原題 ; THE BLACKSHEEP AFFAIR(1998)
 監督 ; アラン・ラム
 脚本 ; アレックス・ロー、ロイ・ゼット
 音楽 ; アレックス・サン
 出演 ; チウ・マンチェク、スー・チー、ホイ・リン、ケン・ウォン
架空の国ラベニアを舞台にした香港アクション。サリン事件のカルト教団や天安門事件など現実の出来事をアイデアに織り込んでいるが、内容は破天荒。
中国で旅客機ハイジャック事件が発生。突入した特殊部隊は全滅、燃料補給作業員に化けた二人の隊員ドン(チウ・マンチェク)とホーが乗り込もうとするが、ホーは射殺されてしまう。
ドンは命令を無視して単身旅客機に乗り込み、犯人を制圧した。
命令違反のドンは東欧のラベニア大使館へと左遷される。
そこでは元相棒のクオック(ケン・ウォン)が待っていた。二人は国際警察官暗殺に遭遇。ドンは死闘の末、首謀者を捕らえる。
男は日本の狂信カルト教団教祖にして、地下鉄サリン事件で国際手配中のミシマ(ホイ・リン)だった。
昔の恋人パン(スー・チー)もドンの赴任を聞いてやって来た。だが、彼は天安門事件騒乱時の祖国を見捨てて国外に脱出したパンを許せていなかった。
この場面でドンはパンに別れを告げて立ち去るのだが、次の場面では恩師ロンの家にパンを泊めてやり、皆で晩飯を食べてたりする。
武器買い付けにラベニアを訪れていたミシマの取引相手はラベニア国保安局長だった。
ミシマの身柄引取りのため日本から刑事がやってくるが、情報が漏れており皆殺しになる。
次には中国大使館がテロリストに襲撃されつが、ドンは全員を倒す。犯人は教祖万歳を叫びながら死んでいった。
市街では同時多発テロが勃発していた。ドンを心配したパンは大使館へと向かう。
タクシーに乗ったパンは日本人と間違われ市民に襲われるが、警官隊の鎮圧に乗じて逃げ出す。日も暮れて二人はなぜか道端で再開を果たす。
中国人難民問題で支援を求めに行った大使は、ミシマ護送警護の交換条件を出される。ラベニア保安長官はイタリア・マフィアと手を組み、護送車を襲撃させて証拠隠滅する手筈なのだ。
教祖の乗った護送車をミサイル砲で攻撃するマフィア。ドンたちは一旦切り抜けるが、橋の真ん中でマフィアと信者の挟み撃ち状態。しかもミシマが「神を見に行くぞ」とか叫んで欄干を飛び越えちゃうから大混乱。ドンは間一髪でミシマの手首を掴み身柄を確保するが、戦闘の中クオックは川に落下してしまう。
一方、大使館が信者の占拠され、パンも人質になっていた。ロンの正体は教団幹部で別名タツタだった。
ドンはミシマを教団に渡す。ミシマがドンのこめかみに銃を突きつけたとき、クオック率いる特殊部隊が突入した。銃撃戦が展開し、パンもロンをナイフで刺し殺す。
ドンは大使館員とパンを逃がして戦闘を続けるが、大使館はラベニア軍に包囲されていた。証拠隠滅のため全員抹殺の命令が出される。
邸内では信者が全滅し、ドンとミシマが1対1の闘いを始める。
クオックはラベニア軍ヘリの攻撃で負傷、ドンを心配したパンは邸内へと戻っていく。
ドンとミシマもヘリの攻撃を受け負傷、それを見たパンはヘリに発砲して逆に蜂の巣となる。
ドンはマシンガンでヘリを撃墜、ミシマも倒す。
邸外では乗り込んできたラベニア大統領の命令により保安局長が逮捕され、大使らが救出されていた。
後日、パンの遺骨を海に撒くドンの姿があった。
1時間半程度の上映時間に、ちょっと詰め込みすぎなくらいのストーリー展開。
さすがに交通整理できていない部分もあるのだが、サービス精神旺盛で見飽きない。
ただ、せっかくスー・チーを起用したのにヒロインの扱いは中途半端。最後も犬死にの印象が強い。
香港映画制作者ってキャラクターへの思い入れが薄いのか、重要な登場人物が意外なほどあっさりと殺されて驚くことがある。
信用していた身内(同然な人物)の中に裏切り者がいた、というパターンも、やけに多い気がする。一種の無常感みたいなものが、背景にあるのだろうか。
余談=主演のチウ・マンチェクは聞きなれない名前なのに見覚えあると思ったら、テレビ・シリーズ版の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズでウォン・フェイホンを演じているウィン・ツァオと同一人物だった。
スティル・ブラック