ファイブ・コーナーズ/危険な天使たち
 原題 ; FIVE CORNERS(1988)
 監督 ; トニー・ビル
 脚本 ; ジョン・パトリック・シャンレー
 音楽 ; ジェームズ・ニュートン・ハワード
 出演 ; ジョディ・フォスター、ティム・ロビンス、トッド・グラフ、ジョン・タートゥーロ
ちょっと風変わりなサスペンスドラマで、ブラックユーモアというか皮肉っぽいタッチに仕上がっている。
元ビートルズのジョージ・ハリソンが製作に加わっている。主人公の飼っている犬にブッダなんて名前がついているのは、その影響かもしれない。
1964年ブロンクス、街では弓矢を使った殺人事件が起きていた。
ハインツ(ジョン・タートゥーロ)は、刑務所帰りのチンピラ。
かってハインツにレイプされそうになったリンダ(ジョディ・フォスター)はハリー(ティム・ロビンス)に相談しようとするが、ハリーとハインツはすでに再会していた。
ハリーは、(かっては荒くれていたらしいのだが)2年前警官だった父が撃ち殺されて以来、平和主義の活動家となっていた。博愛主義でハインツにも「愛している」とか言ったりする。
一方、ラリった婚約者メラニー(エリザベス・ベリッジ)とブリンダを持て余したサルは、5ドルでカストロとウィリーに渡してしまう。
リンダのボーイフレンド・ジェームズ(トッド・グラフ)は、自分が頼りにされないので、おかんむり。彼はハインツに襲われた後遺症で足を引きずるようになっており、助けてくれたハリーには複雑な感情を持っている。
翌日、正気に戻ったサルはメラニーの捜索願を出していたが、彼女らはカストロたちとデートを楽しんでいた。
ハリーは黒人人権運動に参加するためミシシッピーに向かう予定だった。だが、黒人の活動家サミュエル(エリック・ラ・サール)は彼を金持ちのドラ息子扱い。ハリーは強く反発する。
ハインツは電話でリンダを呼び出す。彼女はハリーと連絡を取ろうとするが外出中だった。
メラニーたちがボウリングしていると、サルがやってきた。二人は痴話喧嘩を始める。
公園でリンダはハインツと再開した。彼は2匹のペンギンをプレゼントする。動物園から盗んできたのだ。
リンダがペンギンを動物園に返そうと言うと、ハインツは1匹のペンギンを殴り殺し、もう1匹を受け取るよう強制し、お礼にキスさせる。リンダはハインツを棒で殴って逃げ出す。
ジェームズに助けを求めるリンダ。彼にペンギンを預け、叔母の家に隠れることにする。
よりを戻した二人だが、ハインツが襲い掛かりリンダを殴って気絶させ連れ去ってしまう。
遅れて駆けつけたハリーは二人の刑事とともに捜索していた。ジェームズも加わりハインツを追う。
ハリーの飼い犬ブッダにハインツの匂いを嗅がせて追跡させる。
タクシーを盗もうとしているハインツを発見するが、彼は刑事の銃を奪って撃ち逃走する。
そのころメラニーとサルは仲直りしていた。2人が乗った車が、暴走してきたハインツの車と衝突しそうになるが、間一髪ですれ違っていく。
ハインツは張り込んでいた刑事を轢き殺し、自宅にリンダを運び込む。
恋人を連れてきたと勘違いする母親。彼女は現実を逃避して生きていた。
ハインツは母親を窓から放り出して殺す。
ジェームズたちが駆けつけ、警察がアパートを包囲する。ハインツはリンダを抱いて屋上に出ていた。
二人を追うジェームズとハリー。ハリーが説得しようとする。
ハインツがハリーを撃ち、警官がハインツめがけて発砲するが二人とも軽症だった。ジェームズが組み付いて、ようやく気を取り戻したリンダを救い出す。
ハリーは、ついに暴力を振るいハインツを殴り倒す。ハリーが自らの行為にひるんだ隙に、ハインツは彼を屋上の縁に押し付ける。だが、その背中に弓が突き刺さりハインツは落下していった。隣のビルには連続殺人犯らしき2人の男がいた。
翌日、サミュエルがハリーを訪ねて来るのだった。
弓矢殺人の犯人は二人組みでカストロとウィリーを思わせるが、アップでは映らずはっきりとしない。この弓矢殺人が出てくるのは、オープニングとラストだけなので、ちょっと唐突な印象が残る。
ジョディ・フォスターがインディペンデント・スピリット賞の主演女優賞を受賞した作品(脚本とジョン・タートゥーロの助演男優賞でもノミネート)で、粗削りではあるが、独特の味わいがあり好きな作品。キャスティングもしっかりしていて、ストーリーの不自然な部分をカバーしている。
余談その一=監督のトニー・ビルは俳優出身で、以前紹介したコッポラ監督の「大人になれば」にも出演している。監督デビュー作「マイ・ボディガード(1980)」が上出来で期待したのだが、この十年ほどはテレビ界でのみ活動しているらしい。
余談その二=メラニー役のエリザベス・ベリッジは、さほど悪妻でないコンスタンツェを演じた「アマデウス」が代表作。その後、映画ではあまり活躍していないのだが、昨年の「オーシャン・オブ・ファイアー」では導入部のワイルド・ウェスト・ショーで、かの有名なアニー・オークリーを演じていた。