原題 ; SUSPIRIA(1977) |
監督 ; ダリオ・アルジェント |
脚本 ; ダリオ・アルジェント、ダリア・ニコロディ |
音楽 ; ゴブリン |
出演 ; ジェシカ・ハーパー、アリダ・ヴァリ、ジョーン・ベネット、ウド・キア |
ダリオ・アルジェント監督の出世作。「エクソシスト」「ヘルハウス」「悪魔のはらわた」の1974年が第一次ホラー映画ブームとすれば、本作と大林宣彦監督の「ハウス」が公開された1977年が第二次ホラー映画ブームだったといえるかもしれない。(もっとも、当時は従来のホラー映画と差別化を図ったのか、オカルト映画の名称のほうが多く使われていた) スージー・バニヨン(ジェシカ・ハーパー)はフライブルグの名門校でバレエを学ぶために留学する。 空港で雨に降られたスージーは苦労してタクシーをつかまえ、エッシャー街に向かう。この場面で運転手席の仕切り板に監督自身の顔を不気味に写り込ませていることは有名。もしかしたら前作「サスペリアPART2」における犯人の顔のセルフ・パロディーなのかもしれない。 学園に着くと、「アイリスが3つ、青を回して」と言いながら一人の生徒が飛び出してくる。結局、スージーは追い返されてしまう。 逃げ出した生徒パットは知り合いの家に泊めてもらうが、窓ガラスを割って襲い掛かった手に殺されてしまう。死体はロープで吊るされ、落ちてきた鉄材とガラスで知り合いの女性も死ぬ。 翌日あらためて登校したスージーはタナー教師(アリダ・ヴァリ)とブランク副校長(ジョーン・ベネット)に会う。校長は旅行中だという。 パットの殺人事件で警察も来ていた。 スージーはサラ、オルガ、そして学費稼ぎにタナー先生の世話をしているという男子生徒マークと知り合う。 学校の寮に空室ができたが、スージーはオルガと同居することにした。 タナー先生の授業初日、スージーはめまいを起こし倒れてしまう。保健室に運ばれた彼女は、自分の荷物が運び込まれているのを知った。 強制的に入寮させられたスージー。隣室はサラだった。スージーは医師の処方により、妙な食事を食べさせられるようになる。 髪をとかしていたスージーはクシにうじ虫がついているのに気づき驚く。天井から無数のうじ虫が落ちてきて学園はパニックに陥る。 屋根裏に保管された食料が腐ってうじ虫が大量発生したのだという。生徒たちは稽古場に簡易ベッドを並べて寝ることになった。 深夜になって呻き声のようなものが聞こえてくる。サラは旅行に出ているはずの校長のいびきだと言う。 学校で働く盲目のピアニスト、ダニエルの盲導犬がターナー先生の息子アルベルトを噛むという事件が起きた。訓練された犬が人を噛むはずがない、とダニエルは謝罪せず、学園を去っていく。 スージーは夜学園を出るはずの先生たちの足音が中に向かっていることに気づく。それを聞いたサラは行く先を突き止めようと考える。 ダニエルはパブに寄った帰り、広場の真ん中で自分の盲導犬に喉を噛み裂かれて死ぬ。 パットに続いてダニエルが死んだことで怯える生徒もいた。 スージーは到着した夜にパットが言っていた言葉をブランクに伝える。 サラはパットから預かったメモを持っていたが、それが盗まれてしまう、スージーは夜になると意識が朦朧としてしまい、サラがいくら呼びかけても起きない。 怪しい気配を感じたサラは、一人校内を逃げまどう。彼女は何者かに襲われ物置部屋に追いつめられる。 荷物を積んで高窓から脱出したが次の部屋には大量の針金が保管されていた。針金が巻きついて身動きできなくなったサラの喉笛をナイフが切り裂く。 翌朝、ターナーとマークはスージーに、サラが早朝に学園を去ったと伝える。 スージーは以前サラを診察していた精神科医フランク・マンデル(ウド・キア)に相談する。フランクは、サラが学園の創設者ヘレナ・マルコスが「黒の魔女」と呼ばれるギリシャ移民の魔女で、迫害を受け火事で焼死したと信じていたことをと話す。サラの説では、今の学園はヘレナの弟子たちが再建したのだという。 その夜、スージーは学園の医師が出す夕食をトイレに流してしまう。彼女はサラの残したメモを見つける。夜、学園の中に向かう先生たちの歩数を数えたものだ。 スージーはメモを頼りに通路を進んでいく。 絨毯の敷かれた部屋に入り、足音はヒントにならなくなる。スージーは壁に描かれた3つのアイリスを見つけた。彼女が青いアイリスを回すと。隠し扉が開く。 奥にはさらに通路が続く。突き当りの部屋では、ブランクを中心に教師やアルベルトが集会を開き、スージーを殺す相談をしていた。 スージーは血まみれになったサラの死体を見つける。両目にはピンが刺されていた。 部屋から出てきた者を避けるため、スージーが脇の部屋に入ると以前聞こえたいびきが聞こえていた。 スージーがつまずいて物音を立てると、寝ていた人影がむっくりと起き上がり、ヘレナ・マルコスと名乗る。 影は「私を殺すつもりかい」、と高笑いする。スージーがカーテンを開けてベッドを覗くと誰もいない。 「お前はすぐに死に会うよ」扉が開き血まみれのサラがナイフを構えて入ってくる。 その時、稲光に反射するかのようにベッドの上で人の輪郭が浮かび上がった。 スージーは、それを目がけて尖った鉄材を振り下ろす。黒焦げの魔女が姿を現し、同時にサラの姿は消える。 魔女ヘレナ・マルコスが息絶えると建物が崩れ始めた。集会室では集まった者たちがのた打ち回っている。 次々と割れるガラス。スージーは雨の降りしきる屋外へと脱出したのだった。 世界的にヒットしたエポック・メーキング的作品で、特に日本では人気を呼び、後に同名のホラー・コミック雑誌が創刊されたほど。 フライブルグ、ニューヨーク、ローマに建てられた魔女3母神の家を舞台にした3部作の第1作。この作品だけマイナーな土地を舞台にしているのは、多分本作のヒットによって3部作という構想が生み出されたからではないかと思う。 色彩に凝ったダリオ・アルジェントが、当時すでに使われなくなっていたテクニカラーの撮影機を捜し出したとかで、赤を中心とした色彩豊かなセットと照明が効果をあげて、前作から組み始めたゴブリンのサウンドも映像を盛り上げている。 せっかくのウド・キアが目立たないとか、ラストがあっけないとか、残念な部分もあるが、今見てもけっこう面白い。個人的には本作以前に撮っていた猟奇犯罪物のほうがお気に入りではあるが。 今回、当時はCGはなく、特殊メークも発達していなかったため、ラストに登場する黒焦げの魔女に90才以上の本物の老婆(素人)を起用したと知って驚いた。 |