原題 ; FIRST MEN IN THE MOON(1964) |
監督 ; ネイザン・ジュラン |
脚本 ; ナイジェル・ニール、ジャン・リード |
音楽 ; ローリー・ジョンソン |
出演 ; エドワード・ジャッド、マーサ・ハイヤー、ライオネル・ジェフリーズ |
H・G・ウェルズの原作を、特撮レイ・ハリーハウゼン、製作チャールズ・H・シニアのコンビで映像化したSFファンタジー。 月面に世界初の探査船が着陸成功した。乗組員は世界各国の合同メンバー。 船にタラップはなく、乗組員はワイアにぶら下がって月面に降りる。 地球では世紀のイベントに大騒ぎ。各国が報道している。 月面を探索する隊員たち。彼らが見つけたのは、なんとイギリスの国旗。 そこには「ビクトリア女王陛下に栄光あれ1899年」というメモもあり、署名がされていた。 ただちに地球では署名のあった人々について調査が開始される。 キャスリン(マーサ・ハイヤー)は10年ほど前に死んでいた。ベッドフォード(エドワード・ジャッド)は療養所暮らしだという。 調査員が療養所に向かった。 老看護婦によるとベッドフォードは妄想に取りつかれており、月に関する警告を各種機関に出そうとしていたという。 月に残した国旗の写真を見たベッドフォードは、「あそこは危険だ」と取り乱す。 ベッドフォードは1899年のことを話し出した。 投機に失敗して借金を背負ったベッドフォードは、戯曲を書いて一発当てようと、執筆のため片田舎に家を借りた。 ある日、フォアンセのキャスリンが当時は珍しい自動車でやってくる。 ベッドフォードの戯曲はさっぱり進んでいない。彼には家賃の督促状が来ていた。ベッドフォードはキャスリンに遺産でもらった家だと嘘をつく。結婚を迫られたベッドフォードは、借金があることを白状する。 キャスリンが留守番していると、この家を空き家と思っていた近所のカボール(ライオネル・ジェフリーズ)が訪ねてきた。 カボールは科学者で画期的な発明が完成間近だという。彼の要件は、実験の影響でこの家が壊れるかもしれないので、事前に買い取りたいというものだった。 ベッドフォードが遺産相続したと信じているキャスリンは大喜び。帰ってきて話を聞いたベッドフォードは大慌て。 ベッドフォードは事情を説明しようカボールの家に行く。そこで彼はカボールの奇妙な実験に興味を持つ。 カボールが開発しているのは、重力を遮断するペースト状の金属カボライトだった。 さっそく椅子の裏にペーストを塗って試してみる。椅子はベッドフォードを乗せたまま浮きあがった。 ベッドフォードはカボールの研究に投資することを決めた。キャスリンに書類を作らせ屋敷を売って資金を作る。 カボールは、カボライトを使って月に行き、金脈を探す計画を話す。彼はすでに温室の中で宇宙船を完成していた。 研究室が大爆発。驚いたキャスリンも駆けつけてくる。 カボライトは完成した。カボールは宇宙服の代わりに潜水服を使う気でいる。 無謀な計画にあきれたキャスリンは出て行ってしまう。 夜になって作業はいよいよ最終段階。キャスリンがベッドフォードのためにと酒や銃、食用のニワトリなどを持ってきた。 キャスリンは、自分と月旅行のどちらを取るか決めてほしいと言い残して去る。 ベッドフォードを待っているキャスリンのもとに来たのは警察だった。屋敷の権利書を不正に譲渡した嫌疑である。 遺産相続が嘘だと知ったキャスリンは、ベッドフォードに文句を言いに行く。 宇宙船は離陸直前。ベッドフォードは慌ててキャスリンを中に入れる。 三人を乗せて宇宙船は飛び出した。 キャスリンはいつの間にかニワトリを積み込んでいた。新鮮な卵が食べられるとベッドフォードは喜ぶが、ニワトリ嫌いな博士は錯乱してしまう。 そんなこんなで宇宙船は月に到着。着陸装置なしで胴体着陸して、ゴロゴロ転がる無茶苦茶ぶり。でも全員無事だった。 潜水服が2着しかないので、キャスリンは床下の気密室に入っていなければならない。 イギリス国旗と声明文を用意してベッドフォードとカボールは月面に出た。 カボールは有名になって女王からナイトの称号が貰えると大はしゃぎ。酸素が足りなくなるとベッドフォードにたしなめられる。どっちが科学者だか分からない。 突然、地面が割れ始める。ドーム式の出入り口になっていた。 二人は落ちるが、壁面の突起に乗ることができた。 ベッドフォードのヘルメットが取れたが息はできる。地下には空気があるらしい。カボールもヘルメットを外す。 だが、地上に戻るにはヘルメットを探さなければならない。二人は深い穴の中へと降りていく。 地下には巨大なプリズムが設置してあった。ヘルメット見つけた二人の前に月の住人が現れる。 その名はセレナイト。なんで博士がそんな名称を知ってるのかは不明。 セレナイトに囲まれたベッドフォードは、カボールが止めるのを聞かずに襲いかかる。次々にセレナイトを突き落とす。セレナイトは逃げて行った。 「大勢で復讐に来るぞ。せっかく月世界人と話すチャンスだったのに」博士は一人で来なかったことを悔やむが、ベッドフォードは気にしない。 二人が戻ると宇宙船が消えていた。地面には引きずった跡がある。 跡は巨大な扉の向こうに続いていた。二人がかりで扉をこじ開け、なんとか中に入り込む。 一方、宇宙船にはセレナイトが群がっていた。中にいたキャスリンが猟銃を発砲。 銃声を聞きつけたベッドフォードたちは走り出す。そこに巨大なイモ虫が現れた。二人は水晶をよじ登るが、カボールは落ちてしまう。 走って逃げ出したカボールは、セレナイトに捕まった。岩陰に隠れたベッドフォードを巨大イモ虫が襲う。 セレナイトが光線兵器で怪獣を殺した。 捕まったキャスリンが閉じ込められていると、そこにカボールも連れてこられた。 セレナイトはかなり知能が高いらしく、すぐにカボールの言葉を理解し始める。 カボールとキャスリンはセレナイトの住処を歩き回る。巨大な酸素発生装置が稼働していた。太陽光で動く永久運動装置もある。 セレナイトが宇宙船が解体していた。彼らはカボナイトを複製しようとしたが、上手くいかないという。 カボールはヘリウムがポイントだと教える。 仕事を終えたセレナイトは、サナギ状になり次の仕事を待つ。 「理にかなってる」カブールは感心したが、キャスリンに「私たちも用がすんだらこうなるのよ」と言われてゾッとする。 日食が始まり月が地球の影に入った。動力装置が停止してしまう。セレナイトたちも仮眠状態に入っていく。 行動を起こすチャンスなのだが、カボールはのんびりしている。キャスリンに昼寝させた。 隠れて動き回っていたベッドフォードがカボールと再会。宇宙船を組み立て直して地球に帰ろうというが、カボールはもう少し時間がほしいという。 日食が終わり、動力やセレナイトが活動を再開した。 ベッドフォードは閉じ込められていたキャスリンを救出。カボールは巨大な階段のある部屋に出た。 最上段にいるのが支配者らしい。カボールは質問されて地球のことを説明する。 ベッドフォードとキャスリンは宇宙船を組み立て直そうとするが、上手くいかずカボールを探しに行く。 カボールは支配者に、地球の戦争について話していた。 暴力的な人間が攻めてきたらセレナイトが滅ぼされると判断した支配者は、カボナイトの秘密を知るカボールを月に残そうとする。 「これは裁判だ」物陰で聞いていたベッドフォードが飛び出し、カボールともみ合いになる。持っていた猟銃が暴発。セレナイトが襲ってきた。 仕方なく逃げだすカボール。ベッドフォードは彼がいないと帰れないのだ。 カボールは宇宙船を直すが、自分は月に残る決意をしていた。 ベッドフォードとキャスリンを乗せた宇宙船が飛び出していく。 宇宙船はザンジバル沖に沈み、二人は泳いで陸に辿り着いた。 ベッドフォードの話はここで終わる。 月探検隊の中継が始まった。隊員たちがセレナイトの都市を発見する。 そこは廃墟と化していた。地球から持ち込まれた細菌が、免疫のないセレナイトを滅ぼしたらしい。 ベッドフォードはカボールが風邪をひいていたことを思い出すのだった。 異星人との友好的なコンタクトを主張し続けた博士が、セレナイトを滅ぼしてしまったというオチ。 原作は読んでいないのだが、このオチはウェルズの代表作「宇宙戦争」に似ている。 宇宙船が持ち去られるくだりは、「タイムマシン」ぽいし、原作にあるのだろうか。 コメディー・タッチの作品だが、風刺が効いているというほどでもない。ホラ話の楽しさは多少あるが、どうも中途半端な印象なのが残念。 登場人物たちに、今ひとつ魅力が欠けているのも難点。 宇宙船が飛び立つころには上映時間の半分が過ぎており、セレナイトが登場するのは残り時間が30分強になってから。 セレナイトは大半が着ぐるみで、ストップモーションアニメによる特撮が少なめの作品になっている。 レイ・ハリーハウゼンらしい見せ場は、巨大イモ虫登場シーンくらい。 中盤のカボール邸爆発は、セットを上下逆さに組んで上に噴出する映像にしたのだろう。 |