矢島美容室THE MOVIE〜夢をつかまネバダ〜
テレビ番組用ユニットの誕生を描く。ある意味これもフェイク・ドキュメンタリーか?なんだか和田アキ子みたいな石橋貴明をはじめ、加藤ローサも黒木メイサも11歳というシュールな設定。ヴァラエティのコントみたいなノリで描かれる部分が多く、真面目な映画マニアは怒り出しそうだけど、パワーがあってけっこう楽しかった。とんねるずのコネか、CM撮ってる監督のコネかわからないけど、ゲスト出演も含めて顔ぶれも賑やか。アヤカ・ウィルソンが一番大人なキャラだったような気もする。黒木メイサは憎まれ役がハマりすぎてて、森雪役がちょっと心配になった。
フェーズ6
致死率100%、生き残るためには感染した者を見捨てるしかないという極限状況を描くロード・ムービー。「生き残ることに、意味はあるのか」というキャッチコピーそのままの結末に向かっていく。なんだか全員死ぬより虚しさが強い。シナリオも良く書き込まれているし、約85分と上映時間が短めなこともあって、最後まで映画の世界に引き込まれたが、見終わって満足感のある作品とは言えない。
川の底からこんにちは
傾いたシジミ工場を再建するヒロイン、というと朝の連続小説みたいだけど、かなりシニカルな作風。オフビートなエンタテインメント志向といいった印象を受けた。ヒロインはダメ男に引きずられる自称中の下女。満島ひかりって男運の悪い役が多い気がする。開き直った頑張りぶりが楽しい。工場のおばさんたちとか、ラストの散骨におけるブラックなギャグとかインパクトの強い場面がいろいろあったが、なんといっても政府転覆を謳う社歌が笑えた。微妙な元気をもらえる作品。
9〜9番目の奇妙な人形〜
CGアニメとしての完成度はかなり高いと思う。ティム・バートンが製作に加わっているだけあって、ダークな世界観の中にユーモラスな部分を混ぜて、80分を一揆に見せる作品になっている。ただ、終盤のストーリーはもう少し練り込んでほしかった気がした。結局、巨大な機械獣を蘇らせらことはマイナス要素ばかりだったし、地球の再生が描かれるわけでもない。機械獣に人形が吸収されることによって新たな有機体が生まれるような仕組みを、博士がこっそり組み込んでいるのではないかと期待したのだが。
ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲
同じヒーローものとしては1作目や「ヤッターマン」に比べてグッとダークな世界観、なんだけど脱力系ギャグに走る作風は同じ。1作目は鈴木京香が奥さんで、家族愛とかにも比重が置かれていたけど、今回は全部チャラになってて、設定からして脱力。圧倒的な存在感のゼブラクイーンが、決闘シーンでは洗濯物の下着とツーショットだし、ラストはホントにボヨヨーンだし。テレビドラマ最終回のビデオが流れたときは、力を取り戻すためゼブラクイーンを食べちゃう展開になるのかと思ったけど、少し違った。蒲団を敷いて合体とか、「釣りバカ日誌」みたいなギャグで終ってしまう。魅力的な悪役を登場させながら中途半端な決着というのは、「デビルマン」のシレーヌを思い出してしまった。まあ作品自体は結構面白い部分もあるから、比較しては申し訳ない気もするけど。
タイタンの戦い
オリジナルはレイ・ハリーハウゼンの引退作として映画史に残るが、配役の豪華なわりに大作感がなくて、一般的には受けなかった。今回は途中から変更したせいか3Dとして目を見張るほどの効果はないが、CGを使いまくってひたすら娯楽に徹した作品に仕上がっている。メデューサとか「パーシー・ジャクソン」とかぶる部分があるけど、こっちの方が面白かった。クライマックスの盛り上げ方もうまい。ルイ・レテリエ監督は前作「インクレディブル・ハルク」が悪くはないけれど、小じんまりまとまった印象で、大作向きではないのかなと思っていただけに拾い物だった。
TRICK 超能力者バトルロイヤル
劇場版3作の中で一番面白かった。このシリーズは、やっぱりテレビの方が真価を発揮するような気がするけど。使われるトリック自体は、それほど緻密でも斬新でもないのだが、軽妙なギャグで引っ張っていくし、テンポも良い。テレビでスピン・オフやってた矢部警部補の出番を短めに絞ったのも上手い。終盤では真の霊能者の存在というテーマが前面に出てきて、次作以降の伏線なのだろうか。「ごくせん」が一応完結ということだけど、山田奈緒子にはまだまだベタな手品を演じ続けてほしいと思う。
グリーンゾーン
イラクで大量破壊兵器の捜索が行われていた時期を舞台にしたサスペンス・アクション。骨太な出来栄えで見ごたえがあった。テンポも良い。内容的には現実を考えると、どうかなと思える部分もあるけど、フィクションと割り切れば十分楽しめる作品。マット・デイモンは二枚目じゃないけど、孤高な戦う男が似合っている。「サブウェイ123激突」「ダレン・シャン」と不調だったブライアン・ヘルゲランドの脚本も今回は冴えている。
パリより愛をこめて
ボンド映画のパロディみたいなタイトルだけど、内容は全く関係ないバディ物のサスペンス・アクション。ジョン・トラヴォルタとジョナサン・リス・マイヤーズのキャラクターが上手く活かせている。監督の前作「96時間」の完成度には及ばないが、ストーリーのディティールを気にせず豪快に突っ走っていくサービス精神にあふれた作品。上映時間も手ごろだし、何も考えずに楽しむには最適。。
冷たい雨に撃て、約束の銃弾を
ジョニー・アリディってアイドル歌手の印象が強かったけど、すっかりノワールの似合う渋い俳優に変貌した。ジョニー・トーの香港ノワールらしいスタイリッシュな演出が冴えるが、脚本はやや弱い。暗黒街で生き抜いてきたプロフェッショナルたちが巨大な敵に挑むのだから、もう少し頭を使った戦い方をしてほしかった。
書道ガールズ!!私たちの甲子園
さわやかな青春コメディだけど、「武士道シックスティーン」のほうが楽しかった。成海璃子扮するヒロインの設定は両作で妙に似通っているが、本作の前半では周囲の登場人物がキャラが立っていて、損な役回りになっている。大会で「学園天国」が使われるのが、二番煎じな印象をあたえてしまったのが残念(こっちは小泉今日子バージョンではあったが)。良い部分も多いだけに、詰めが甘く感じられるのが惜しい。クライマックスであれだけコケても破れなかったのは、やっぱり良い和紙だったんだなと感心した。
レギオン
神が天使を派遣して人類を抹殺しようとしてくる、というとてつもない設定だが、その攻撃ぶりが妙にしょぼい。舞台となるのは1軒のダイナーだけ。これだったらゲテモノに徹した「フィースト(あくまでも1作目)」のほうがよっぽど面白かった。ストーリーはテキトーで、生れてくる子供が、なんで救世主なのか全く説明ないし、ターミネーターのパロディみたいに思えてしまった。さらに終盤はグダグダになり、神が何をしたかったのか分からなくなってしまう。
パーマネント野ばら
「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」ほどのインパクトはなかったが、予想外のクライマックスだった。この街に住んでいるのは残りかすの人間ばかり、というヒロインの言葉が突き刺さってくる。ダークな話をブラック・ユーモアで包んで、前向きな印象にしてしまうパワーは監督の真骨頂か。菅野美穂は相変わらず達者な演技を見せているが、何といっても小池栄子が設け役。朝のテレビ小説でも入浴シーンやってただけに、「水戸黄門」出演が実現しなかったのは残念。
いばらの王
アニメーションとしての映像的な完成度は、なかなか高いと思う。ストーリーは難解というのではないが、クライマックスで双子のどっちが姉でどっちが妹か、混乱してしまった。集中力に欠いていたのだろうか。結局、伝染病メデューサについては何の進展もなく終わってしまうので、見終わっても安心できず中途半端な印象になってしまったのが残念。
ムービー・マンスリー2010年5月