バップス
 原題 ; B.A.P.S.(1997)
 監督 ; ロバート・タウンゼント
 脚本 ; トロイ・ベイヤー
 音楽 ; スタンリー・クラーク
 出演 ; ハリー・ベリー、マーティン・ランドー、ナタリー・ディッセル、イアン・リチャードソン
ニースィ(ハリー・ベリー)とミッキー(ナタリー・ディッセル)の二人は、すさまじい付け爪をしてダイナーでバイト中。
二人の夢は美容室とレストランを開くこと。
ニースィのボーイフレンド、アリは今どきスーパーフライを真似た髪型でダサダサ。
ダンサー募集のオーディションCMに一念発起したニースィは、ミッキーとともにロス行きを決意する。
アリはポケベル送迎サービスなる新商売を思いつくが、運転免許を持っていない。
飛行機に乗ったニースィとミッキー。早くも気分はビバリーヒルズ・セレブ。
オーディション会場に乗り込むと、応募者がビルを囲んでいた。二人はあっさり失格。
そこにビデオのスカウトマンらしき二枚目アントニオが声をかけてきた。豪邸住まいをして報酬1万ドルの美味しい話に思わず飛びつく。
二人はビバリーヒルズの大邸宅に到着。出迎えたのは、いかにも堅物そうな執事マンリー(イアン・リチャードソン)と妙に調子が良いアイザック(ジョナサン・フリード)。
執事といわれても「バットマン」でしか知らないミッキーは、マンリーをアルフレッドと呼んでからかう。これが繰り返しギャグとして展開する。
アイザックは即座に二人を採用した。
邸内には大勢のメイドが働いている。きれいな部屋に案内されて喜ぶと、そこはトイレ。ニースィがいじったら水が噴き出して大慌て。
アイザックの叔父ドナルド・ブレイクモア(マーティン・ランドー)は癌で余命2週間。彼は若いころ黒人のメイド、リリーに恋したが両親に引き裂かれてしまった。
アイザックは、ニースィにリリーの孫娘のふりをしてドナルドを慰めてほしいと頼む。
ニースィはリリーの孫デニースとしてドナルドに紹介された。
ミッキーはドナルドのためにソウル・フードを作る。彼女はアントニオがお気に入り。
アントニオは実家が大富豪だが自由を求めてアメリカに来たとかテキトーなことを言う。
マンリーはソウル・フードは動脈を詰まらせると反対するが、ドナルドは朝からアイスを食べて元気一杯。
マンリーはラップCDを買いに行かされる。
ドナルドとニースィ、ミッキーは服を買いまくって豪遊。その光景をカメラに収めるアイザック。
意外にもマンリーはテレビのソープ・ドラマ・マニアだった。
レストランに行った二人は有名人を見つけるたびに大騒ぎ。
アントニオはドナルドの金庫に自分がミッキーのために買った指輪がしまってあると、彼女にダイヤルを回させる。金庫は開かなかった。
その夜、金庫が荒らされ、マンリーが賊に殴られてしまう。物音を聞きつけたニースィとミッキーが賊を捕まえるとアントニオだった。
3人とも疑われるが、気を取り戻したマンリーの証言で2人も嫌疑は晴れ、アントニオは警察に連行される。
アントニオの正体にミッキーは落ち込む。
ドナルドの弁護士トレイシー・ショー(トロイ・ベイヤー)が訪ねてきた。アイザックの弁護士が、ドナルドを禁治産者として申し立ててきたのだ。
家宅侵入した二人の女に財産を好き勝手に使わせているドナルドに、正常な判断力がなくなっているというのだ。
すべてはドナルドの財産を自分のものにしようというアイザックの罠だった。
それでもドナルドは二人に5万ドルずつ渡そうとする。二人は受け取らず小切手を破る。
一同はディスコに繰り出してラップで踊って大騒ぎ。マンリーもノリノリで掛け声をかける。
アリが好きだが、彼に野心がなくて困っているというニースィに、ドナルドは自分も野心がなかったがデザイナー志望のリリーに夢を分けてもらって服飾業界で頑張った話をする。
良心の痛んだニースィは、自分たちが出て行った方が良いのではないかと考える。
嘘をついたことが話せないニースィは、そっと出て行き手紙で真実を伝えるつもりだった。
最後の夜、ニースィは眠れぬ夜を過ごす。
そこに髪を切ってスマートに決めたアリがやって来た。彼は運転免許を取っていた。
マンリーが連絡して呼び寄せたのだ。ミッキーのボーイフレンド、ジェームズも来ていた。
金がなくてミッキーに欲しい物を買ってやれないと泣き出すジェームズ。
その時サイレンが響いてきた。ドナルドが倒れたのだ。
病院でアイザックはニースィにギャラを渡そうとするが、彼女ははねつける。
ニースィは病床のドナルドに真実を告げようとするが、彼は黙らせて息を引き取る。前からリリーに子供がいなかったことを知っていたのだ。
屋敷を去ろうとするニースィたち。寂しげなマンリーにミッキーは初めて名を呼ぶが、彼はアルフレッドとお呼びくださいという。
ドナルドの遺言状にはBAPS(ブラック・アメリカン・プリンセス)に1億ドルを譲るとあった。
抱き合って喜ぶ二人。マンリーにも遺産が贈られ、アイザックには2セントだった。
そしてニースィとミッキーは念願のサロン・レストランを開設。アリとジェームズもポケベル送迎サービスを開業する。
サロン開店式にはデニス・ロッドマンも来店して大盛況。マンリーも元気に店を手伝っているのだった。
アントニオが金庫やぶりの罪をミッキーになすりつけようとするくだりや、アイザックがドナルドを禁治産者にして財産の管理権を奪おうと企むくだりが、中途半端に終わってしまうのが残念。
全体的に大味な印象は否めないが、脳天気なサクセス・ストーリーとして単純に楽しめる憎めない出来にはなっている。
一見堅物で実はユーモラスな性格の執事をイアン・リチャードソンが好演。ハリー・ベリーの数少ないコメディ作品でもある。