アマルフィ/女神の報酬
際立った部分はないが、それなりに楽しめるサスペンス映画。タイトルは内容とミスマッチ。アマルフィはほんの少ししか出ないし重要な事件も起こらない。女神の報酬というサブタイトルも意味不明。撮影がイマイチで観光地の風光明媚さが生きていないのも残念。犯人は配役で見当が付いてしまうが、作り手も承知らしく、中盤でバラして、焦点を目的に絞って引っ張っていくのが上手いと感じた。
ノウイング
強引な展開かハズしてしまった作品。昔埋められたタイムカプセルに預言の書がって、どこかで見た設定だけどストーリーは全く違う。一切が逃れられない宿命ということなので、主人公の行動も預言の存在も結局無意味になってしまう。ラストはアダムとイヴをもしているが、なんか薄っぺら。科学的に考えると同族結婚を繰り返して劣性遺伝を起こし、人類の再生もままならなくなるのではないか。それとも、それぞれの宇宙船に一組ずつ子供を乗せているのだろうか?描かれないけど。そもそも、どっかの星に子供を置き去りにすること自体無責任な気がする。
真夏の夜の夢
シェークスピア作品の沖縄を舞台に翻案した作品。とは言っても、惚れ薬くらいしか共通点がない気する。面白い部分も多いのだが、いろいろ詰め込みすぎて、全体的にはまとまりに欠ける印象となってしまった。どうせ夢ネタなら、徹底したスブラスティック・コメディーにしてしまったはうが、はじけた作品になって楽しかったのではないだろうか。柴本幸演じるヒロインは悪くないのだが、恋人役のキャラクターに面白みがないのも難点。
ボルト
ディズニー・プロ作品ではあるが、ジョン・ラセターが製作総指揮に携わっているので、まかなか完成度の高い出来栄え。キャラクターの立て方がうまくて、三匹の主人公がそれぞれ魅力的に描かれていた。設定は「トゥルーマン・ショー」と「三匹荒野を行く」を合わせたような印象だけど、メリハリが効いてテンポの良い展開になっている。今回3Dで見たけど、特別に立体感を強調してはいなかったし、専用メガネをかけると本来の色彩を楽しめなくなってしまうので、2D版で良かった気がした。ヘンな東京タワーが登場するカーズの短編も楽しかった。
山形スクリーム
竹中直人久々の監督作品は、おバカなホラー・コメディー。なんか丸々としちゃった成海璃子が「罪とか罰とか」に続いてコメディエンヌぶりを披露している。パロディ色の濃い作りで、「ブレードランナー」の屋台のオヤジも登場。落ち武者退治法は「マーズ・アタック」風だし、携帯電話を武器に改造するのはLDプレーヤーからレーザー光線銃を作り出しちゃう「レイダース/失われたゾンビ」を連想させる。特に印象的な場面ななかったが、脳天気なラストまで気軽に楽しめる作品ではあると思う。
G.I.ジョー
ド派手な作りのSF戦闘アクション。フィギュアのシリーズを元に作られたためか、忍者風のキャラクターがいたりして、なんとも賑々(にぎにぎ)しい。ストーリーは、やや大味でGIジョーに失敗はないはずなのに、たやすく秘密基地に突入されて隊長が重傷を負ったり、みすみすエッフェル塔を倒されたりする。とはいえ見せ場は豊富だし、飽きさせない仕上がり。クライマックスにおける海底基地の闘いは昔の冒険マンガを実写化したような楽しさがあり、スティーヴン・ソマーズ監督作品らしい娯楽大作ではある。
コネクテッド
巻き込まれ型サスペンス・アクションの佳作「セルラー」の香港版リメイク。香港映画らしい無茶なカーチェイスや銃撃戦をまじえながらテンポ良く展開する。全体的なストーリーは、リメイク版だけあって、きっちりまとめてあり、オリジナル版よりもうまく出来ていると感じた。キャスティングは地味だが、かえって臨場感の出た部分もあり、拾い物の一作。
吸血少女VS.少女フランケン
グチャグチャなんだけど、バレンタインに始まってラブコメ風に展開する怪作。低予算を逆手にとった映像が独特な世界を作り出している。人間を血管だけで表現したビジュアルも面白かった。黒人並の脚力を持つ足に全く筋肉がないのはイマイチ。スタンド・インでムキムキな足を見せたほうが良かったと思う。頭の上に手足をのっけて回転させても空は飛べないと思うが、まあ縮小した人間が手をバタバタさせただけで飛んでしまう「透明人間と蝿男」なんてのもあったし。津田寛治の超怪演や、性格の悪さを競うヒロイン二人の美少女ぶりも良かった。
南極料理人
南極越冬隊の生活を料理人をメインに描くユーモラスな作品。クセのあるキャラクターが揃い、奇矯な行動も多いのだけれど、元々そういう人たちなのか、閉ざされた南極の生活ゆえにおかしくなったのかは不明。堺雅人の軽妙な演技が光り、嶋田久作ふんする上司とのやりとりや、伊勢エビのエピソードなど、思わずニヤリとさせられた。特別なストーリー性はないけれど、クライマックスのラーメンは「タンポホ」以来の美味しそうな場面に仕上がっていた。
ナイトミュージアム2
舞台をスミソニアン博物館に移しての第2弾。前作以上に他愛ないストーリーではあるが、賑やかでとりあえず飽きさせない作品ではある。今回のロビン・ウィリアムズはゲスト出演程度で、特に中盤ではハナ肇状態。エイミー・アダムス演じるアメリア・エアハートは生き生きしていて良かった。最新技術を駆使したCGが見物の作品だが、全体的な映像はやや粒子の粗さが目立って残念。発明品販売の会社社長より、博物館の夜警に私財を投げうつほどやりがいを感じるって、なんか説得力に欠ける。
ココ・シャネル
脚本がテレプレイと表記されているので、もともとはテレビ用に撮られた作品のようだが、丁寧な作りで、セットや衣装も見劣りすることがなかった。ココ・シャネルについての知識が全くなかったので、ヘビースモーカーであったことも初めて知った。シャネル・ブランドを確立するまでの若き日と、カムバックに一度失敗して再挑戦していく晩年の姿を交互に描く構成も良く出来ている。新しい女性服を作り出していく姿が魅力的に描かれているし、シャーリー・マクレーンによる貫禄たっぷりの晩年も良かった。
サマー・ウォーズ
コンピューターやインターネットの暴走を描いた作品の中でも、痛快さという点でトップをいくと思う。前半において一家の頭首であるお婆さんの存在感が圧倒的。不在となった喪失感が見る者にも伝わってくる。数学の天才と格闘ゲームの達人、現実世界では内向的な二人が活躍する中、ヒロインの影がやや薄いなと思っていると、意外な特技で参戦、クライマックスを思いきり盛り上げてくれる。十億ものアカウントが一気に書き換えられたりしたら、サーバーがパンクして、パスワード入力どころではなくなってしまうのではないか、という気はしたが。
30デイズ30ナイツ
30日間太陽が昇らない町が吸血鬼に襲われるというアイデアは秀逸。事前に町中の携帯電話を処分する用意周到ぶりだけど、でもどうやって、という疑問は残る。上映時間の都合もあって、日にちの経つのが存外早く、1ヶ月間耐え忍ぶ辛さが伝わってこないのが残念。その他にも吸血鬼のボスが田舎者のオヤジみたいでカッコ良くないとか、クライマックスがやや強引とか、不満点は多い。退屈はしなかったのだが、決め手に欠けるアクション・ホラーとなってしまった。
縞模様のパジャマの少年
これまでのマーク・ハーモン監督作品は、英国らしいシニカルさはあっても心暖まるものが多かったが、今回は本当に怖かった。時代の闇に接しながらも、真実を知らない二人の少年。真実を知ってしまった母親の苦悩。ナチ思想を吹き込まれたり軍人に憧れたりしながらも何かがおかしいと感じ始める姉。少年同志の交流を描きながらも、作品全体が張り詰め、緊張感に満ちている。見事な構成と演出で、恐ろしいクライマックスまで惹きつけられた。今年の洋画ではベストの一作。
ムービー・マンスリー2009年8月