ムービー・マンスリー2004年3月
ツインズ・エフェクト
香港製アイドル・ホラー・アクション・コメディ。「アンダーワールド」そっくりのオープニングだが、スタイリッシュに流されず香港映画得意のベタな笑いも外さないサービス編。作品全体のバランスよりその場のノリに全てをかけた作りになっている。香港製だからアイドルも楽じゃない。途中に頬を腫らして演技しているけど、演出的には特に必要ないと思えるし、本当に怪我したんじゃないかと思う。スター性という点ではゲスト出演のジャッキー・チェンやカレン・モクの方がやっぱり格上で画面をさらっているが、今回の新人二人も時代劇となる続編を撮影中ということだしガンガン頑張ってほしい。
ゴシカ
とにかくハリー・ベリーの演技力で引っ張るオカルト映画。二転三転するメッセージの意味とか脚色も凝っている。法律的には絶体絶命の状態だったはずのヒロインがどうやって窮地を脱出したかは不明。説明的な描写があっても良かった気がする。見ている間はそれなりに面白いのだが、ペネロペ・クルスを襲う男は生霊だったのかとか、何故霊がハル・ベリーに暴力を振るったのかとか、釈然としない点が残るのも残念。
マスター・アンド・コマンダー
旧式の英国戦艦が、フランスの最新式フリゲート艦(原作は読んでいないのだが、アメリカ船が悪役という設定らしい)と対決するという冒険映画の王道を往く作品。ラストの奇策は途中伏線の描写で分かってしまうが、全体的に戦闘シーンは迫力があり大いに楽しめた。大半は海上が舞台だが、ガラパゴス島の風景を織り込んで変化をつけた構成もうまい。ドラマの軸となる艦長と船医の友情もきっちりと描かれている。ただ、ラストは余韻を持たせようとしたのだろうが冒険映画としては中途半端な印象のものとなってしまった。
イノセンス
期待したのだが残念な出来栄えだった。ストーリーにメリハリが欠けるし、観念的な会話も空回りしている。丁寧に描き込まれた背景には圧倒されたが、どうだすごいだろうと風景を延々と描写した場面があったりするため、作品のテンポはイマイチ。鋼鉄のボディに閉じ込められた人の魂、機械化された人間とロボットの葛藤、といったテーマも、掘り下げ方が不足していると思った。このストーリーだったら、バディ物のポリス・アクションに徹底した方が面白かった気がする。
ロード・オブ・ザ・リング王の帰還
壮大な3部作もついに完結。原作は読んでいないのだが、映画版を見ると「スターウォーズ」「ハリー・ポッター」などの作品に大きな影響を与えていることが分かる。前2作以上の迫力ある映像(前2作のヒットのおかげでCGの予算が増やせたんだとか)と緊張感あふれるストーリーが展開し、苦難に挑戦する冒険ファンタジーの醍醐味を満喫させてくれる。余韻たっぷりのエンディングも見事で終わってしまうのが残念に思えた。映画館で「ブレインデッド」見たときから応援しているピーター・ジャクソン監督だが、ここまでの大作を物にするとは思っていなかった。
ホテル・ビーナス
時が止まったような人々が暮す賄いつきの下宿を舞台とした群像ドラマ。マトモに働いている下宿人が少なくて、経営成り立つのかなんて思ってしまったが、寓話的作品ということなのだろう。凝った編集が展開され、難解なドラマになるのかな、と不安を感じたが手際の良い演出と脚本で過不足なくしっかりと描かれていた。世をすねたキャラクターに扮しても人柄の良さがにじみ出る草薙剛は相変わらずの好演。老け役の市村正親も良い味を出している。部分的に発色させた独特なモノクロ映像で描かれているのだが、登場人物の時が動き出したラストでカラーになるのも楽しかった。
花とアリス
岩井俊一監督の新作は青春コメディだった。憧れの先輩を記憶喪失と思い込ませ恋人に成りすます花と複雑な家庭の事情(なにしろ離婚した両親が相田翔子と平泉成なんだから、ただ事じゃない)をかかえながらタレント事務所にスカウトされたアリスの物語。タイトル・ロールを演じる鈴木杏と蒼井優が魅力的で、二人に比べると郭智博演じた先輩はキャラクターがイマイチ立っていないのが残念。ストーリー展開にも、ぎこちない部分がある。テンポを少し外したような演出が微妙な笑いをかもし出す可笑しさは、さすが岩井監督と感心した。豪華なゲスト陣も楽しさの一つ。派手さはないが青春の輝きを感じさせる作品だった。
レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード
ロバート・ロドリゲス監督のスチャラカ・アクション・シリーズ第3弾。ポケットマネーともいえる7000ドルの予算で作られた1作目は、インディーズ史上の大ヒットをとばし伝説となったが、個人的には手作り感覚の1作目が一番好き。大仰なタイトルで大河歴史ドラマを思わせるが、携帯電話使いまくる現代劇。スタイリッシュを踏み越えてギャグにしたアクション演出で大いに楽しませてくれる。主人公は2作目に続きアントニオ・バンデラスが演じたが、ジョニー・デップの怪演に押されて影が薄くなった。細かいことを気にせず、その場のノリで演出している印象があり、なんか香港アクションっぽい作品。
ペイチェック消された記憶
原作は読んでいないのだが、おそらく映画は全くテイストの違う作品になってるんじゃないかと思う。自分から送られた20のアイテムを使い果たすとき、どのような結末が待っているのか。ミステリアスな前半から、ちょっとコミカルでハイテンポなアクションが続く後半まで、ジョン・ウーらしい歯切れの良い活劇に仕上がっている。ストーリー展開もキッチリ整理され質の高い娯楽作品。