象になってしまった。群像映画の中での個々の鮮やかな描き分けという点では深作欣二作品に遠く及ばないが、アクションシーンはわりとダイナミックに撮れているだけに、とても残念。教師リキのキャラクターも意味不明だった。
ターミネーター3
ジョナサン・モストウは「ブレーキ・ダウン」「U-571」と質の高い娯楽作を連発して現在トップ・レベルの職人監督ではないかと思う。今回も、ジェームズ・キャメロン監督のような才気は感じさせないが、手堅い演出で楽しめる作品を完成させた。今度のシュワちゃんターミネーターは心理学を修めたインテリで、サングラスにこだわる洒落者。どんどん進化する敵ターミネーターに対して旧式でも頑張るという設定で盛り上げ、「シール・バック」「アイム・バック」といった決めゼリフのヴァリエーション・サービスも怠っていない。でも、このシリーズ、なんだか「猿の惑星」旧シリーズみたいになって続いていくんじゃないかって気がしてきた。「ターミネーター4機械惑星の征服」「最後のターミネーター」とか。クリスタナ・ラーケンのこれまでの代表作は「モータル・コンバット」のテレビ版「モータル・コンバット・コンクエスト」。以前にも一部のエピソードがソフト化されていたが、これを機に全エピソードをリリースしてくれないだろうか。