ムービー・マンスリー2004年8月
シュレック2
大ヒット・シリーズ第2弾。邪悪な妖精、父王の陰謀、暗殺者の長ネコ、マシュマロマン似のクッキーマン、と童話の世界をひねって描いたのが魅力。オープニングの新婚旅行シーンなど、いくつパロディが詰め込まれているのか分からないほどだった。人間見た目ではなく中身が重要というテーマは今回も掘り下げられ、クライマックスも盛り上がっている(仲間たちが、どうやって千キロ以上を瞬間移動したのかは謎だったが)。アントニオ・バンデラスのダンディな声でサラ金のチワワ風目つきが必殺技(卑怯者か?)という長ネコを始めとする新登場キャラも成功、すでに4作まで作ると発表されているらしい。期待したい。
箪笥
またまた韓流ホラー。今度はわりと出来が良かった。サイコ・サスペンス、怪談ホラーの両要素を巧みに織り交ぜ、かなり凝った作りをしている。「シックス・センス」や和製ホラーの影響を強く受けていると感じた。「呪怨」風恐怖描写もあるのだが、こちらの作品の方が好き。トリッキーな展開で、もう一度見直したくなる作品。見直して矛盾する点があっても幻覚ということになってしまう構成もうまい。
サンダーバード
国際救助隊としての活躍シーンが意外と少ないせいか、世界的にあまりヒットしなかったみたいだけど、大いに楽しめた作品。オリジナル版でなかなかサンダーバードの秘密を探れなかったフッドが、あっさり秘密基地を占領、トレイシー一家は宇宙に取り残され、残ったアランと仲間たちは果たして基地を奪還して家族を救えるのか、というちょっと「トイ・ソルジャー」風の展開。東洋系だったアランのガールフレンド・ミンミンはハワイ系(?)のティンティンとなって活躍。やたらと強かったペネロープがクライマックスで簡単に捕まるなど、ストーリーの都合による展開もあるが、全体的に軽いノリのお気楽な娯楽作として完成している。
マッハ!!!!!!
生身のアクションが売りのムエタイ映画。ストーリーは単純で、盗まれた仏像の首を追う青年が、バンコックでギャングたちの賭け試合に巻き込まれる。さすがにアクション・シーンには迫力があり、泥臭い演出ではあるが歯切れのいい展開を見せる。娯楽映画の王道を往く作品といいたいところだが、仏像の首を盗みヒロインの姉を死なせた男の無残な最期という描写があったほうがよかったし、ラストが後味悪いのも残念。この作品に限らないのだが、エンド・クレジットでNG集がかかると複雑な気持ちになる。これだけ苦労したんだということを見せたい気持ちは分かるし、実際驚かされる場面も多い。しかし、せっかく観終わった映画の世界が壊されていくような気分になってしまうのも事実。DVDの特典映像にまとめてくれたほうが嬉しい気もする。
茶の味
「鮫肌男と桃尻女」の石井克人監督による異色のホームドラマ。基本的には転校生に思いを寄せる主人公と、巨大な自分に見つめられている気がしてならない妹を軸として描かれるのだが、特にストーリー性はなく、コント集のような印象も受けた。歌好きで伝説のアニメータ(?)の祖父を我集院が、ヤンキーかと思いきや囲碁好きな転校生を土屋アンナが演じたりと配役も面白いのだが、特に寺島進演ずる野グソに祟られた強面の亡霊がおかしかった。面白いエピソードも多くて楽しめたのだが、全体的には少しまとまりに欠けることと、この内容で2時間20分強の上映時間は長すぎた印象なのが残念。
モナリザ・スマイル
このところ少々低調なジュリア・ロバーツ。新作は1950年代を舞台に、女の務めは早く結婚して亭主をうまく操縦することと教える保守的な女学校に、新風を吹き込もうとする美術史教師を描く。ぐっと面白くなってもよさそうなテーマなのだが、中途半端な内容に終始した。爽やかな感動学園ドラマというには全ての登場人物に魅力が欠けているし、重厚な人間ドラマというわけでもない、ただれた人間関係を描くドロドロ・ドラマにもなっていない。ラストだけ爽やかに描かれてもなあ、という気分になってしまった。
バレエ・カンパニー
多人数が入り乱れるアンサンブル・ドラマに真価を発揮するロバート・アルトマン監督の新作。出来不出来の激しい作家でもあるのだが、単純に数えて78歳でこれだけの作品を撮るのだから大したもの。今回は一応、名門バレエ団が新作バレエ「青い蛇」を成功させるまで、という内容だがストーリー性はあまりない(個人的には比較的ストーリー性の高い「クッキー・フォーチュン」のような作品が好みなのだが)。いつもは豪華な配役が売り物の一つなのだが、今回は本物の「ジョフリー・バレエ・オブ・シカゴ」からの出演者が多く、名のあるスターはネーヴ・キャンベルとマルカム・マクダウェルくらいというのも異色。ネーヴ・キャンベルが、この作品に当たって昔習っていたバレエを再特訓したという話は聞いていたが、原案と製作を担当していることを知って意気込みに感心した。収穫の一つは、このところB級作品への出演が目立っていたマルコム・マクダウェルが老獪かつ実力者のバレエ団経営者役で久々に本領を発揮したこと。残念なのはエピソードにメリハリがなく強いインパクトを残す場面がなかったことと、クライマックスの舞台が確かに大仕掛けではあるが少々こけおどしに見えてしまったこと。