トワイライト・サーガ ニュームーン
アメリカのティーンに絶大な支持を受けるシリーズの第二弾。前半は恋人と別れて傷心のヒロインを中心に描くので、やや地味で見せ場に欠ける。中盤、人狼の一族や復讐を企む女吸血鬼が登場してからは盛り上がりを見せ、舞台をイタリアに移したクライマックスへと進んでいく。今回はシリーズの長期化を目指してのお膳立てで新キャラも紹介だけという印象が強い。ストーリー的には「ロミオとジュリエット」をモチーフにした展開があったり、工夫してある。ヒロインが特殊な能力の持ち主だという設定も興味深いし、これからの展開に注目したい。
銀色の雨
米子の街を舞台にした青春ドラマ。浅田次郎原作だけあって、なかなか良い話ではあるが、鈴井貴之監督が以前に撮った「銀のエンゼル」と同様、今一つメリハリに欠け、インパクトが足りない作品になってしまった。瀬戸際に立たされたボクサーの中村獅童と孤独に生きるヒロインの前田亜紀は、存在感のあるキャラクターを作り上げている。主人公の賀来賢人も悪い演技ではないのだけれど、二人に比べると影の薄い印象になってしまったのが残念。
ビッグ・バグズ・パニック
突然襲ってきた巨大昆虫を相手に元ニートのダメ男が立ち上がる、コメディー・タッチのパニック・ホラー。おバカ映画のわりにCGの出来は悪くない。展開は意外とマトモで、もっとハメを外したほうが面白くなった気がしたほどだが、けっこう楽しめた。最後のオチが意味不明て、何が起きたか全く分からないのが残念。
東のエデン 劇場版1 The King of Eden
TVアニメ・シリーズの映画版完結編第一弾。主人公は大きなトリックを仕掛ける時には自らの記憶を消してしまうのだが、これって意味あるのだろうか。滝沢郎の正体を含めて最終作で全ての謎が説き明かされるのか。見ていて面白かったが、内容的にはTVシリーズと完結編とのつなぎといった印象。単独での評価は難しい。次回作でスッキリ決着がつくことを期待したい。
カールじいさんの空飛ぶ家
四角い顔に団子っ鼻、黒ぶちメガネのじいさんが主人公では、ちょっと冴えないかなと思ったけど、なかなかどうして。オープニングの金が無くって夢は叶えられなかったけど、愛妻とともに過ごした幸せな人生、という描写から胸を打たれた。このところ老害を描いた作品が多かった気がするが、WOWOWの「結成!老人党」とか老人パワーを描いた作品も増えている。カールじいさんは、普段杖をついてるくせに、クライマックスではインディ・ジョーンズか未来少年コナンか、という大活躍。今回は辺境地での冒険なので、登場キャラは少なめだが、ボーイスカウトの少年やとぼけた動物キャラとの交流がきっちり描かれているし、相変わらずキャラの立てかたがうまい。今回はカラフルな風船の色彩を楽しもうと2D版で見たが、3D版がメインなのか、ちょっと輪郭が甘くなって鮮明さに欠けていたのが残念。
2012
ディザスター映画はお手のもののローランド・エメリッヒ作品だけあって、同じ終末物でも「ノウイング」に比べると、特に新味はないが王道を行く映画になっている。ストーリー上仕方ない部分もあるのだが、崩壊する街を車で脱出して、崩れゆく滑走路から離陸という、同じパターンの繰り返しになっているのが、やや苦しい。終盤で命を落とすキャラクターの人選も、あたりさわりのないもので御都合主義。方舟を見た政治家が「さすがは中国」と感心する場面には時代の変遷を感じた。ド派手な災害シーンで見せるが、長く印象に残る作品ではないと思う。
母なる証明
殺人容疑で捕まった脳に障害のある息子の無実を証明しようとする母親を濃いタッチで描いた韓流サスペンス。前半は母親の行動が空回りしてストーリーがあまり進まないので少々ダレた。後半は次第に事件の真相に近付いて行くので、それなりに面白い。警察はものすごく無能に描かれ事件を捜査する気かどハナからないように見える。登場人物のほとんどは異常な印象を与え、まともに見えたのは写真屋のおぱさんとゴミ回収の老人くらいか。終盤は韓国映画らしいドツボな展開。ストーリーはわりと良くまとまっていると思うが、期待したほどのインパクトは感じなかった。
大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説
M78星雲にある光の国を舞台に、ダークサイドに墜ちたウルトラマンベリアルとの闘いを描く。これまでの怪獣が大挙登場して大半は瞬殺されていく。バトルシーンがテンコ盛りでサービスは満点。その分ストーリーは単独すぎるくらいで、一ひねりほしく感じた。強さを強調したウルトラマンゼロは、目つきもこれまでで1番鋭い。あまりにも強すぎる設定なので、今後登場させるとしたら展開がどんどんエスカレートして、最後のころの「ドラゴンボール」みたいになってしまいそうな気がする。設定によると、キングが参戦すれば、あっという間に解決するみたいなのだが、老いたのということなのだろうか?
宇宙戦艦ヤマト 復活編
完結編に比べてテンポ良く進み思ったより面白かった。とはいえ強引で無茶な展開はヤマトのトレードマーク。要塞との闘いはシューティングゲームのボスキャラ戦みたいだし、入口で星すら分解してしまうブラックホールの中をヤマトが突き進んだり、突っ込みドコロは事欠かない。放浪してるはずのアクエリアスが地球近辺に留まっていたのも不思議。エンドクレジットにおける西崎義展の文字が馬鹿でかいのが笑えた。しかも二度出るし。衝撃のラストが、最後に「復活編第一部完」と出ることだったのは、確かに驚いた。次回作で異世界人との闘いになって、「シークエスト」のパクりだとか言われないようアイデアをひねってほしい。
ジュリー&ジュリア
フランス料理をアメリカの家庭向けに紹介したジュリアと、そのレシピを再現してブログに書き込むジュリー。実話を元にコミカルなタッチで描いている。大柄で陽気な主婦ジュリアを演じるメリル・ストリーブの存在感が圧倒的。そのパワーを見習おうと奮闘するジュリーのエイミー・アダムスも好演している。ジュリアについては全く知らなかったが、アメリカではスミソニアン博物館にキッチンが再現されるほどの著名人らしい。ブログがアップされた時点でジュリアが存命していたというのも驚き。なぜ彼女がジュリーのブログを気に入らなかったのか、はっきり描いてほしかった。そのため、ちょっとモヤモヤした終り方になってしまったのが残念。
パブリック・エネミーズ
時にはドキュメンタリー・タッチともいえる描写で、渋いノワール作品を目指したように見えたが、残念ながら試みは成功とは言えず、メリハリに欠けた作品に仕上がってしまった。結局はジョニー・デップの魅力でもたせている印象。あくまでアウトローだった銀行強盗たちが活躍した時代が終り、権力と結託した組織犯罪へと移っていく時代の変遷が描かれているのは興味深かった。同じデリンジャー伝としてはジョン・ミリアス作品に及ばなかった。
のだめカンタービレ最終楽章前篇
原作は読んだことないのだが、テレビシリーズと同様に軽妙なタッチが活きた楽しい作品に仕上がっている。ドタバタコメディーの中にも、しっかりと音楽に対する情熱が織り込まれているのが魅力。玉木宏といい谷原章介といい、三枚目キャラもこなせる二枚目はたいしたものだと思う。上野樹里の変態ヒロインぶりもハマッている。ぶっ飛ばされ役のダミー人形も大活躍だし。今回は前編ということで落ち目のオーケストラでかんばる千秋がメイン。のだめのピアノがメインとなるだろう後編が待ち遠しい。清良のコンクール挑戦やスランプになった孫Ruiのその後など、後編に託されたエピソードは多い。不満の残らない最終楽章が完成することを期待している。
アサルト・ガールズ
独特な世界観が売り物の作品、ではあるが冒頭からナレーションで延々と世界観の解説がされるのはイマイチ。主演の三人は、それぞれに仮想現実世界のモンスターハンターらしいキャラでハマッている。監督が男性キャラに興味なかったのか、唯一の男ハンターは、カタツムリを食らう薄汚い野郎に描かれていた。ドラマ性を廃した作りで、ステージのボスキャラを倒すまでが約70分にまとめられているが、感情移入できる部分がないので盛り上がらずに終わってしまう。テンポもあまり良くない部分があった。主人公たちの腐れ縁や経験値の奪い合いをもっと突っ込んで描いたほうが面白かった気がする。
牛の鈴音
本国では大ヒットしたというドキュメンタリー。老いた牛とともに、機械を使わない農作業を続ける老人。口が達者で文句ばかり言っているカミさんもユーモラスに描かれる。合理的に機械化された現在の農業を声高に批判するわけではないが、移ろいゆく時代に哀悼を込めているように感じた。監督は自分の父親を撮影しようと考えたが、すでに牛を使っていなかったので、数年かけて本作の主人公を探したのだとか。高齢化社会や農業の後継ぎ問題など日本と共通するテーマが多く、いろいろ考えさせられる作品だった。
フォース・カインド
事実に基づいているというふれこみだが、新手のフェイク・ドキュメンタリーなのだろうと思う。具体的な内容を知らずに見たのでSFホラーとして展開するのは意外だった。肝心な部分になると(多分妨害にあって)実録映像が乱れてしまうというアイデアは面白い。ただ少女誘拐を警官の言葉で解説させたのは、わざとらしさを感じた。なんだか「アンビリーバボー」みたいで、全体的に評判ほど怖くはない。ちなみに宇宙人によるアダプテーションを描いた作品で印象に残っているものにスチュアート・ゴードンの脚本をブライアン・ユズナが監督した「スピーシーズ・リターン/種の終焉」がある。「スピーシーズ」とは縁もゆかりもない低予算SFホラーで地味な作品だが、奪われた時間というアイデアがちょっと面白かった。
蘇りの血
日本神話的な世界観を感じさせる伝奇ファンタジー。板尾創路以外のキャストは、なんか素人っぽい演技なのだが、けっこう存在感は出していた。草刈麻有も初々しさと力強さを併せ持ったヒロイン役を頑張っている。ただ、大王は軽いキャラクターに描かれすぎて、石切場の親方くらいにしか見えない。予算も少なめのようだが、風景が印象的な場面が多くありロケハンはたいへんだったろうと思った。主人公の復活シーンは、思い入れたっぷりなのは良いが、それにしても長すぎると感じた。難点もあるが、演出に力強さがあり、印象に残る作品に仕上がっている。
誰がため
実在した二人のレジスタンスを描くデンマーク映画。二人は祖国のため命をかけて闘うのだが、戦犯の陰謀に巻き込まれたり、妻子に去られたり、翻弄され続ける。結局ゲシュタポの将校が一番まともに見えてきた。皮肉なストーリー展開が面白かった。謎の女にわりと地味な女優が起用されているのも、ヨーロッパ映画らしいし、実録的な雰囲気を高めている。派手さはないし、スマートな演出ともいえないが、なかなか見ごたえのある作品だった。
アバター
ジョン・キャメロン監督待望の新作。CGを多用したダイナミックな映像が魅力で、これまで飛び出す描写に重点が置かれていた3Dで森の奥行きを表現しようとした着想が評価できる。パンドラの世界を紹介した前半は少々冗長に感じられた。パンドラのビジュアルは宮崎駿の作品に影響を受けているようで、宮崎作品を知らないアメリカの観客には斬新でも、自分にとってはそれほど新鮮ではなかったため、長く感じてしまったのかもしれない。そういえばナヴィたちの顔も、どこか「もののけ姫」のシシ神様に似ているような気がする。後半の戦闘シーンは迫力満点。畳み込むようなアクションが展開される。催涙弾が撃ち込まれる場面では、思わずよけそうになってしまった。欲を言えばミシェル・ロドリゲスにはもう少し活躍させてほしかったが。物語は先住民虐殺、ヴェトナム戦争、イラク戦争といったアメリカの歴史におけるマイナス部分を連想させるものとなっている。かってならニューシネマになった題材を豪快なアクション超大作に仕立ててしまうのだから、ハリウッドの脳天気なパワーが炸裂していると言える。深く考えなければ大いに楽しめる文字どおりの娯楽大作。
ムービー・マンスリー2009年12月