原題 ; THE DARKLINGS(1999)
 監督 ; ジェフリー・ライナー
 脚本 ; ブレンダン・フッド、ショーン・フッド
 音楽 ; フェロシャス・フィッシュ
 出演 ; ライアン・デボア、スザンヌ・ソマーズ、ティッピー・ヘドレン、マーティン・シーン
ヒッチコックの「裏窓」を意識した設定でティーンを主役に作られたサスペンス物のテレフューチャー。主人公の少年少女は無名だが、脇をヴェテラン俳優で固めている。
クリス・ジャクソン(ライアン・デボア)は風邪で咳がひどく、学校を休んで家を出られない。
その夜は嵐になり、寝つかれない彼が窓を覗くと、隣家で元野球選手クレイトン・シェパード(ティモシー・バスフィールド)が恋人の元女優クララ(スザンヌ・ソマーズ)を刺し殺すのが見えた。(クリス、クレイトン、クララの家は向う三軒両隣といった位置関係にあるらしい)
通報により警察からアイラ・エヴェレット刑事(マーティン・シーン)が来たが、クララは生きていた。アイラ刑事も祖母のマーサ(ティッピー・ヘドレン)も、クリスの言うことを信じてくれない。
クリスは野球仲間で親友のジョシュ(ベン・ジョンソン)とアイラ刑事の娘ジェシー(ミーガン・オリー)に、事件調査の協力を求める。
彼らが自転車で戻ると、クレイトンがゴミを捨てていた。その手には血のついた包丁が握られていた。
クララを心配したクリスたちが家を覗くが、クレイトンと彼女はキスしていた。
ジョシュは新聞配達のバイトをしてる。クララは、いつもの朝と様子が違った。
クレイトンの留守中に、ジョシュが二階の窓から侵入して調べることにする。トランシーバーでクリスと連絡を取りながら死体を捜す。
ジェシーが、クレイトンを尾行して見張っていたのだが、見失ってしまう。
ジョシュが地下室を探っていると、クレイトンが戻ってきた。慌てて逃げようとするジョシュだが、梯子を外されてしまった。
クレイトンは銀行の書類を燃やしていた。クリスがクレイトンに電話をかけ、出ている間にジョシュは脱出に成功した。
ジョシュが持ち出した書類によるとクレイトンと妻エミリーには30万ドルの借金があった。クリスは殺されたのがエミリーだと推理する。
そこにクレイトンが脅しに来た。彼はジョシュが落としたポラロイド写真で今日のことに感づいていたのだ。
三人は再びアイラ刑事と話すが、説得するには証拠が足りなかった。そのうえ隣家の窓からは夫婦喧嘩するクレイトンとエミリーの姿があった。クリスも自分が見たのは幻覚かと思い始める。
ジェシーは、クララが愛犬パッチの鑑札を捨てていることに気づく。
クリスが寝ていると、いつの間にかベッドにクモが入れられていた。彼は調査を打ち切ることにした。
だが、ジェシーは諦めない。今度は自分がクララの家に忍び込む。地下は小道具や化粧品でいっぱいだった。彼女は、そこにあった古い写真でクララとエミリーが双子であることを知る。
ジェシーは、クリスとジョシュに自分の推理を話す。借金をかかえたクレイトン夫妻が女優で金持ちのクララを殺して、エミリーが演じ生きているように見せかけたのだ。
だが、ジョシュは信じない。喧嘩になり騒ぎを聞きつけたマーサにジョシュは追い帰されてしまう。屋根で話していたクリスとジェシーは、クララに化けたエミリーががクレイトンの家に入っていくのを見つける。
こっそり覗く2人。リオに高飛びしようというクレイトンを、エミリーは火かき棒で殴り殺す。金を独り占めしようというのだ。
ジェシーは父を呼ぼうとするがエミリーに捕まってしまう。脅迫電話を受けたクリスは、ジョシュに協力を求める。
クリスは、クララの家に煙幕花火を仕掛けて火事だと騒ぎ立てた。家の中には銀行から下ろした金が隠してあるのだ。
クリスはエミリーが金を取りにいっている間に、ジェシーを助けだそうとする。そこにエミリーが戻ってきてしまった。
斧を手に襲ってくるエミリーから逃げる2人。ジェシーを屋根に出したクリスは、バットを手に戻っていく。
一方、ジョシュは警察に電話するが、大人を出せといわれてしまう。
戦いになるクリスとエミリー。クリスに突き飛ばされたエミリーは窓から飛び出し、ジェシーを巻き込んで屋根を滑り落ちる。
クリスがジェシーの手を掴む。ジェシーの足にはエミリーがしがみついていた。
やがてエミリーは力尽きて落下、即死した。
アイラ刑事も階上に走りジェシーを掴もうとするが、間に合わず彼女は屋根を滑り落ちていく。雨樋にぶら下がるも、やはり力尽きてしまう。
落ちていくジェシー。地上では近隣の住民たちが、マーサの編んだキルトを広げて待ち構えていた。
おかげでジェシーは無事だった。
住民がキルトをどけると、その下にはエミリーの死体が転がっている。
このクライマックスもヒッチコック映画のオマージュになっているのだが、なにしろ2階なので、いきなり即死というには説得力に欠けるのが難点。
とにかくクリスはチームに復帰してジェシーとともに野球を楽しむが、ジョシュは風邪をうつされて寝込んでいた。
ビデオ・パッケージのコピー「ヒッチコックの進化形」はあまりに大げさ過ぎるにしても、小品ながらテレビ用作品としては、けっこう楽しめる出来栄え。
クリスに想いを寄せるジェシーの恋心なども織り込み、爽やかな味わいの青春サスペンスに仕上がっている。
ただし、クモのエピソードは取って付けたようで説得力に欠けた。
ビデオ・パッケージにはマーティン・シーンが主役のようにデザインされており、それを期待して見た人はがっかりするかもしれない。
ダークリング