RAILWAYS 49歳で電車の運転手になった男の物語
タイトルが良くない。メインタイトルは三丁目の夕日のパクリ映画みたいだし、サブタイトルはまんますぎる。で、本編は良い話だけど、中盤まで起伏に欠け、なんだか盛り上がらない。終盤における夫婦の絆の問題も、イマイチ説得力のないまま解決してしまう。キャスティングが良いだけに惜しい作品という気がする。
座頭市 THE LAST
冒頭から編集が下手で戸惑ってしまった。本筋もなんだか要領を得ない。仲代達矢扮する親分の存在感ばかり空回りしているような。一応シマの乗っ取りが目的なはずだけど、余分なことしすぎて、何考えてるのか分からないキャラクターになってしまった。原作権の所有者が最後にしたいということでTHE LASTらしいけど、なんだか辛気臭い映画になってしまった。いっそテレビとかで時代劇撮り慣れてるスタッフを起用したほうが面白くなった気がする。
戦闘少女 血の鉄仮面伝説
ややチープなギミックと噴出する血潮で描くスプラッター・アクション。何の役にも立たない自爆テロとか、ストーリーはテキトー。細かいことは気にせずに楽しむ作品。監督三人がかりで、作る側も楽しみながら作ったのではないだろうか。
ヒーローショー
井筒監督得意の暴力映画。今回は暴力によって、それまでの生活が破壊されていくことが描かれており、多少の成長が感じられた。ただ全体的にドラマが薄い印象で、序盤でヒーロー役者と悪役役者の確執をもっと明確に描いた方が良かったように思う。主人公がなんとなく難を逃れてしまうのも、ちょっと弱い。
プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂
ディズニーの冒険大作。予算もそれなりにかけ、決して退屈な映画ではないのだが、なんかB級作っぽい雰囲気。ディーン・ケインとかマーク・ダカスコスとか出てきそうに思った。軽く楽しむには十分な出来栄えではある。
告白
ダークなストーリーをポップに描くのが特徴だった中島哲也監督。今回は徹底してダークな作りで、映像的にも暗めだが、完成度は相変わらず高い。他人の痛みを決して理解しようとしない少年にヒロインが痛みを思い知らせる究極の罠を仕掛けていく。リアリティを重視した演出ではないのだが、現代の闇に対し焦点を合わせた作品に仕上がっている。大ヒットのおかげか、当初主演の3人しかオフィシャルサイトやallcinemaonlineのデータになかったのが、脇役まで掲載されるようになって良かった。
シーサイドモーテル
山に囲まれたシーサイドモーテル4つの部屋で起こる事件を描く群像コメディ。シトーリーが小気味よくまとまってるし演出にもテンポがある。キャスティングンもいい。海辺に座るカップルは誰だったかのオチも含めて大いに笑えて、ちょっぴり切ない。魅力的な小品に仕上がっている。
孤高のメス
決して洗練されたスマートな作りの作品ではないのだが、その地道さが内容と相まって魅力となっている。医療問題に斬りこみながら、人情ドラマとして良く出来ている。堤真一、夏川結衣が好演だが、余貴美子もやっぱりうまい。
FLOWERS フラワーズ
豪華な顔ぶれで描く年代記。時代ごとに画調をかえたり凝っているのだが、ドラマ自体はもう一つ。
竹内結子のエピソードなんか、「今度は愛妻家」「パーマネント野ばら」の後だったので、またかという印象になってしまったのが残念。田中霊奈と河本準一もなんだか似合わないカップルになってしまってる。いっそ仲間由紀恵と広末涼子の母娘のドラマに絞って小品として製作した方が良かったのではないかという気がした。
アウトレイジ
北野武監督久々のギャング映画。大半が身内同士の殺し合いで、ある意味本当に仁義なき戦い。たいした組織力とは見えないのに、きっちり居場所をつかんで殺したり、多少出来すぎの部分もあるが、切れ味のある演出で一気に見せる。ドライでやや強引な展開は、フランスのフィルムノワールより、イタリア製のマフィア映画に近い感覚か。クライマックスで誰が最後に仕掛けるかは読めてしまうが、インテリヤクザが生き残って世代交代を感じさせるのも面白かった。
アイアンマン2
スーパーヒーローは一般人としての生活や周囲の人間を守るために正体を隠すのが常だが、この主人公に限っては元々一般人ではないのから平気で公表してしまうというのが新味。、全体的には謎のヒーロー組織アベンジャー登場とかスピンオフを狙いすぎたのか、ややまとまりに欠けてしまった。この作品に限ったことではないが、次の儲け考えるよりも、今の作品の完成度を高めてほしいと思う。「レスラー」の主人公がサイボーグ化して甦ったかのようなミッキー・ロークの怪演は楽しめたが、クライマックスが意外とあっけないのも残念。退屈はしなかったが1作目よりかなり劣ってしまった。
ザ・ウォーカー
1冊の本を守って旅をする一人の男。大陸横断って歩くと三十年もかかるのだろうか。「復活の日」の主人公はずっと早く南極まで辿り着いていた気がする。という突っ込みは別として作品自体はかなり面白かった。宗教的な要素は好みの別れるところだと思うが、乾いたハードボイルドタッチの演出が生きている。女優も含めて個性派を揃えたキャスティングも良かった。
ダブル・ミッション
ブライアン・レヴァント監督の前作と基本設定が同じで、ちょっと「トゥルー・ライズ」を連想させる部分もあるけど、だいぶ小粒だし良くも悪くもジャッキー・チェン映画らしいユルめの作りになっている。アクションより子供たちとの交流に重点が置かれているし。強い印象は残さないけど、ジャッキー・チェンの映画として相変わらず憎めない出来だし、のんびり楽しむ分には十分。
ハロウィンU
パワフルな演出を見せるロブ・ゾンビ監督ではあるが、脚本は専門家に任せた方が良かったかも。強引な展開が目立つ。冒頭からしてあんなに派手に殺して逃げてるのにマイヤーズは死んだとかいうのが無理ある。マルコム・マクダウェルが怪演する欲に目がくらんだ博士も、クライマックスの行動は無謀過ぎて納得いかない。
エルム街の悪夢
これまたホラー・シリーズのリメイク版。フレディの人物像を細かく描いたりしているが、オリジナルにあった夢幻的な雰囲気が薄れてしまったのは残念。意外と丁寧に作られた作品なのだが、小じんまりとまとまってしまい、なんだか印象が薄いのが残念。フレディに扮したジャッキー・アール・ヘイリーも悪い演技はしていないので、ロバート・イングランド版の印象が強くない観客には十分アピールするのではないかと思う。
宇宙ショーへようこそ
月の裏側が謎だったのは、かなり昔の話だと思うけど。とにかく犬型エイリアンとともに宇宙に行った子供たちの大冒険。地球は封鎖されてしまうのだが、他の星からな航行可能とか、けっこうテキトー。前半はほのぼのと進み、後半急に話が大きくなる。なんか世界観がつかみづらくて、悪役の最終目的が良く分からなかった。ポチといわくありげに描かれた宇宙ショーの歌姫が、単なる悪役で終ってしまうのもイマイチ。子供たちの友情とか元気さは伝わってきたので、それなりに楽しめた。
さんかく
男の勝手な思い込みによる三角関係で、どんどん事態が悪化していくダメダメなカップルを描く。田畑智子も好演だけど、高岡蒼甫のダメ男ぶりはハマっていた。ラストまで情けなさを貫き通すキャラクターにあきれた。特別に魅力的な作品というわけではないけど、観ている間は引き込まれる、という意味では、監督の前作「純喫茶磯辺」と同じ。そういえばあの作品の主人公もダメ男だった。憎めないダメ男を描くのが上手いのかもしれない。
ボローニャの夕暮れ
キャリアは長いけど決定的な代表作のないブビ・アヴァティ監督作品。今回も悪くはないのだが、決定打とは言えない。風采は上がらないが家族思いの教師の、娘に良かれと思ってした行為が裏目に出て家族がバラバラになっていく。そのあたりの皮肉さとペーソスは、なかなか良かった。第二次大戦をはさんだ展開で、時代の流れが織り込まれているのも悪くない。不似合いにゴージャスな奥さんの心情が描き足りないので、ラストがもう一つ生きてこない気がした。せっかくアクの強いフランチェスカ・ネリを起用したのに残念。
ムービー・マンスリー2010年6月