原題 ; BLACK ROBE(1991)
 監督 ; ブルース・ベレスフォード
 脚本 ; ブライアン・ムーア
 音楽 ; ジョルジュ・ドゥルリュー
 出演 ; ロテール・ブリュトー、エイデン・ヤング、サンドリーヌ・ホルト
「ドライビング・ミス・デイジー」のブルース・ベレスフォード監督による異色の宗教映画。
1634年、ニューフランス植民地時代のケベック、布教活動を行うイエズス会は消息を絶った二人の伝道師を助けにラフォーグ神父(ロテール・ブリュトー)を奥地に派遣する。
地元の青年ダニエル(エイデン・ヤング)も志願して同行することになった。
ヒューロン族の者たちとカヌーに乗り、野蛮な部族が住む危険な土地への旅が始まる。
その衣服から、ラフォーグは現地の者たちにブラック・ローブと呼ばれていた。文字を知らない原住民にとって、文章で情報を伝達する彼は、時しとて悪魔のようにも思われた。
ダニエルは、同行している族長チョミナの娘アヌーカ(サンドリーヌ・ホルト)と愛し合うようになる。
原住民は、天国では神といることが幸せであり、そこには女もタバコもないというラフォーグの話が納得できない。
ある夜、ラフォーグは森の中でセックスするダニエルとアヌーカを見つけてショックを受ける。彼は河辺に座り、木の枝で自分を叩いて気を鎮める。
原住民の中には、ブラック・ローブと分かれて狩りに出たほうが良いのではないかと考える者も出てきた。
彼らは山の部族に出会う。ラフォーグもダニエルも二つの部族の会話が理解できない。
ラフォーグは一人で山歩きして道に迷ってしまうが、狩りに出た連中と出会い助かる。
キリスト教のみを押し付けようとするラフォーグと、原住民たち本来の宗教も認めるダニエルは意見が食い違うこともあった。
山の部族の霊媒師はラフォーグが悪魔だと主張する。
原住民たちは、ときに頑迷で独善的な態度を取るラフォーグを置いて去っていこうとする。
ダニエルは彼らをカヌーで追いかけていく。山にまで追いかけてきた彼に部族に若者は弓を向ける。
チョミナは若者を止め、ケベックでの約束を守り、再びラフォーグと同行することにした。だが、彼らは武装したイロコイ族の攻撃を受けてしまう。
生き残ったラフォーグらは捕虜として連行された。
彼らは、棒で殴りかかってくる者たちが並んだ列の間を駆け抜ける試練を受ける。ラフォーグは気絶してしまうが、ダニエルに助けられた。
次にラフォーグは貝殻で薬指を切り取られた。痛みに耐えるラファーグは、さらにダニエル、チョミナとともに歌わせられる。次には生き残った部族の子供が目の前で殺された。
イロコイ族の者たちは、ラフォーグをフランス人と物々交換のネタにしようと企んでいた。
アヌーカは色仕掛けで見張りを油断させ、自分を縛っていた縄を切らせる。彼女は犯すのに夢中になっている見張りをヘラジカの足で殴って気絶させ、皆を助けた。
雪の中を4人は逃走していく。ラフォーグは敵の裏を掻いて川上にあるヒューロン族の村を目指すことにした。
山道の途中でチョミナは力尽き、白人のように愚かで貪欲だったと言い残して死んでいく。死ぬ間際に彼は女神(マニトウ)の姿を見たのだった。
いよいよ部落に近づくとアヌーカは、チョムナがかって見た予知夢では部落に入っていくのはラフォーグ一人だったと言い、ダニエルとともに去っていく。
部落に着いたラフォーグは教会を見つける。ひときわ立派な建物だったが、中では一人の神父が死んでいた。村に流行った疫病を、キリスト教の呪いと考えた者たちに殺されたのだ。
生き残っていたジェローム神父は、助かるために信仰には関係なく天国を約束してやるべきだと言い出す。
二人で互いに懺悔した日の夜、ジェローム神父は息を引き取った。
後を継いだラフォーグは、部族の者たちを愛すると誓い、洗礼を施す。
最後に「キリスト教を受け容れたヒューロン族は15年後、イロコイ族に滅ぼされ、イエズス会は伝道をあきらめた」とテロップが流れる。
秘境冒険物の側面も持っているが、全体的には静かなタッチで宗教観についての人間ドラマが展開する。
主人公は真摯な伝道師であるが、時として盲信的にも見える。他の宗教を異教として排斥してしまうことが、異文化の崩壊をもたらしてしまう悲劇が描かれているのだが、残念なことに映画の持つテーマが今一つ明確にされていない。そのため監督が作品を通じて何を言いたかったのか伝わらずに終わってしまう。
場面ごとの演出自体は丁寧だし、ジョルジュ・ドゥルリューの音楽も優れているだけに惜しい出来栄えの作品。
ブラック・ローブ