レッドクリフPart1
ジョン・ウー監督が迫力たっぷりに描く三国志赤壁の戦い。前編のため緒戦までで終わってしまうのが少し残念だが、英雄たちが大活躍して見応え十分。特に関羽、張飛の豪傑ぶりが決まっている。それに比べると曹操は演技派のチャン・ホンイーを配したが、ややインパクトに欠ける。今回はちょっとヒヒオヤジ風。曹操は画面に登場しただけで他を圧倒するくらいの悪のカリスマであってほしかった。それ以外のキャスティングはなかなかハマっていたし、後編の展開が楽しみ。
イーグル・アイ
「ウォンテッド」ほどの落差はないが、やっぱり予告編のほうが面白かった作品。序盤はミステリアスでなかなか良かった。話が進むにつれて主人公たち以外の協力者が次々と現れてくるので、だんだんストーリーが御都合主義的に見えてきてしまうのが難点。黒幕は一見現代風だが、SF映画では古くから描かれてきたテーマで新鮮というわけでもない。とりあえず見ている間は飽きさせない出来ではあるが、それ以上というほどではなかった。キレた演技も得意なビリー・ボブ・ソーントンが、儲け役の敏腕捜査官に扮して渋く好演していた。
ハロウイン
倒しても倒しても起き上がってくる殺人鬼が登場するスプラッター映画の元祖的作品をリメイク。今回は序盤におけるマイケルの少年時代に、かなりの時間をさいている。わりと演出も丁寧できちんとしたドラマになってはいるのだが、もしかしたら本当にブギーマンだったのかと思わせる前作の神秘性は失われてしまった。ショック描写も歯切れが良すぎてスポーティーな印象となり、意外に恐くない。ロブ・ゾンビ監督は、「マニアック・コップ」のようなアクション・ホラーのほうがあっているのではないだろうか。
ハンサム☆スーツ
ビジュアル系も非ビジュアル系も出演者が皆好演して楽しい作品に仕上がっている。特に谷原章介のおバカ演技がハマっていた。草刈正雄や阿部寛のように幅広いキャラクターができる二枚目になってほしい。個人的には谷原と北川景子の「モップガール」コンビが、もっとからんでほしかった気もする。カラフルなCGやセットも、映画の雰囲気にあっていて良かった。ストーリーのオチは途中で見当つくが、不必要にひねらずハッピーエンドにしたことも成功。中条きよしの正体も笑えた。
アイズ
パン兄弟の代表作をジェシカ・アルバでリメイク。けっこう丁寧な演出だし、ハリウッドらしくスマートな作風のオカルト・サスペンスに仕上がっている。ただ、やや泥臭いオリジナル版のほうが、むしろ雰囲気が出ていたように思えた。ラストもきれいにまとめられているし、ジェシカ・アルバも好演しているので、全体的な印象は悪くない。
秋深き
美脚で長身の元ホステスと風采の上がらぬ中学教師の凸凹夫婦。佐藤江梨子は孤独に生きてきて夫に嫌われることを恐れて命を捨てる切ないヒロインを好演。八嶋智人も情けない主人公がハマって適役ではあるのだが、さすがに手術を受けるよう説得できないばかりか、宗教やインチキ健康食品にハマったうえ競馬にのめり込んでいく姿は全く共感できなかった。化学の教師とは思えないバカぶりで、大穴当てて丸く収めちゃうのも安直すぎ。良い部分も少なからずあるし、主人公がもう少し魅力的に描かれていれば優れた人情物になった可能性もあるので残念。
櫻の園
監督自身の代表作をリメイク、といえば「転校生」を思い出す。あちらは作らないほうが良かった気がした。こちらはオリジナル版を見逃したままになっているので比較できないが、なかなか良かった。主人公を始め、主要なキャラクターが生き生きと描かれて爽やかな青春ドラマに仕上がっている。古き櫻の園を離れ新しい世界に旅だっていく劇中人物とヒロインたちが重なっていく構成もうまい。櫻の園で人間的に成長した主人公は音楽の世界に戻っていくのだろうか。その後が気になってくる心引かれる作品だった。
容疑者Xの献身
今年も「花より男子」「相棒」とTVドラマの映画版がヒットした。それらの中で本作が一番完成度が高いと思う。他の2作が無理にスケールアップしたオリジナルストーリーだったのに対し、これだけが原作物だったから、だとすればちょっと情けない気がする。主役のキャラクターはテレビでおなじみということもあり、犯罪に係わった者たちについて、じっくりと描けたことも利点になっている。主人公本人のセリフにもあったが、今回の事件は物理学者が力を貸す性質のものではなく、お馴染みの数式書きまくりもないのだが、旧友である数学の天才が係わっていたことから事件にのめり込んでいく。この構成からしてうまい。トリックは単純なもので、ヒントも出されているのだが、それでもだまされてしまった。主人公と完全に明暗の分かれた人生を歩む男を演じた堤真一の演技が鮮やかだった。
ブタがいた教室
すっかり自分たちのペットになってしまったブタを食べることが出来るのか。動植物を食べることによって生きている事実を改めて認識させる作品。正解のない問題に涙しながら挑み続ける子供たちの姿に感動させられた。実際の出来事を原案にしているということだが、トラウマになってしまった子がいないが心配になった。高学年の生徒が飼育を申し出たら、ブタは生きながらえることができたかもしれない。人間の業についても考えさせられたりした。
ハッピーフライト
小ネタを連発する前半は笑えたが、後半は普通のエアポート物。演技も演出もしっかりしているので退屈しないものの、少々物足りなさが残った。ANAや国交省が協力しているので、過激な展開にはできなかったのかもしれない。とにかく登場人物は皆まとも。一人くらいワケの分からない行動を取る乗客がいても良かった気がする。システムダウンした管制塔でアナログ人間の岸部一徳が活躍する場面も、もっと際立った描写がほしかった。時任三郎の教官ぶりはハマっているし、田辺誠一の軽妙な演技も光っていた。
まぼろしの邪馬台国
吉永小百合が「母べえ」に続いて30代のヒロインを演じてしまう。そのことが納得できれば、けっこう良質の作品と思う。竹中直人は、我の強い変人だが情熱的な男が適役だし、彼を支える銀行頭取役の江守徹も好演。柳原可奈子も意外としっかり演技していた。「アキレスと亀」ほどのインパクトはないにしても、一見風変わりな夫婦を描いた佳作となっている。最後の幻想通り卑弥呼が溶岩に呑まれたとすれば、墳墓が残っているはずもないのだが。
1408号室(ネタバレ)
「シャイニング」のバリエーション的な内容だが、不条理な恐怖が緊張感たっぷりに描写され、なかなか楽しめた。ラストは後味良く仕上げられているが、あのバックファイアで生き残るのは、ちょっとムリに思えた。そもそもあれほど強大な力を持った邪悪な存在が火炎ビン一本に滅ぼされたりするだろうか。とか突っ込みどころもあるが、小品ホラーとしては上出来の部類。ジョン・キューザックも好演していた。
トロピック・サンダー史上最低の作戦
アメリカではスマッシュ・ヒットとなった今年を代表するおバカコメディ。個性的なキャラクターを揃え、下ネタやスプラッターしてるギャグも詰め込んでパワフルに仕上がっている。主人公たちだけでなく、最後まで事態を把握してないエージェント(儲け役)を演じたマシュー・マコノフィーや、原形を留めないメイクのトム・クルーズなど脇役の怪演も楽しめた。ラストのオチが、やや弱いのが残念。
デスレース
オリジナルはカルト作人気の作品だが、低予算のヘッポコ・アクション。暴力で勝った者が国の指導者になるという短絡的な発想だった。今回のリメイク版は、無実の罪で投獄された主人公がテレビ中継のデスレースに参加させられるという、良くも悪くも普通のストーリー。アクション・シーンはなかなか良く撮れているが、ストーリーは大味。特に第2レースで戦艦が登場するあたりからは強引な展開で突っ込みどころも多い。あまり考えずに、その場のアクションを楽しむ分には悪くない作品と思う。
ムービー・マンスリー2008年11月