ムービー・マンスリー2004年12月
笑の大学
大好きな三谷幸喜原作脚本ながら、予告編がピンとこなくて、ちょっと不安だった作品。本編を見たら、嬉しいことに予想が外れ、ものすごく面白かった。戦時中の言論統制下を舞台に検閲間と喜劇作家のかけ引きを描くが、クライマックス以外は社会派的要素を避け、人情噺的に盛り上げていったことが成功した。「お国のため」も茶化さずにはいられない作家魂によって、腹の底から笑ったことがないという役人がギャグに目覚めていくさまが爆笑のうちに描かれている。(しかも、かなりのおバカギャグ好き)劇中で披露されるギャグはベタなものばかりだが、映画そのものはスマートな出来栄え。役所広司はもちろん上手いのだが、稲垣吾郎の軽快な演技にも感心させられた。これまで気になった線の細さを逆に利用して、したたかなキャラクターを作り上げている。
いま、会いにゆきます
竹内結子は、このところ映画では霊的なメロドラマ専門という印象だが、どれも出来がいいのはたいしたものだと思う(「星に願いを。」は見逃しているが)。今回はファンタジー的な描写をクライマックスのみに絞った方法が成功している。果たしてヒロインが、どのような存在なのかミステリアスな雰囲気があり興味を持たせている。演出も丁寧でワンシーンごとに、じっくりと撮っていることが伝わってくる。主人公二人も脇の登場人物も魅力的に描かれているのだが、やっぱり子役が画面をさらう。エンドクレジットで絵本全部を見せてくれたサービス精神も嬉しかった。
ハウルの動く城
やっぱり見事な出来の宮崎駿作品。とにかく映像的な完成度が高く、細部まで書き込まれた動く城の造形が見事。谷あいを進む場面の高さの感覚、美しい風景、荒涼たる荒地。どれもが臨場感たっぷりに描かれている。キャラクター作りも相変わらず上手い。主人公だけでなく、おだてに弱い火の悪魔、上品ぶっていて最もデモーニッシュな存在の王室魔術師、ボケ老人と化してもなおしたたかな荒地の魔女など、みな印象強い。本来は敵であった者たちも受け入れて一家を成していくストーリーも魅力的。ただ、細部には一度見ただけでは分かりづらい部分もあった。クライマックスではソフィーを守るために戦うハウルだが、前半にも戦闘場面があり、理由がはっきりしない。悪魔と契約した闇の心に突き動かされているという設定なのだろうか。
スカイキャプテン/ワールド・オブ・トゥモロー
最新技術を駆使してレトロな雰囲気の独特な画面を作り上げたヒーロー・アクション。ストーリー展開もレトロで、「ドク・サヴェージ」とか昔のパルプ雑誌向け小説っぽい気がした。豪放な楽しさはあるのだが、言い換えればデタラメッてことにもなる。巨大ロボット軍団を持つだけの科学力、資本力、動力がありながら、ニューヨーク市の発電機を盗もうとするのも解せなかった。アンジェリーナ・ジョリーの扮装なんか、悪役とばかり思っていたし。重力を無視したアクションという言葉があるが、今回は水圧を無視したアクションが展開。プロペラ機で空から海中に突っ込んで空水両用機っていうのは無茶な気がした。どう見てもプロペラひん曲がりそう。海底で脱出装置使って一気に空中まで飛び出すのも無理っぽい。CGで故ローレンス・オリヴィエを復活させた試みも、あまり効果をあげていない。突っ込みながら楽しめる作品ではあるし、性格悪そうでいながらドジなヒロインは面白かった。
あ々!一軒家プロレス
異色のキャスティングによる、「地獄甲子園」以来のハイ・テンションなバカ大爆発格闘アクション。ソニンも女子プロレスラー相手に健闘している。落成式で爆発する邸宅、謎の人魚病、死を賭けた風雲たけし城?、仇と狙う男etc.内容も濃い。中途半端にシリアスな展開もあるが、結構飽きさせない。コメディに徹したほうが良かった気はしたが。アクションシーンも、スピード感には欠けたが、肉弾戦の迫力があった。ガラガラかと思って劇場に入ったのだが、格闘技ファンを動員したのか、意外と観客が入っていた。
レディ・ウェポン
香港映画らしいサービス精神にあふれたアクション映画。「あずみ」+「ニキータ」の線を狙った作品と思う。少々盛り込みすぎたくらいで、バランスの良い構成とはいえないが、ストーリー的には意外と破綻してない。主人公と組織のボスとの対立を描くかと思ったのが腰砕けにはなったのは少し残念。アクションシーンは、カット割りでごまかしている印象もあるが、なかなか派手な見せ場に仕上がっていた。
エイリアンVS.プレデター
2大ヒット・シリーズを合体させたSFアクション。キワもの企画ではあるが、娯楽作品のツボを押さえたポール・アンダーソン監督の手際良い演出によって楽しめる作品に仕上がっている。「エイリアン2」のビショップのオリジナルが登場するなど、ファン・サービスも忘れていない。オリジナリティには欠けるが「ミッション・インポッシブル2」風のオープニングとか、「CUBE」を思わせる迷宮とか、思わずニヤリとさせられる場面がある。「プレデター」を観て「プレデター2」を観ていない人が観たら、設定が分かりにくいかもしれない。さらなる続編を狙えそうな場面も、いくつか用意されていた。