わが目の悪魔
 原題 ; A DEMON IN MY VIEW(1991)
 監督 ; ペトラ・ハフター
 脚本 ; ペトラ・ハフター
 音楽 ; ピノ・ドナッジオ
 出演 ; アンソニー・パーキンス、ウェ・ボーム、ソフィー・ウォード、デボラ・レイシー
晩年のアンソニー・パーキンスが得意のサイコ役を演じたドイツ映画。原作、ルース・レンデルのスリラー。
人妻ヘレン(ソフィー・ウォード)と不倫中のアンソニー・ジョンソン(ウェ・ボーム)。彼は駆け落ちの準備として、アーサー・ジョンソン(アンソニー・パーキンス)の住むアパートに入居する。
幼いころアーサーは100ポンドで実の叔母の元に養子縁組させられた過去を持っている。
若いアーサーは地下室でマネキン人形をなでまわすという性癖を身につけた。
アンソニーは、親友コンビ、コトウスキーとディーンと知り合う。ディーンが越して空いた部屋にアンソニーが入居したのである。コトウスキーには妻ヴェスタがいた。
アンソニーにヘレンから夫ロジャーが不倫に気づいたらしいと報せが入る。
アーサーはアパート住人の人数に対してゴミ袋が足りないと大家に抗議する。彼は幼いころ、厳格な義母の厳しい躾を受けた記憶に悩まされている。
アーサーは間違って届けられたアンソニーへの手紙を読み、アンソニーに謝罪の手紙を何通も書くが、結局出さずに終わってしまう。
アーサーはマネキンが生身の人間になっている幻覚を見る。
アンソニーは物置にある材木を使ってかがり火をたき、近所の人たちとパーティーの準備を進める。
この地では23年前にケンボーン連続殺人が起き、犯人は捕まっていなかった。
ヘレンは予定通りに駆け落ちしに来ない。怒ったアンソニーは黒人のガールフレンドを呼ぶのだが、同じアパートに彼女と同郷の男がいたため逃げられてしまう。
少年のアーサーは叔母に子守を頼まれた赤ん坊にピンを刺すという異常行動に出たことがあった。
表ではアンソニーと近隣の住民たちで巨大なかがり火を焚き、花火が打ち上げられていた。
かがり火の頂点にはマネキンが座らされ燃え上がっていた。それを見たアーサーに恐怖の表情が広がっていく。
狂気に取り付かれたアーサーは深夜、自分のオフィスに忍び込み荒らしまくる。
帰路、バスに乗ったアーサーは続いて乗り込んできた女に犯行を目撃されたという妄想に取り付かれた。彼は女の後をつけ絞め殺してしまう。
翌日、グラス刑事が殺人事件でアーサーを取り調べに来る。だが、それはアンソニーとの人違いだった。アーサーが殺したのははコトウスキーの妻ヴェスタだった。
ディーンはヴェスタと不倫関係にあった。それがばれないように引っ越したのだ。
事件が起きたのもディーンとパブで飲んだ帰りだった。ディーンは姿をくらましたコトウスキーが浮気に気づいて妻を殺したのではないかと疑う。
アーサーは街角で声をかけてきた売春婦も絞殺する。
アーサーはアンソニーに手紙を開けてしまったというメモを渡した。アンソニーは特に気にしない。
ヘレンからの手紙を盗み読んだアーサーは、彼女がロジャーを選びアンソニーとは二度と会わないという内容のニセ手紙を書く。
一方、コトウスキーは溺死体で発見された。
ニセ手紙を読んだアンソニーは不自然な言葉の使い方を不審に思いつつも、ヘレンの不実な態度に怒りを覚える。
アンソニーがヘレンに連絡を取ろうとすると、彼女は休暇中だった。
アーサーの次の犠牲者は看護婦だった。
次にアーサーが後ろから襲いかかったのは女と思ったら長髪の男。逆襲にあい、あっさりぶちのめされてしまう。
負傷し警官に追われるアーサー。なんとか逃げ延びることができた。
アーサーは血のついた衣服をハサミで刻みトイレに流す。彼はケンボーンの殺人鬼として自分の似顔絵がテレビで流れているのを見てビックリ。
警察は今回のミスで犯人逮捕は近いと発表していた。
アンソニーは、アーサーが大家に仮病を使うのを見て不信感を抱く。
町を歩いていたアンソニーはヘレンに呼び止められる。抱き合う二人。彼女は全てを捨てて来たのだった。
アンソニーはヘレンが別れの手紙を書いてなどいないことを知らされる。
そのころアーサーは、ヘレンを追ってきたロジャーに不倫相手と勘違いされて撃ち殺されてしまう。
アパートに帰ろうとしたアンソニーとヘレンは連行されるロジャーを見つける。二人は問題が片付いたことを知って安堵するのだった。
ペトラ・ハフター監督の演出はイマイチ歯切れの良さに欠け、交互に描かれるアーサーの生い立ちと現在の関連が把握しづらく、彼が狂気におちいっていく展開に説得力が欠けてしまっている。
もしかしたら原作が長くて、局本に要約するのに失敗したのかもしれない。
全体的に並の作品でサスペンス映画として特に盛り上がるわけでもないが、終盤の皮肉な展開はわりと面白かった。前半から妻の不倫を疑うロジャーを登場させていた方が、ラストで説得力が増した気がする。