トランスフォーマー/リベンジ
シリーズ第2作ということで、細かい説明が不要となり、戦闘シーン山盛りでド派手な作品に仕上がっている。動きが早過ぎて、どれがどのメカか分からなくなってしまう場面もあった。原作がアニメということもあり、ドラマは軽いノリに終始。奥行きには欠けるが、マイケル・ベイ監督らしい娯楽作になった。ハリウッド娯楽大作の脳天気さが良い方向に発揮されている。ストーリー展開には大味な部分もあるが、力技で押し切ってしまう。敵が人間に化けるのは、さすがに反則という気がした。
劔岳 点の記
CGやワイヤを使わない作品で、大作と感じさせる風格を持っているのは久々ではないかと思う。大自然に闘いを挑む人々を正攻法で描き、見応えのある作品に仕上がっている。主人公二人を始めとして、出演者は皆好演。リッチな登山家を演じた仲村トオルは儲け役で、國村隼と笹野高志が演じたバカ軍人と両対をなすキャラクターになっている。終盤の虚しさを感じさせる展開を、ラストの手旗信号が救っており、清々しさを感じさせる幕切れとなった。クライマックスの登頂が、ややあっけないのが残念。前人未踏の難所という印象が薄れてしまった。大自然を捕らえた映像は、当たり前のことかも知れないが見事だった。
エヴァンゲエイヲン新劇場版・破
4部作の2作目。起承転結でいえば承なので、軽いラブコメ・タッチで進むのかと思いきや、後半は怒涛の展開。ここまで話が進むのかと驚いたくらい。登場人物たちの心理描写も巧み。集団での闘いで少しずつ仲間意識を抱き始めるアスカ。自分の存在意義を模索しながらも碇親子のために役立ちたいレイ。自分を犠牲にしてもアスカやレイを助けたいと願うシンジ。それぞれの想いに、切ない展開が続いて目がはなせない。今回ではレイが碇博士が作り出したシンジの母親のクローンではないかと思わせる描写があったが、こちらも気になる。早く続きが見たい作品。
ウィッチマウンテン/地図から消された山
オリジナルの「星の国から来た仲間」はディズニーが少々パワーダウンしていた時期の作品で、CGなどない時代の映画としても特撮が安い。のんびりしたファミリー映画として個人的には嫌いではないのだけど。今回は現在最高レベルの特殊効果とは言い難い気はするが、それなりに頑張っていると思う。ドウェイン・ジョンソンがタクシードライバーに扮し、なんだかSFアドヴェンチャー版「トランスポーター」みたいな趣き。内容的に目新しい部分はないが、テンポ良くまとめられて、けっこう楽しめた。ギャングのエピソードが中途半端に終わってしまい、どうなったのか分からないのが少し残念。
それでも恋するバルセロナ
ウディ・アレンの新作は軽くまとめられた艶笑コメディ。特別に奥行きを感じさせる内容ではないが、バルセロナの光景やラテンリズムの音楽に飾られて、なかなか洒落た出来栄え。女たらしの画家をめぐる3人の女性がそれぞれ個性的に描かれているのも魅力。特にペネロペ・クルスのエキセントリックな芸術家ぶりはインパクトあった。個人的な好みから言えば、ナレーションがしつこく感じられた。半分くらいのボリュームにしぼったほうがスマートな作品になった気がする。
フィースト2/怪物復活
「ザ・フィースト」の後日談で、「フィースト3」と合わせて一つの物語になっている。今度は街ひとつが滅ぼされるが、もともとはビデオ用の作品ということでスケール感には欠ける。登場人物には一作目以上にロクデナシが多く、誰が死んでも惜しくない設定。人間のくせに生命力はゴキブリ並で、ビルから落ちたくらいヘーチャラ。モンスターを返り討ちにしちゃったりする。2作に分けたせいか、ややテンポが悪く、中だるみを感じさせるのが残念。
フィースト3/最終決戦
一応シリーズ完結編?2のラストから始まり、冒頭から意表を突く展開。カウボーイ、預言者、カラテキッドと新キャラも続々登場。そしてヒーローっぽいキャラが、すぐに退場するのもお約束。地下の描写が、画面の暗いこともあって、切れ味がイマイチになってしまったのが残念。話をまとめる気なんかなかったらしく、オチは無茶苦茶。最低絶叫計画じゃあるまいし、もう少しきちんとまとめてほしかった。マリアッチで全部茶化して終わってしまうが、まあビデオ用の作品ならこの程度かという出来栄え。
いけちゃんとぼく(ネタバレ)
原作は読んだことがない。主人公の少年は、いじめられても後ろを見せたくないという前向きな面と、弱い者いじめや虫殺しに走る歪んだ面を合わせ持っている。そんな少年が力での争いにはキリがないと悟り、成長していくストーリー自体はなかなか良い。気になったのは子供のケンカにしては暴力描写が激しすぎること。石を思いきりぶつけて、櫂(かい)でぶん殴る。泣くとかいうまえに死んじゃうんじゃないか。いけちゃんは蒼井優の吹き替えを含めて、表情豊かに楽しませてくれる。ただ、主人公の最後の恋人だった老婆の化身というのは、とうもピンとこず、キャッチフレーズほど感動しなかった。いっそ子供の成長を見守りに来た父親の霊という展開にしたほうが納得できた気がする。
MW
発表当時はセンセーショナルな内容で話題を呼んだ原作だが、今映像化されれば、わりと普通のサスペンス。というかわざと普通にして原作のデカダンな雰囲気を消している気がした。二人の主人公を演じる玉木宏と山田孝之はそれなりに頑張っているし、石橋遼も存在感があった。やや強引なストーリー展開ではあるが、テンポ良く進み、音楽も印象的で、見ている間は飽きない作品。
モンスターVSエイリアン
防災用の地震映画を除けば、かなり久しぶりに見た立体映画。3Dアニメが本当に3Dになっているのがすごいと思った。実写だったら複数のカメラで撮るらしいけど、アニメの場合は計算で作るのだろうか。人間の体型のまま巨大化すると足が体重を支えられないという話もあるが、細かいことは気にせずに楽しめる単純明快解なストーリーが良い。コックローチ博士ならエネルギー吸収装置を再現して、普段は人間サイズでいられるようにできる気がした。
ごくせんTHE MOVIE
仲間由紀恵のごくせん最終作とのことで、これまでの生徒たちもゲスト出演して集大成的なファン・サービス作品になっている。テレビの第3シーズンは毎回ラストで危機に陥った生徒たちを助けにヤンクミがたんかを切って登場するのがパターン化され、学園版水戸黄門みたいになっていた。映画では前半でそのパターンを消化し、後半は麻薬密売組織との戦いが展開する。おバカギャグを織り交ぜながら、テンポ良く進む。ストーリーはスチャラカで、麻薬密売の話が出た次の場面で黒幕が分かったりする。細かいことは気にせず、ヤンクミの活躍を楽しむための作品で、テレビ・シリーズのファン以外にはきついかもしれない。二代目ヤンクミ候補に上戸彩が有力という記事があったらしい。確かにジャージの似合うタイプではあるが、どうなのだろうか。
ハリー・ポッターと謎のプリンス
今回はラブコメ調の部分が多く、ある意味これまでよりも学園ドラマっぽい。なかなか楽しい出来ではあるが、闇の勢力が迫っている状況を考えると、悠長に見えてしまう。もっと早いエピソードでやるべきだった気がする。そのせいか、ドラコの企みとか、謎のプリンスの正体とか、追求が中途半端なままクライマックスに突入してしまう。魔王の秘密が分かったとき、ダンブルドアは予想を超える事態だと驚くが、次の場面では秘密を知ったうえで行動してきたことになっている。最終決戦直前なのにハリー・ポッターが弱すぎるのも不安。魔法攻撃がまるっきり通用しないし。対する闇の軍勢の攻撃も手ぬるい。最終エピソードは2部作になるらしいが、納得のいくクライマックスを作り上げてほしい。
蟹工船
現在の労働環境に通じるところがあると話題になった原作二度目の映画化。前回の山村聡監督版は、だいぶ昔にフィルムセンターで見た。前作も真摯な作りだったが、今回も意外ときちんとまとまっていた。集団自殺のシーンとかブラックユーモアにも冴えている。主人公が労働運動に目覚めるロシア船のシークエンスはイマイチ。中国人のセリフが妙に説教くさく聞こえた。全体的には、まとまりの良い分観る者に迫ってくる熱気に欠けてしまったのが残念。
レスラー
盛りを過ぎたとはいえリングではヒーロー。実力とは関係なく必殺技で勝利させてくれるが、外の世界に出ればしがないフリーター。その仕事さえも全うできないし、女とヤクに我を忘れて娘に見捨てられる。ミッキー・ロークは受賞が納得できる渾身の演技を披露。リングでしか生きられないダメ男の哀愁を全身で表わしてる。やはり盛りを過ぎたストリッパーを演じたマリサ・トメイも好演。
ディア・ドクター(ネタバレ)
医は仁術なんて言葉もあるけど、鶴瓶演じる主人公は実に人当たりが良い。反面、いざ治療となると及び腰で見るからにニセ医者。村人も気付いていそうなのだが、それでも無医村では神様扱いされる。鶴瓶は見事なハマリ役だし、彼を支える看護士役の余貴美子も良かった。西川美和監督の前作「ゆれる」は登場人物の意志が明確に伝わらずモヤモヤしてしまい、評価されたほどには納得できなかった。今回は医療問題に一石を投じながらも、人情物として分かりやすく、ラストシーンも魅力的で良かった。
サンシャイン・クリーニング
「リトル・ミス・サンシャイン」の製作者による新作。今回も少数の劇場から拡大していき成功を収めたらしい。ストーリーは全く違うけど、少しダメな連中を主人公にして、ラストで問題が解決したわけではないのに、希望が感じられて温かい気持ちになれる点が共通している。生と死にまつわる職業という点では「おくりびと」にも通じるものがあり、アメリカ人がスピリチャルな癒しを求めているということなのかもしれない。元チアリーダーの花形で成功を夢見て頑張るけどうまく行かない姉と、見た目と違い心優しいけど相手に伝わらない妹、老いてなお山師的性格が抜けない祖父。演技派の出演者たちが、欠点だらけだけど魅力的な人物像を作り上げている。
学校裏サイト
ホラー映画かと思ったら低予算のサスペンス・アクションだった。予算の都合かアクションは走る場面がメイン。テンポ良く編集されているし、建造物を上手く利用していて、意外と楽しめた。ストーリーはかなり大味で説得力に欠ける。劇中のテレビ画像を除けば大人は生徒に媚びを売るヘンな女教師だけだし、警察も登場しない。劇場とか図書館とか、人の集まる場所が無人だっりする。どうして誰も知らないはずの秘密を知っているのも謎。映像的にもかなり画質が悪く、劇場スクリーンでの上映には、やや無理のあるレベルだった。
サムライ・プリンセス/外道姫
ブラック・ユーモア感覚のスプラッター・シーンに満ちたSF時代劇。ヒロインはサムライではなく、再生された元旅芸人。カラクリと呼ばれて一種のサイボーグなのだが、科学的な描写は全くないので、呪術的に作り出されているのかもしれない。世界観はテキトーで、エレキギターや携帯電話が出てくる。あまり効果を上げていないので、現代的なアイテムを廃して伝奇時代劇に徹したほうが良かった気がする。特殊効果は限られた予算の中で頑張っていると思う。ただし映像は、あまりクリアでない。こなれてない部分があるし欠点も多いけど、結構楽しめた作品。
ムービー・マンスリー2009年7月