原題 ; DRAGON AGAINST VANPIRE(1985)
 監督 ; ライオネル・リャン
 脚本 ; ゴッドフリー・ホー
 音楽 ; ステファン・ツァン
 出演 ; エルトン・チョン、キャリー・リー、マーティン・キム、ロビン・シー
サブタイトルは「地獄から来た吸血ドラゴン」。淫獣道士どころか道士そのものが出てこない無名キャストによる香港映画でも底辺に位置するホラー・コメディー。唯一、淫獣らしいところはヴァンパイアが女性の股間に顔をうずめて血を吸う性癖を持っていること。エロティックな場面も少ない。
山道を三人組のおたずね者が逃げている。追っ手を看守と呼んでいるので脱獄囚らしい。
三人は墓荒しをした。トニー(エルトン・チョン)は卍型のペンダントをくすねる。
一方、宿屋では入浴中の娘ジェニファーが何者かに誘拐される。犯人はヴァンパイア。催眠術で彼女を眠らせ血を吸って槍で刺し殺す。
三人組はノラ犬を捕まえて食べていた。追っ手の看守に見つかってしまうが逃げ延びる。
ジェニファーの父は寝込み、妹ファニーは涙にくれていた。
三人組は、山中にある犯人の隠れ家を見つけ入り込み、怪しげな祭壇のある屋内を探索する。そこにあった物を食べて寝ていると棺から起き上がったヴァンパイアが三人の一人アルバートを襲った。
残ったトニーとマーチンは、あわてて逃げ出す。トニーは地中へと落ちてしまう。そこには老人が囚われていた。老人はヴァンパイアの師匠なのだが、少林魔術を教えることを拒んだため幽閉されていた。
トニーは穴の中まで追いかけてきた看守に捕まるが、看守はヴァンパイアに殺されてしまう。トニーがどうやって逃げたか分からないが、次の場面では、マーチンと二人でファニー父娘の宿にやってくる。この場面では、なぜか「ウルトラQ」のテーマ曲が使われている。
トニーはインチキ霊媒を披露。父娘にとりいる。
マーチンは、隣部屋に泊まった夫婦の喘ぎ声に興奮。深夜、その奥さんがヴァンパイアに襲われた。処女じゃないから血がまずいといって殺す。
夜、トニーがトイレに行っているとマーチンがヴァンパイアに入れ替わっていた。なぜかヴァンパイアは驚いて逃げていくが、ファニーの父親が首だけになって死んでいた。
マーチンは敵討ちつしようと言い出すが、ヴァンパイアの家来と化した看守に殺される。
トニーは看守を倒した。ファニーは敵討ちは無理なので逃げようと言う。
その夜、ヴァンパイアの妖術に操られたファニーはニワトリの生血を飲む。彼女はトニーに襲いかかるが、妖術が途切れてしまう。トニーの精神力が妖術に打ち勝ったという設定らしいが、良く分からない。
トニーとファニーは穴の中の師匠を訪ねる。師匠の言うには墓で盗んだペンダントがヴァンパイアから身を守る神の札だったんだそうな。
穴から助け出された師匠は、トニーに鍛錬のためと称して小屋を作らせる。泥の固まりを次々に投げてトニーに受け止めさせ、壁を作らせる。多少なりとも修行らしい場面は、ここのみである。
突然、師匠は少林魔法など嘘で、トニーに小屋を建てさせるため騙したと言い出す。トニーは変装して強盗に化け、師匠を襲い魔術書を奪おうとする。師匠はものすごく強く、トニーは撃退されてしまう。
師匠は術を教えるのは早すぎると考え嘘をついたというが、いきあたりばったりな印象。
ファニーが風呂を沸かそうとすると、水が血に変わりヴァンパイアが浸かっていた。逃げ出すファニー。
師匠は看守に刺し殺される。秘術の極意は師匠の背中に刺青されていた。看守の顔はマスクでヴァンパイアが被っていた。
ついにトニーとファニーが襲われる。何も修行していないトニーでは歯が立たない。彼は絞め殺されてしまう。
ファニーが持っていたペンダントも役に立たない。逃げ出すファニーを追いかけたヴァンパイアはふんずけた板に撥ねた鋤が顔面を直撃して死亡。ファニーに抱かれたトニーが息を吹き返してハッピー・エンドとなる。
思いつきで撮っているとしか考えられない支離滅裂なストーリー。
この作品の中で唯一名を知られているのは脚本のゴッドフリー・ホー。とはいっても日本紹介作はどれもB級作。比較的知名度の高いものはゴッドフリー・ホール名義で監督したシンシア・ラスロック主演作「ファイナルヒート」「パワーヒート」くらいか。いずれにしても代表作と呼べるほどのものはない。本作もあらすじだけ提供してのクレジットなのだと思う。
全体のバランスも悪く、少林魔術(こんな名称自体聞いたことがない)の師匠なんか小屋を建てさせただけで死んでしまうし、主人公が活躍せずヴァンパイアが自滅する脱力系のラストも笑うに笑えない。
また、夢オチを多用しているのも特徴のひとつ。センスの良い演出であれば、繰り返しギャグとなっても良いくらいだが、それほど効果はあがっていない。
淫獣道士