タイム・マシン

ストーリーは基本的にラストまで
紹介してあります。
この作品はDVDが発売されているので
鑑賞が可能です。御注意ください。

 原題 ; THE TIME MACHINE(1960)
 監督 ; ジョージ・パル
 脚本 ; デヴィッド・ダンカン
 音楽 ; ラッセル・ガルシア
 出演 ; ロッド・テイラー、アラン・ヤング、イヴェット・ミミュー、セバスチャン・キャボット
H.G.ウェルズの代表作をジョージ・パルが映像化した「宇宙戦争」と並ぶSF映画の古典名作。
黒い背景に数々に時計が映し出され、、最後に出てきたビッグ・ベンに雷鳴が鳴り響いてタイトルとなる。
青年発明家ジョージ(ロッド・テイラー)の家に4人の紳士が招かれる。ジョージは約束の時間になっても姿を見せない。苛立つ紳士たちにメイドのワチェット夫人がメモを渡す。戻らなければ先に食事を始めてくれというのだ。
そこにボロボロの姿をしたジョージが現われた。彼は5日前のことから話し始める。
1899年大晦日のその日、ジョージは今晩と同じ4人に新発明を披露していた。彼は4次元について研究を進めていた。箱の中からパラボラの付いたソリのようなミニチュアを取り出す。これがタイム・マシンであり、大型であれば時間旅行が可能だと言う。
ジョージは、それに葉巻を乗せ、フィリップ博士(セバスチャン・キャボット)にスイッチを入れさせる。ミニチュアは机の上から消えてしまった。
ジョージは自分で時間旅行がしたいのだ。フィリップ博士たちは、半信半疑ながら危険だと彼を止める。
紳士たちは帰っていったが、ひとりデヴィッド・ウィルビー(アラン・ヤング)がこっそり残っていた。彼はジョージになぜ時間にこだわるのか問いただす。
ジョージは戦争などで大量に人が死んでいく今が好きでないのだと言う。デヴィッドは、もしタイム・マシンが本当にあるなら、壊してしまったほうがいいと勧めて帰っていく。
ワチェット夫人も帰し、一人になったジョージは研究室に置かれた大型のタイム・マシンに乗り込む。
少しだけ動かしてみると、時計が1時間半以上進み、ロウソクも短くなっていた。懐中時計は進んでいない。
再び起動すると周囲の全てがコマ落としとなって動き始める。さらに加速すると朝と夜が瞬時に入れ替わっていく。
ガラス越しに見えるショーウィンドウのドレスがめまぐるしく変わる。
1917年、ジョージの家は廃屋と化した。マシンを止めて外に出てみると、見慣れぬ自動車が走っている。デヴィッドと思って声をかけた相手は彼の息子ジェームズ(アラン・ヤング二役)だった。デヴィッドは1年前に戦死したという。
自分の事を聞くと、行方不明扱いになっていた。デヴィッドが彼の屋敷の管理人となり、頑として売らずにいたのだ。
タイム・マシンに戻ったジョージは時間旅行を再会。
1940年、ロンドンは戦火に襲われていた。家が消失したらしく、タイム・マシンは屋外に出た。
周囲にはビルが建ち始める。変わらないのはショーウィンドウのマネキンだけだった。
1966年、群衆が避難をしている。土地は、ウィルビー家によりジョージを記念する公園となっていた。
老人となったジェームズに出会う。どうやら原子爆弾が落ちるらしいのだが、ジョージには理解できない。
核爆発で町が崩れていく。火山は噴火し、溶岩が襲ってくる。ジョージは間一髪タイム・マシンを出発させた。
固まった溶岩の中を時間旅行する。やがて取り囲む溶岩が崩れ、緑に取り囲まれた。80万年後の世界である。
急停止したためタイム・マシンが横転してしまう。それを起こして探検を始める。
あたりはジャングルと化し、原色の花が咲き乱れている。
破壊されたドームがあった。ジョージはその中に入っていく。食器と果物が置かれた幾つもの円卓。その周りには座布団が敷かれている。だが誰もいない。
再びジャングルをさまようジョージ。疲れ果てた彼は、河辺で大勢の若い男女が戯れているのを見つける。そこに悲鳴が轟く。一人の女(イヴェット・ミミュー)が川に流されたのだ。群衆は知らぬフリである。
上着を脱いで飛び込むジョージ。彼は岸へと女を助け上げた。女は無表情で何事もなかったかのように集団に戻っていく。
群衆はドームへと入っていく。入り口の階段に座り込むジョージに、先ほど助けた女が声をかけてきた。
溺れる人間がいても見向きもせず、ジョージが何者であるかも誰も気にしない世界。年配の人間はいないという。
女の名はウィーナといった。彼女に連れられジョージはドームに入っていく。人々は気の向くままに果物をむさぼっていた。
この世界には政府も法律もなかった。食べ物は自然に出来るのだという。
一人の青年に図書室に案内させるが、書物はホコリまみれで強く触れば崩れてしまう状態。
ジョージは文化が滅びてしまったことを知った。絶望したジョージは自分の時代に戻ろうとする。
しかしタイム・マシンが消えていた。引きずった跡は閉ざされた建造物の中に消えている。
ジョージは白い人影を見つけて追う。マッチをすると、その明りに逃げていった。
彼を追ってきたウィーナに聞くと、扉を開けられるのはモーロックだけだという。モーロックは彼女たちに食糧や衣服も与えてくれている。
茂みから現われたモーロックにウィーナがさらわれそうになるが、ジョージが追いかけると逃げていった。焚き火をすると、ウィーナは火も初めて見ると言う。
ジョージは、この時代の無気力化した人々を目覚めさせることが出来るのではないかと考える。
モーロックは、地下で機械を使っているようだった。
ウィーナは、しゃべるリングがあると言う。それは一種の録音メディアで回転させると再生する。それによると300年以上に渡る戦争の後、大気は汚染され地上に安全な場所はなくなった。人類は地下の巨大洞窟に移住したモーロックと、望みの少ない地上を選んだイーロイとの二つに分かれたのだ。
モーロックは支配者となり、奴隷化したイーロイを一定の年齢に達するとさらっていた。
ジョージが地下へ潜入しようとしたとき、サイレンが鳴り始めウィーナの様子がおかしくなる。操られるように歩き出す。
ジョージが追うと、大勢のイーロイが一方向に進んでいた。例の建造物の扉が開かれ、ある程度の人数が中に入るとサイレンがやみ、外に残った者たちは何事もなかったように帰っていく。中に入った者は決して帰って来ない。
ジョージは地下への縦穴を降りてモーロックの世界に忍び込む。
その中で見たものは、モーロックに食われたイーロイの白骨死体だった。イーロイはモーロックの家畜なのだ。
ウィーナたちを見つけたジョージは、モーロックのムチを奪って助けようとするが多勢に無勢、追いつめられてしまった。だが、マッチを燃やすとモーロックは怯みだす。闇の世界に生きるモーロックにとって炎は眩しすぎるのだ。
ジョージは松明を灯すが、モーロックにはじき落とされてしまう。モーロックと格闘するジョージ。その姿を見て勇気を奮い起こしたイーロイの若者が首を絞められているジョージの窮地を救う。
ジョージがオイルに火をつけた。炎上する洞窟。ジョージとイーロイたちは通風孔から脱出した。モーロックの世界は焼き尽くされ、陥没していく。
もう夜が来てもモーロックを恐れる必要はなくなった。
ジョージは隠されていたタイム・マシンを見つけるが、彼一人が入ったところで扉が閉ざされてしまう。そこにモーロックの生き残りが襲ってきた。タイム・マシンが起動し、モーロックの死体が見る見る朽ち果てていく。
ジョージはタイム・マシンを逆行させて過去に戻る。そして1900年1月5日、自宅に戻った彼は4人の紳士に会い冒険談を伝えるが、彼らは信じない。
雪の中を4人は帰っていった。ジョージはデヴィッドに別れを告げる。
デヴィッドは馬車に乗らず引き返す。機械音を聞きつけて部屋に入ると、ジョージはすでにタイム・マシンで旅立ったあとだった。
床にはタイム・マシンを引きずった跡がある。デヴィッドは納得する。タイムマシンが到着する場所をウィーナのいるスフィンクスの外側にする必要があったのだ。
ジョージはイーロイとともに新しい世界を築くため戻のだ。ワチェット夫人は3冊の本がなくなっていくのに気づく。
彼が現代に戻ってくるかは見当もつかない。なにしろ全ての時間が彼のものなのだから。
全体的に完成度の高い作品だが、核爆弾による最終戦争のイメージが貧困なのは残念。なぜか溶岩で表現しているので間一髪主人公は助かるが、本当だったら被曝してしまったように思う。
初期のSF小説は科学や自然の脅威を描くのに力が注がれ、ドラマ性の弱いものがけっこうあるように思う。
「タイム・マシン」も原作ではヒロインがあっさり殺され、主人公は単に2回目の冒険に出て消息を絶っただけになっている。
本作以前にテレビドラマ版が製作されているようなので断定できないが、「タイム・マシン」の映像化で地球の再生を描くようになったのはジョージ・パルの功績かもしれない。
なお、DVDの映像特典には本作で使われた小道具のタイム・マシンのその後を追うドキュメンタリーが収録されており、そのタイム・マシンを使用した出征直前のデヴィッドをジョージが訪ねてくるミニ・ドラマを含めて、とても面白かった。