原題 ; THE COMING(1986)
 監督 ; バート・I・ゴードン
 脚本 ; バート・I・ゴードン
 音楽 ; アーサー・ケンベル
 出演 ; スーザン・スウィフト、アルバート・サルミ、ガイ・ストックウェル、ビヴァリー・ロス
バート・I・ゴードン監督には珍しいシリアスなタッチのゴシック・ホラー。公開時のタイトルは「BURNED AT THE STAKE」だったらしい。
1692年3月1日セーラム村ではパリス牧師が中心となって魔女狩りの裁判が行なわれていた。
パリス牧師は、商人ウィリアム・グッド(リチャード・ニーランド)の妻サラ・グッドをアン・パットナム(スーザン・スウィフト)に危害を加えたとして告発した。
サラは牢獄で裁判を待つことになった。ウィリアムがアンの偽証だと言うと、アンは娘のドーカスまで告発するのだった。
ウィリアムは、アンをセーラムの魔女だと罵り、娘の無事を祈るのだった。
そして現在、ロリーン(スーザン・スウィフト二役)はクラスメイトとともに魔女博物館見学に向かっていた。
街には魔女と呼ばれる黒衣のマーリーナがいた。
ロリーンは突然腕から出血する。ロリーンの脳裏に、無実を訴えながら絞首刑になったサラのイメージが浮かぶ。
博物館ではアンの証言によって命を落とした村人は20人を越え、パリス牧師は教会に信者を呼び戻すために彼女を利用したのだと解説している。1692年、セーラムにいた本当の悪魔はアンとパリス牧師なのだと。
その時、大昔の衣装を着た男がロリーンを襲った。彼女が叫ぶと男は慌てて逃げ出していく。
博物館ではビリンガム保安官(アルバート・サルミ)が事件を取り調べる。
ロリーンは次の見学地である墓地へと向かう。彼女が歩いていると頭上の木の枝が裂けてくる。
教師が気づいて駆け寄りロリーンを突き飛ばす。教師は枝の下敷きとなって死んだ。
この惨事を見たロリーンは泣き叫んで自宅に駆け戻る。心神喪失状態になった彼女は、当時の魔女裁判のセリフをつぶやく。
1692年、魔女裁判でドーカスが自分はヘビを使う魔女だと証言していた。アンは突然叫び出し、ドーカスが自分の背中を針で突いていると床を転げまわる。
ロリーンも同様に叫びながら床を転げまわっていた。そこに例の男が入ってくる。彼は時空を越えて現われたウィリアムだった。
泥棒と間違えた母カレンが発砲するがウィリアムは平気だった。彼は逃げようとして、到着した保安官に逮捕される。
気がつくとロリーンがいない。彼女は墓地をさまよっていた。そこにゾンビ化したパリス牧師が現われ、悪の力をロリーンの体内に流し込む。
グロシンガー医師とともに探していたカレンはロリーンを見つける。
ロリーンは、カレンと医師に裁判当時のアンのことを話し出す。アンは黒猫の姿をして入ってきた悪魔に犯され、森の中に誘い込まれ歌わされたのだという。
それを聞きつけたパリス牧師がアンを脅して魔女裁判を始めたのだった。生死を握ったアンは次第に夢中になっていく。
ニュース・キャスターのケヴィン・オニールが訪ねてきた。ウィリアムは本当に過去から来た人間かもしれないというのだ。カレンとグロシンガーは取り合わない。
ケヴィンは、当時の資料を図書館で調べ出す。明かりが消え、彼は閉じ込められてしまう。
女の声がするのに気づいたケヴィンはロリーンを見つける。するとスライム状の物に襲われ死ぬ。ロリーンは、その様子を冷酷に眺めていた。
グロシンガー医師は、ロリーンが幼い頃の罪悪感をアンに重ねて自分を罰しているのだと分析する。
ビリンガム保安官は、ケヴィン殺人事件でマーリーンを調べていた。彼女の犬が現場にいたのだ。
ウィリアムに面会したマーリーンは真相を知り、カレンを訪ねる。ロリーンはアン・パットナムの生まれ変わりだったのだ。
アンは、子供まで火焙りになることで悩み始める。パリス牧師は、子供までもが自分を恐れるようになると大喜び。
ロリーンは家を抜け出し墓場へと向かう。そこみはアンの墓があり、彼女は魂の救済を求めていた。そのためにはドーカスを火焙りから救わなければならない。
墓場にパリス牧師の声が響き、ペストに冒されると脅しをかける。
居合わせたグロシンガー医師は、事実を知って保安官に連絡するが、魔物に舌を抜かれて死ぬ。
博物館で魔法陣の前に立ったロリーンは、ドーカスが火焙りになる場面を見る。
そこにマーリーンがウィリアムを連れて入ってきた。ロリーンは、マーリーンの唱える呪文を繰り返す。
彼女の顔は次第に崩れていく。
過去ではドーカスの火焙りが始まろうとしていた。
「魔女を焼き殺せ」と叫んでいたアンが突然「彼女は魔女じゃない」と言い出す。あわててパリス牧師が彼女の口をふさごうとするが、過去に戻ったウィリアムが彼の手を押さえつけた。
こうしてドーカスの火焙りは中止された。
パリス牧師の魔力も消えたのか、ロリーンの顔も元に戻っていた。
ロリーンが墓地に行くと無銘だった墓にアン・パットナムと刻まれていた。
事件から14年後の1706年、アンは自らの罪を償うため事実を告白したという。
300年の時を超えて魔女裁判の決着がつけられるというストーリーはなかなか面白いのだが、バート・I・ゴードン監督には荷が重すぎたか、メリハリに欠ける作品になってしまったのが残念。
いくつかあるショック描写も弱い。
魔に魅入られた牧師や少女をもう少し丁寧に描いたら、見応えのある作品になったのではないかと思う。
魔女の棲む街