原題 ; THE 3 WORLDS OF GULLIVER(1960) |
監督 ; ジャック・シャー |
脚本 ; アーサー・ロス、ジャック・シャー |
音楽 ; バーナード・ハーマン |
出演 ; カーウィン・マシューズ、ジョー・モロー、ベイジル・シドニー、ジューン・ソルバーン |
ジョナサン・スウィフトの「ガリバー旅行記」をハリーハウゼンの特撮で映像化した作品。 1699年、イギリスのウォッピング、貧乏医者のガリバー(カーウィン・マシューズ)は船医として海外に行き、一儲けしようと考えていた。 ガリバーと一緒にいたい恋人のエリザベス(ジューン・ソルバーン)は、治療費代りにもらったニワトリを売って新居の手付けにしようとする。 売り家がオンボロで、エリザベスとケンカになったガリバーは金と名声を求め船に乗ってしまう。 ところがエリザベスも密航していた。 甲板で痴話ゲンカしたガリバーは誤って海に転落する。 ある島で追放されたバーモグ卿の娘グウェンドリン(ジョー・モロ)が嘆き悲しんでいた。 そこにガリバーが漂着。なんとその島は小人の国でガリバーは巨人だった。 巨人を見て逃げ出す姫と恋人レルドレサル(リー・パターソン)、バーモグ卿。 追手と出くわし斬り合いになるが、敵がガリバーの姿にひるんだすきに脱出。 皇帝はガリバーを浜辺に杭とロープで縛りつける。 国の名はリリパット、レルドレサルはこの国の大臣で、ライバルのフリムナップ大臣もいた。 大臣たちがガリバーを訊問していると皇帝が輿(こし)に乗ってやってきた。 ガリバーは皇帝をおだてるが、突然の雨に皇帝は悪い兆候だと言い出す。ガリバーは息で雨雲を吹き飛ばしてみせる。 (童話として読む分にはいいが、実写としてはさすがに苦しい場面) 奇跡を起こす人だと皇帝は大喜び。ガリバーに自由と食事を与えた。 巨人のガリバーは食べる量も半端ではない。食糧問題が起き、彼は森の木を引き抜いて畑を耕す。抜いた木を植え替えて防風林も作った。 今度は国民も大喜び。ついでに帽子で魚を獲ってみせる。 ガリバーはエリザベスを探して戻ると約束した。 皇帝は敵国ブレフスキュを津波で滅ぼせと要求。医者であるガリバーに人殺しはできない。 ガリバーに同情するレルドレサルと相談して、ブレフスキュとの和平工作をすることにした。 レルドレサルは逃げ遅れて隠れていたバーモグ卿とグウェンドリンを説得する。 ガリバーは王宮に出向き、戦争の原因がダチョウの卵の細い方と太い方、どちらから割るかだったことを知る。 レルドレサルとフリムナップは綱渡りの芸で首相の座をめぐって対決。ガリバーは綱をゆすってレルドレサルを妨害しようとしたフリムナップの手下をくしゃみで吹き飛ばす。 フリムナップは下のプールに墜落。レルドレサルが首相の座を射止めた。しかしフリムナップはレルドレサルとグウェンドリンの仲を告発して失脚させる。 ガリバーは卵を真ん中で割るように提案するが、皇帝は下品だと却下。 グウェンドリンの危機を知ったレルドレサルはガリバーの力を借りて脱走。 争いをやめない両国に腹を立てたガリバーは、海を渡ってブレフスキュへ向かう。 ブレフスキュも戦争の準備をしていた。 ガリバーはブレフスキュの艦隊をロープでつないで引っ張っていく。 海軍を失ったブレフスキュは敗北。戦争は終わり平和が訪れた。 リリパット皇帝はガリバーに勲章を与える。 皇帝はいまだにブレフスキュを滅ぼそうとしていた。ガリバーに拒否された皇帝は、復讐を企む。 ガリバーがお気に入りの皇后が止めに入る。そこに火災が発生。ガリバーはワインを吹きかけて消火した。 ところがドレスをワインで汚された皇后は激怒、ガリバーの死刑賛成にまわってしまう。 権力の愚かさを知り、平凡さの幸せを感じたガリバーはボートで海に漕ぎだしリリパットを脱出する。 ガリバーのボートはブロブディングナグに漂着。浜辺にいた人間に話しかけると、それは人形だった。 そこに持ち主の少女が現れる。今度は巨人の国だった。 ガリバーは慌てて逃げようとするが、ボートごと持ち上げられてしまう。 王宮にはエリザベスが囚われていた。宝物が増えたと王さまは大喜び。 だが、ガリバーを拾った少女グラムダルクリッチが売る気はないと言い出す。 王は他の小動物コレクションから取引しようとするが、グラムダルクリッチは泣き出してしまう。 困った王は王妃の提案を受け入れて、グラムダルクリッチを二人の世話係に任命する。 ガリバーとエリザベスは二人で過ごすことの大切さを実感した。 夜になってエリザベスに婚前交渉を拒否されたガリバーは、グラムダルクリッチを起こし、王に結婚式を挙げさせる。 晴れて夫婦となった二人は、無断で新婚旅行に出てしまう。 この国にいれば一生食いっぱぐれがないと能天気な二人。そこにリスが襲いかかり、ガリバーが巣に運ばれた。 エリザベスは探しに来たグラムダルクリッチに助けを求める。 グラムダルクリッチはおさげを巣穴に降ろしてガリバーを助け出す。 ガリバーがチェスをできると知った国王は、彼と対戦。王はあっさり負けてしまった。 悔しがる王に、宮廷魔術師マコバンがガリバーは魔物だと吹き込む。 王妃が病気になり、ガリバーは一生楽に暮らせるいいチャンスだと診察を申し出る。 ガリバーは王妃にアヘンチンキ薬を飲ませ、胃痛を治した。 王妃がガリバーを贔屓(ひいき)にするので嫉妬した王は、マコバンと組んでガリバーを魔物として火あぶりにしようと企む。 マコバンはガリバーを試薬に入らせる。青くなれば魔物なのだ。 ガリバーはこっそり試薬を調合しなおしていた。アルカリ溶液を酸性に変えておき、赤くなるようにしたのだ。 調子に乗ったガリバーは、マコバンの髪まで赤くしてしまった。 怒ったマコバンは、チェスに勝ち胃痛を治し髪を赤くする者は魔物にほかならないと主張。 ガリバーは科学であると抗弁するが、王も自分たちより小人が賢いとは認めない。 エリザベスに懇願されたガリバーは、仕方なく化学や医学を否定する。とすれば魔物に違いないとガリバーは死刑を宣告されてしまう。 ガリバーの前に獰猛な超小型ワニが放たれる。(といってもガリバーより大きい) 王妃は自分のボタンを盾にするようガリバーに投げた。 ボタンでワニに殴りかかるが敵わない。ガリバーは箱の留め金を剣にして戦う。 ついに留め金をワニの首に刺し、倒すことができた。 マコバンは、この怪力こそ魔物の証しだとさらに火あぶりを主張。 グラムダルクリッチはガリバーとエリザベスをバスケットに入れて逃げ出す。 松明(たいまつ)を手に追いかける王たち。グラムダルクリッチが転んでしまい、二人は森の中へと逃げ込む。 王とマコバンは、枯れ草に火を放って焼き打ちを仕掛ける。川岸に追い詰められた二人。 ガリバーとエリザベスは、お互いに自分の考えを押しつけようとしていたことを反省する。 そこに駆けつけたグラムダルクリッチが二人を再びバスケットに入れた。 追手が迫り、グラムダルクリッチはバスケットを川に投げ込む。揺られながらもバスケットは海へと流れていった。 二人は海岸に流れ着き目を覚ました。全ては夢だったのか。 小人や巨人は、いつも心の中にいて乗っ取ろうとしている。だが、グラムダルクリッチのような愛も生まれるのだ。 二人が口づけをしていると、人影が見えた。同じサイズの人間。 打ち上げられたのはウォッピングのすぐ近くだった。ガリバーとエリザベスは手を取り合って駆け出していくのだった。 派手な見せ場には欠けるためか劇場未公開に終わったのが残念。 原題と違って二つの世界しか旅しないじゃないか、と思ったら普通の人間の世界も数に入っているとのこと。 ストップモーション・アニメとしての見せ場は、ガリバーと戦う小型ワニくらいで意外と少ない。そのかわり主人公を大きく見せたり小さく見せたりする特撮には、いろいろな手法が駆使されている。 ストーリーはレイ・ハリーハウゼンによるファンタジーの中でも、特に寓話性が高い。権力者の横暴ぶりが描かれ、ガリバーはそれを反面教師として自己反省する、という展開。 それにしてもガリバーは妙に志が低く、冒険ファンタジーの主人公としては物足りないキャラクターにに見えてしまう。 ガリバーに希望を与える少女グラムダルクリッッチに扮したシェリー・アルバローニは、その後も活動を続けたがテレビが中心で、日本に紹介された映画は「悪魔の調教師」「シスター・オブ・デッド」といった超低予算ホラーのみ。 |