深海の軍神
 原題 ; WAR GODS OF THE DEEP(1965)
 監督 ; ジャック・ターナー
 脚本 ; チャールズ・ベネット、ルイス・M・ヘイワード
 音楽 ; スタンリー・ブラック
 出演 ; ヴィンセント・プライス、タブ・ハンター、スーザン・ハート、デヴィッド・トムリンソン
エドガー・アラン・ポーの詩を原案にした海洋冒険映画。「CITY UNDAER THE SEA」の別タイトルあり。
弁護士ペンローズの死体が浜辺に打ち上げられた。
ベン・ハリス(タブ・ハンター)がペンローズの住んでいた屋敷に事件を知らせに行く。
その屋敷には妙な連中が集まっていた。
ベンは屋敷に住む美女ジル・トレゲリス(スーザン・ハー)に自称画家のハロルド・T・ジョーンズ(デヴィッド・トムリンソ)を紹介される。
ペンローズの部屋から物音がした。
ベンが部屋に入ると、青い肌の怪物がいて窓から逃げだす。窓の下は断崖絶壁だった。
その頃、猟師たちは失われた海底都市の伝説について噂話をしていた。
ハロルドによると彼が描いたジルのスケッチが盗まれていた。
ベンは鉱山を探す技師で、先ほど見たのは人間ではなかったと感じている。
危険を感じたベンはジルに屋敷を出るよう勧めるが、彼女は聞き入れない。
用心のため、ベンは屋敷に泊まり込む。
その夜、ジルは怪物に襲われ、隠し扉から連れ去られてしまう。
ハロルドの飼っているニワトリがスイッチをつついたので、隠し扉を見つけることができた。
ベンとハロルドは中に入っていく。巨大な洞窟へと続いており、渦を巻く泉があった。
2人は、その泉に落ちてしまう。気がついた場所は水門の中のようだった。
さらに地下洞窟を進んで行くと、何かささやき声が聞こえてくる。
岩壁に通路が掘られていた。二人が出た先は巨大な像の手のひら.
下を見下ろすと、強制労働で何かを採掘させられる者たちがいた。
何も掘り出せなかった者は水責めで処刑されてしまう。
2人はさらにジルを探す。ベンは入って来たヒゲ面の男ダンに殴りかかり、ジルの居場所を聞き出そうとする。
そこに、ここの支配者サー・ヒュー船長(ヴィンセント・プライス)が現れた。彼はここが海底都市で出口はないという。
近くにある海底火山の活動が激しくなり破局が近づいていた。
都市を開発した人々は火山熱でポンプを動かし、海水を分解して酸素と水を得ていた。その人々は死に絶え、ギルマンと呼ばれる半魚人たちが残されたのだ。
男は半魚人の生死を握り支配している。だが、地震が激しくなりポンプが壊れれば、すべてが終わりなのだ。
ハロルドは早く逃げだした方がいいというが、サー・ヒュー船長に都市を出るつもりはない。ハロルドはベンを優秀な科学者にでっちあげてしまう。
すっかり信じた船長は、ベンに火山活動を止めるよう頼み込む。
船長の下男サイモンは60年前に舌を切られて話せないのだというが、30代にしか見えない。
書斎にはポーの初版本が置かれていた。その本に載っている詩のひとつは、まるでこの都市について読んでいるようだった。
ダンが恩赦を与えるなら逃がしてもいいと提案してくる。
1803年に船長らは密輸をしていたが、役人に追われ偶然この都市に逃げ込んだ。それ以来100年以上も都市にいるのだという。
その会話を船長に聞かれてしまった。都市に入ってから誰も年を取らなくなった。だが、日中に都市を出て陽光を浴びると老化が急激に進み死んでしまうのだという。
ダンは処刑されてしまった。
船長は二人に目隠しをして、ジルのところに連れていく。彼女は薬で眠らされていた。
戻るときも目隠しをされたが、ハロルドは方向と歩数を覚えていた。
ジルは、ベアトリスというサー・ヒュー船長の死んだ妻にそっくりだった。
2人はジルを見つけ地上に繋がる別の道があると確信する。彼らは居合わせた老人アイブスを脱出に誘うが、アイブスはとどまるという。
しかし、三人の辿り着いたのは船長の元だった。
サー・ヒュー船長はベンとハロルドを半魚人が儀式で捧げるいけにえにすると言いだす。彼は二人に逃げるチャンスを与えるが、ジルを帰す気はなかい。
アイブスが記憶を取り戻した。ジルが連れてこられた道を教え、水門の部屋にある潜水服を着て逃げるようにいう。
海底での頼りは火山の放つ光のみだ。
アイブスが警報の鐘を鳴らし、同時に三人が脱出を始める。
三人の姿がないことに気づいた船長は追跡を開始。
潜水服を着た三人は海中に入っていく。水中弓で武装した一団が彼らを追う。
半魚人も加わって海底での闘いが繰り広げられる。岩で殴って半魚人撃退に成功。
船長の部下たちによる追撃もかわし、三人は地上に繋がる洞窟に出た。
ついに本格的な火山活動が始まる。岩壁が崩れジルとハロルドが閉じ込めらてしまう。
サー・ヒュー船長たちが追ってきた。べンが部下を倒す。
最後に残った船長が銃を向けるが、像が崩れ落ち彼もガレキの中に閉じ込められてしまう。
ベンはジルとハロルドを助け出した。
船長が助けを求める。だが、時間は残されていなかった。彼は三人に逃げ道を襲える。
全てが崩れ始めた。そのおかげで船長は脱出することができた。
海中では部下たちと半魚人が戦っている。
地上に出たサー・ヒュー船長は陽光を浴びたて老化が始まり息絶えてしまう。
三人は海底から噴き上がる噴火の火柱を見つめていた。
1942年の「キャット・ピープル」を代表作とするジャック・ターナー監督晩年の作品。
エドガー・アラン・ポーの"City in the Sea"という詩にヒントを得ているとのことだが、作品自体はジュール・ヴェルヌの冒険ものにH.P.ラヴクラフトの深海ホラーとハガートの「洞窟の女王」のテイストを足した印象になっている。
ホラー映画的表現は序盤で弁護士の部屋半魚人が現れる場面くらいで、冒険映画として構成されており、ヴィンセント・プライスが主演したエドガー・アラン・ポー原作物の中でも異色な出来ばえになっている。
単純なストーリーでメリハリには欠けるが、なかなか雰囲気が出ており、ヴィンセント・プライスの貫録ある演技と相まって捨てがたい魅力を感じさせる。
コメディ・リリーフのデヴィッド・トムリンソも軽妙な演技で好演。
残念なことは、かなり苦労したと思われるクライマックスの水中撮影による戦闘が盛り上がらないこと。
動きが鈍いし、同じ潜水服を着ているので区別がつかない。数字とかマークを書き込んだほうが良かった。
半魚人の着ぐるみは「大アマゾンの半魚人」ほどの出来ではないが悪くはない。東映の「海底大戦争」の半魚人に近いか。
特筆すべきは半魚人にギルマンの名称が使われていること。
昔の少年誌のモンスター特集では半魚人をギルマンと掲載することが時々あったが、「大アマゾンの半魚人」では、その呼称はでてこない。
半魚人の大群が登場するH.P.ラヴクラフトの「インスマスの影」にギルマンという登場人物がいたためという説が有力だった。
多分この作品も「インスマスの影」から引用して名づけたのだろうが、映画で半魚人をギルマンと呼んだのは初めて見た。
ただし「大アマゾンの半魚人」の続編2作は未確認。