原題 ; CAOTAIN KRONOS:THE VAMPIRE HUNTER(1973) |
監督 ; ブライアン・クレメンス |
脚本 ; ブライアン・クレメンス |
音楽 ; ローリー・ウィルソン |
出演 ; ホルスト・ヤンセン、ジョン・カーソン、キャロライン・マンロー、ジョン・カーター |
ヴァン・ヘルシングとは全く異なる個性を持つ吸血鬼ハンター、キャプテン・クロノスの活躍を描くハマープロ異色のアクション・ホラー。 森の中で一人の若い女性が吸血鬼の犠牲となり老婆と化して死んだ。 荷馬車を引くグロスト教授を従え馬に乗って旅するキャプテン・クロノス(ホルスト・ヤンセン)。彼は、安息日に踊った罪で枷(かせ)をはめられていたカーラ(キャロライン・マンロー)を助ける。 誕生日に母の形見のブレスレットをプレゼントされたイザベラが友人に見せようと森を抜けていく。その背後から迫る黒いローブの人物に、イザベラは襲われてしまう。 家に辿りついて倒れこんだイザベラは、老婆と化して死んでいた。 クロノスはマーカス医師を訪ねる。二人はかっての戦友であり、マーカスが少女が老婆と化した事件について調査の協力を依頼したのだ。 グロストは事件が吸血鬼の仕業であると見込みをつける。自分を若く保つために犠牲者の若さを奪う吸血鬼である。 次の事件は教会の中で発生した。やはり死体は老婆と化している。 領主ポール・ダーワードは、7年前に死んだ父ヘイゲン・ダーワードの墓参りをした。彼は墓地でマーカス医師と出会う。 マーカスはヘイゲンの病気を見たが、手に負えない伝染病だったのだ。馬車に乗っていたポールのダーワード夫人はひどく老いて見えた。 グロストはカーラに手伝わせ箱に入れたヒキガエルの死体を土中に埋める。 クロノスはカーラと肉体関係を結ぶ。 次の犠牲者は森でボーイフレンドと別れたばかりのライラだった。ボーイフレンドは何も見ていなかったが、生前のライラが老人を見たといっていたことを思い出す。 ヒキガエルの死体を埋めたのは、吸血鬼が近くを通るとカエルが生き返るという言い伝えがあるからだった。 クロノスが掘り起こと一匹のカエルが生き返っていた。 付近に四輪馬車の通った跡を見つけたクロノスは、その先にある村を調べる。 村の酒場でケローたちならず者が傍若無人な振る舞いをしていた。怪しげな紳士が彼らを雇う。 マーカスは領主邸を訪れた。ポールは彼を歓迎し、父が持っていたという魔法について書かれた本を見せる。 ポールの姉サラは年よりも若く見えた。 クロノスとグロストは酒場で四輪馬車を見た者がいないか聞き込みをする。 ケローがグロストのせむしをからかったため、ケンカになりクロノスは一瞬で三人を斬り殺した。 森の中でマーカスは黒いローブの人物を見かけるが、すぐに見失ってしまう。 自分の容姿について落ち込むグロストをクロノスとカーラが励ます。 クロノスたちは森の中に鈴をつけたリボンを張り巡らせる。しかしヴァンパイアは吸血コウモリと化して襲い、新たな被害者が出てしまう。 老醜を恐れるサラにポールは、ダーワード家の血筋はいつまでも若々しいと意味ありげに話す。 ヒゲを剃っていたマーカスは自分が若返っていることに驚く。クロノスは彼を殴って気絶させ、椅子に縛りつける。 マーカスは吸血鬼に唇を噛まれていた。 殺してくれ、マーカスは叫ぶ。 クロノスとグロストはマーカスの心臓に杭を打ち込むが、殺すことはできなかった。 だが、鋼鉄の十字架が素肌に触れると、マーカスは髪が灰色になって死んだ。 事情を知らない村人たちはクロノスたちをマーカス殺しの犯人としてリンチにかけようよする。 墓地にいるクロノスに男たちが斬りかかった。クロノスは次々に敵の剣を跳ね飛ばし、たやすく撃退してしまう。 グロストは墓地から持ち出した十字架で一本の剣を作り上げる。 嵐の夜、またしても犠牲者が出た。 ヘイゲンの墓参りをするサラにクロノスが話しかける。彼はあまりにも若々しくて美しいサラに疑惑を感じた。 クロノスはカーラを囮にしてダーワード邸に送り込むことにする。 カーラは、父親に結婚を無理強いされそうになって逃げて来たと偽り、ダーワード邸に泊めてもらう。 夜中になってカーラに影が迫ってくる。 サラの悲鳴が響く。ダーワード夫人のベッドには老女の仮面が置かれていた。 クロノスたちの前に吸血鬼が正体を現す。7年かけて若返ったというダーワード夫人だった。彼女は夫のヘイゲンも蘇らせていた。 夫人は催眠術でサラとポールの記憶を消し、ヘイゲンにカーラの血を吸わせようとする。 クロノスは間一髪飛び出してヘイゲンを突き飛ばす。 夫人はクロノスにも催眠術をかけようとするが、クロノスは剣の刃で反射させた。夫人は自分の催眠術で動きを封じられてしまう。 クロノスとヘイゲンは剣で決闘を始める。クロノスの新しい剣は吸血鬼を傷つけることができた。 しかし、ヘイゲンに剣を奪われてしまう。クロノスは壁に掛けてあった剣を取り応戦。胸を貫くが、その剣でヘイゲンを倒すことはできなかった。 クロノスに迫るヘイゲン。グロストは聖剣をクロノスに投げて渡す。次の瞬間、剣はヘイゲンを突き刺していた。 白髪になって倒れヘイゲンは死んだ。動けるようになった夫人はクロノスに襲いかかろうとする。 クロノスは剣の一閃で夫人を倒す。意識を取り戻すサラとポール。 ヘイゲンと夫人は折り重なって骨と化していた。クロノスは剣を二つに死体に投げつけ立ち去っていく。 カーラを残し、クロノスの馬とグロストの馬車は次なる敵を求めて走っていくのだった。 キャプテン・クロノスは剣で闘う吸血鬼ハンターだが、映画の作風そのものはマカロニ・ウエスタンのタッチに近い印象を受けた。 舞台となる村は無法地帯として描かれ、クロノスは相手が仕掛けて来たとはいえ、多くの死傷者を出すが、取り締まる者は誰一人いない。 アクション場面は悪くないが、サスペンス描写はやや大味。 娘たちが襲われるシーンなど、もう少しハラハラさせる演出がなされていれば良かったと思う。 血を吸って若さを奪い相手を殺す吸血鬼とか、生き返るカエルの死体とか、設定についても新しいアイデアを盛り込んでおり、それなりに楽しめる作品に仕上がってはいる。 夫婦の吸血鬼が折り重なるように朽ち果てていくラストは、ちょっと1974年の「血を吸う薔薇」を思い出させる。日本未公開作品だがスタッフの誰かが海外で見て参考にしたのかも知れない。 「吸血鬼ハンター」は当初シリーズ化を念頭に製作されたらしいのだが、翌年にハマープロ自体がホラー映画製作から撤退したため、1作で終わってしまった。 1973年の「エクソシスト」以降、ハリウッド・メジャーが競ってホラー映画(当時はオカルト映画という呼称が多く使われた)を製作し始めた一方で、英国の老舗とも言えるハマープロのホラー映画がなくなってしまったことは本当に残念だと思う。 |