ムービー・マンスリー2004年7月
メダリオン
クレア・フォラーニをヒロインにそえてハリウッド映画風だが、こてこての香港アクション。神秘的な力を持つメダルの争奪戦に巻き込まれた刑事を描いて、相変わらず憎めないジャッキー・チェン映画ではある。前半はジャッキーの相棒によるベタなギャグが不発でちょっと苦しい。後半はアクションも派手になり、まずまず楽しませてくれるが、残念なことに強い印象を残す作品とはならなかった。
シルミド
実話に想を得た作品とのことだが、どこまで史実を織り込んでいるかは不明。前半は、よくあるならず者部隊訓練物の域を出ていないし泥臭い描写も目立つ。後半、政策変更で部隊が中に浮いた状態になるあたりから緊張感が増してくる。親切そうな教官が実は冷血漢で、意地の悪かった教官が人間的だったりする設定が面白かった。結末には、ちょっと不満を感じた。
友引忌
初めての経験で大きな衝撃を受けた作品。予告編も見ていなかったのだが、時間の都合が良かったので劇場に入った。オープニングからデ・ジャヴに襲われ。以前観た何かの作品の続編なのだろうかと考え込んだりしたが、タイトルが出て真相が分かった。去年、ファンタスティック映画祭のオールナイトで見た「ナイトメア」が正式邦題になってロードショウされたのだ。というわけで気づかずに同じ作品を二度観たのは初めて。やっぱり事前の情報収集は必要と反省した。これが隠れた傑作かなんかなら、まだいいのだが。残念ながら詰めの甘い作品。恐怖シーンを積み重ねていくサービス精神は評価できるが、全体的には中途半端な印象。事件の鍵となるビデオの内容が、完全に映画のカット割りとなっているのも興ざめだった。
ハリー・ポッターとアズカバンの囚人
三作目となり、出演者たちも大人っぽくなってきた。一番オヤジっぽくなったのが憎まれ役ドラコを演じるトム・フェルトンじゃないかという気がする。今回は監督が交代し、ダークでミステリアスな雰囲気が強まった。派手さには欠けるが、ストーリーの構成は良く出来ているし、毎度おなじみのクィディッチも今回雨の中と工夫が凝らされていた(妙に短くてあっけないシーンだったが)。残念なのはシリウス・ブラックを含めた新登場の人物たちの描写が希薄なことと、ストーリーも全体ではまだまだ序盤のためか結末が中途半端なこと。原作は読んでいないのだが、上映時間の都合で後半を、はしょりすぎているという意見があるらしい。アニメ版「指輪物語」みたいなものか。とにかく前二作には及ばなかったと思う。
下妻物語
奔放な演出の作品だが、全体の構成はきっちりと作られた作品。破天荒なギャグを満載しているのだが、要となる部分はしっかりと押さえてある。心の中のロココ調を生きるパチンコと刺繍の天才にして不死身(なぜ前に跳ねられて荷台に落ちる?)のロリータ少女と、超改造原付を駆り我が道を往く変人に弱い美貌のヤンキー娘という、すさまじいキャラクターに生命を吹き込んだ主演二人も大健闘だった。脇役陣も充実している。実は樹木希林が伝説のヒミコで、クライマックスに「リターナー」みたいな活躍を見せるのかと思ったりした。
ウォルター少年と夏の休日
一人の少年と中古(ちゅうぶる)の獅子たち(本物一頭含む)の交流を描いた秀作。主役3人の演技力でまず見せてしまうのだが、内容も魅力的だった。二人のおじが語る冒険談はホラ話の楽しさに満ちているが、作品全体もまたホラ話として構成されている。「ビッグ・フィッシュ」の絢爛さはないものの、寓話的味わいに富んでいるし、トウモロコシ畑のライオンなど、忘れがたいエピソードも多い。
スパイダーマン2
ヴェトナム戦争の時期に悩めるヒーローとして大人気を博したスパイダーマン。映画版の主人公も、自分の生活とヒーローとしての活躍の板ばさみにあい、悩み続ける。このあたりの陰影が、このシリーズの魅力で前回に引き続きドラマ部分がきっちりと描かれている。そのため親友との葛藤など前作を見ていないと分からない点も出てきているが。これからどうするのだろう、と次回作を期待させる展開も上手いが、その分ヒーロー・アクションとしての爽快感には欠けてしまった。難しいものだと思う。
スチームボーイ
丁寧に描きこまれた絵でダイナミックに展開する冒険活劇だが、善とか悪ではなく全てを容認する視線で得jがかれているので、ちょっと変った印象を残す作品。科学の発展とともに、それを使った破壊や殺戮が行われることも、また人間の業だ、と感じられるエンディングになっている。エンド・タイトルでは、マッド・サイエンティストや死の商人が、さらに暗躍を続けることが暗示される。ペットの犬に暴力を振るうアニメ史上でも、かなり性格の悪いヒロインが印象的なのだが、彼女もこの性格は一貫して変らない。単なる娯楽作品には終わらせないという作家性を感じさせるが、すっきりしない気分も残った。
キング・アーサー
従来のアーサー王伝説とは、かなり設定を変えた作品だが、ダイナミックな映像で徹底した英雄譚として描かれているので大いに楽しめた。舞台は紀元400年代、アーサーはローマ帝国最強の外人部隊を率い北方辺境ブリテン島の城壁を守っているが、国力の衰えたローマは城壁を放棄、北からは残虐な侵略を続けるサクソン人が南下し、アーサーは決断を強いられる、という設定。ファンタジー要素を完全に排除しているので、エクスカリバーは父の形見の剣となり、マーリンは森の民の長であり魔法を使う場面はない。この点には少々物足りなさを感じたが、戦闘シーンは迫力があるし、ドラマもきっちり描かれている。キャラクターの描きわけも上手く、力強い娯楽作になっていいる。