原題 ; AMBUSHED(1998)
 監督 ; アーネスト・ディッカーソン
 脚本 ; アンドリュー・マイルズ
 音楽 ; テリー・プルメリ
 出演 ; コートニー・B・ヴァンス、ヴァージニア・マドセン、ロバート・パトリック
人種差別思想に侵された少年を保護する黒人刑事を描くアクション映画。
エリック少年(ジェレミー・レリオット)は父親ジム・ナッターが射殺されるのを自動車の窓越しに目撃してしまう。
黒人刑事ジェリー・ロビンソン(コートニー・B・ヴァンス)は妻子を失って以来、追憶の世界に生きていた。同僚のルーシー・モンロー(ヴァージニア・マドセン)は、そんな彼を気にかけている。
ジェリーはジム殺人現場に呼び出される。目撃者ダニー・ミラーの証言によれば、犯人は身なりがいい二人の黒人だったという。
ジムはKKKの幹部であり、現場で保護されたエリックも人種差別思想に感化されていた。
ジェリーは相棒のマイク・オルガンスキー(ウィリアム・フォーサイス)とともに、事件が解決するまでエリックを山中にある警察の隠れ家にかくまうことになる。
一方、容疑のかかっていた黒人活動家ラシャードの死体が発見され、自殺と推定された。
ジェリーたちの乗った車が待ち伏せされて銃撃を受ける。車を穴だらけにしながらも現場を離れ、森の中へと逃げた。
しかし同僚のローレンス刑事(デヴィッド・キース)も敵の一味で、マイクは射殺されてしまう。ローレンスはエリックも撃とうとするが、マイクが最後の力でローレンスを撃ち倒した。
駆けつけたジェリーはエリックを連れて逃げる。
重傷を負ったローレンスは、やってきた警官隊に裏切り者はジェリーだと告げる。
そうとは知らないジェリーは警察に連絡を入れた。エリックは警察を信じるなと叫ぶ。電話の応対に違和感を感じたジェリーは居場所を告げずに電話を切る。
エリックはジェリーが黒人だから信じるという。父親を殺したのは白人だったのだ。目撃者のダニーもグルだったのである。
そのころテレビでは愛国結社の代表シャノン・ヘラルド(ロバート・パトリック)がジムに追悼の言葉を捧げていた。
ジェリーはダイナーのウエイトレスに50ドルで車を借りるが、ポンコツですぐにエンストしてしまう。
署長は弾道検査の結果が出るまで断定はできないので冷静に行動するよう訓示をたれる。
ルーシーだけはジェリーを信じていた。彼女はジェリーの無実を証明しようとするが、署長を説得することはできなかった.
ルーシーはジェリーの連絡を取る。ジェリーはローレンスが事件前に電話した相手を探り出すよう依頼した。
ジェリーが電話をしている間にエリックが殺し屋に襲われる。間一髪、ジェリーは殺し屋に銃を突きつけ、縛り上げてエリックを助け出した。
ルーシーは同僚に尾行されていた。彼女は発砲してきた同僚を撃ち殺す。
モーテルに警察が駆けつけると、殺し屋の姿はなくモーテルの管理人の死体が転がっていた。
ジェリーは子供のころ遊んだ廃屋に隠れる。エリックはヒトラーの崇拝者なので会話に苦労する。
エリックの兄は同級生の黒人と闘わなかったことで父親に殺されていた。
ルーシーはローレンスがシャノンと連絡を取っていたことをつきとめる。
殺し屋たちはジェリーの親友ワッツを襲って小屋に案内させ、彼ににジェリーを小屋からおびき出させようとする。
ワッツはジェリーに合図を送り、一斉射撃の中、自分も小屋に逃げ込むことに成功した。
殺し屋たちが踏み込むと、ジェリーたちは排水溝に脱出した後だった。
排水溝で銃撃戦となりワッツが負傷する。ジェリーは追ってきた敵を撃ち殺すが、出口にも敵が待ち構えていた。
ジープで駆けつけたルーシーが出口の二人を射殺、三人を救出する。
ジェリーに問いつめられたエリックは、犯人が数年前に仲間割れしたシャノンであることを白状する。
シャノンに父親との仲直りの仲介を頼まれたエリックは、まさか暗殺計画があるとは知らず彼に協力したのだ。
シャノンは、真相を知らぬエリックの母親と妹カレンを人質に取っていた。エリックは逃げ出し、追ったジェリーは敵に後ろから殴り倒されてしまう。
ルーシーが署に戻ると、先ほど自分が撃った同僚が署長と話していた。防弾チョッキを着ていたのだ。彼女は署長に通話記録を見せ、ローレンスがシャノンに情報を伝えていたことを知らせる。
捕まったジェリーとエリックはシャノンのもとに連れて行かれる。
シャノンはエリックにジェリー射殺を命じた。この場面では幼いエリックの妹カレンまで平然として「撃って」と声をかける。
思い余ったエリックはシャノンに向けて発砲するが当たらなかった。
シャノンは人種差別は聖戦であり、自分たちが国家権力を握らねばならないという妄執に憑かれていた。やり方の手ぬるいジムを時代遅れの恐竜扱いして抹殺したのである。
シャノンは手下にジェリーの首を吊らせる。駆けつけたルーシーが手下を射殺。ジェリーはエリックに助け出される。
敵を追ったルーシーは肩と足を撃たれてしまうが軽傷。追いついたジェリーとともに敵を倒していく。
シャノンはカレンを人質に取り、エリックに銃口を向ける。その背後にジェリーが迫っていた。
それでもエリックを撃とうとするシャノンを、ジェリーは撃ち殺すのだった。
特に際立ったアクション場面はないのだが、ひねった設定が生かされており、テンポも悪くないので飽きさせない作品に仕上がっている。
主役のコートニー・B・ヴァンスについては全く知らなかったのだが、脇役は個性派が揃って意外と充実した顔ぶれになっている。
監督のアーネスト・ディッカーソンは「デーモン・ナイト」や「デス・ゲーム2025」などそれなりに楽しめるB級作品を手掛けている。最近は「Lの世界」「CSI:マイアミ」「4400未知からの生還者」などのシリーズ物に参加しているらしい。
黒人活動家が死んだ事件がストーリーに絡まってこないなど粗さもあるが、劇場未公開作の中では拾い物だと思う。
アンブッシュ