原題 ; DRAGONSLAYER(1981)
 監督 ; マシュー・ロビンス
 脚本 ; ハル・バーウッド、マシュー・ロビンス
 音楽 ; アレックス・ノース
 出演 ; ピーター・マクニコル、ケイトリン・クラーク、ラルフ・リチャードソン
剣と魔法の国を舞台に、魔法使いの弟子と凶暴なドラゴンが戦いを繰り広げるディズニー製のアドヴェンチャー映画。この時期のディズニー映画って、わりと地味な存在になっていた印象があるのだけれど、本作は本格的にダークな作り。ファミリー映画っぽくないのが特徴。
魔法使いウルリク(ラルフ・リチャードソン)の館に一団の訪問者があった。
彼らはウルランドから来た民たちで、代表者はヴァレリアン(ケイトリン・クラーク)という。村人は、生贄を要求し続けるドラゴン退治をウルリクに依頼するためやって来たのだ。
ウルリクは自分の死を予見していたが、民たちのために立ち上がる。
旅立とうとするウルリク。そこにティリアンという男が現れ腕試しをすると言い出す。ウルリクはティリアンに短刀で刺され息絶えた。
弟子のゲイレン(ピーター・マクニコル)はウルリクの遺体を火葬する。
ゲイレンはウルリクの後継者としてドラゴン退治を決意、小間使いの老人ホッジとともにウルランドの民と合流した。
ウルランドでは今しも生贄が捧げられようとしていた。生贄の少女は鉄枷を外して逃げ出すのだが、ドラゴンは執拗に追う。少女は叫び声とともにドラゴンの吐いた炎に包まれていった。
ゲイレンはヴァレリアンが女と知った。生贄に選ばせないため、父親が男として育ててきたのだ。生贄はクジ引きで決まるのだが、王家の者や金持ちの娘は除外されていた。
ホッジはティリアン一派に弓で射られる。彼はウルリクの遺灰を燃える水に投げ込むよう、ゲイレンに言い残した。
ドラゴンの巣穴に到達したゲイレンは、呪文で岩を崩しドラゴンを封じ込めようとする。
作戦は見事成功。村では祝いの祭が開かれた。安心したヴァレリアンは始めてドレスをまとい、村人に正体を明かす。
村人たちが騒然とする中、ゲイレンは彼女をダンスに誘う。雰囲気が打ち解け、皆が輪になって踊りだした。
そこに王の使いとしてティリアンがやってきた。王が接見したいというのだ。
王は波風立てずにやっていたのに余計なことをしたとおかんむり、魔法に失敗したゲイレンは牢に入れられてしまう。
牢を訪れたエルスペス姫はクジ引きがインチキであることを知らされ、ゲイレンを逃がす。
王国を揺るがす地響きが起こった。ドラゴンは生きていたのだ。
馬を駆って村に着いたゲイレンが目にしたのは、ドラゴンに焼き払われる村の光景だった。
新たな生贄を選ぶクジ引きが行われ、選ばれたのはエルスペス姫だった。
民衆の罵声の中、王はクジ引きをやり直そうとするが、全ての札に姫の名が書かれていた。
これまでの不正を知ったエルスペス姫が自ら仕組んだのだ。
王は突然態度を変え、ゲイレンにドラゴン退治を依頼する。
ゲイレンとヴァレリアンの父は、最強の槍ドラゴンスレイヤーに魔法をこめて鍛えなおす。
ドラゴンを倒すため単身山を登るゲイレン。途中、ヴァレリアンがドラゴンの鱗で作った盾を渡す。
生贄の儀式が始まろうとしていた。突如現れたゲイレンに王の家臣たちは逃げ出してしまい、一人残ったティリアンと一騎打ちになる。戦いのさなか、姫は自ら洞窟へと降りていってしまう。
金属をも切り裂くゲイレンのドラゴンスレイヤーが、木の幹ごとティリアンを貫く。
ゲイレンが地中に向かうと、すでにエルスペス姫は子竜の餌食になっていた。
子竜どもを殺して奥へと進むゲイレン。そこには燃える湖があり、水中に潜んでいたドラゴンが襲ってきた。
ドラゴンは炎を吐いて攻撃してくるが盾のおかげで身を守ることが出来た。
子供の死を知って怒り狂うドラゴン。ゲイレンは上から飛びついてドラゴンスレイヤーを突き立てる。だが、倒すことは出来ない。
ヴァレリアンは洞窟の入り口で倒れているゲイレンを発見する。彼はまだ生きていた。二人で逃げようと誘うヴァレリアン。
一旦はヴァレリアンとともに旅立とうとするゲイレンだが、ホッジの言った燃える水が洞窟の炎の湖であることに思い至る。
二人は洞窟へと向かいウルリクの遺灰を湖に撒く。湖の炎は消え、緑の炎が一条新たに舞い上がる。その中からウルリクが甦った。
日食の闇の中ドラゴンが姿を現した。ウルリクは山頂に登ると嵐を呼んだ。雷がドラゴンを打つが倒すことは出来ない。ドラゴンの炎がウルリクを包む。ウルリクの魔力は炎を退けた。ドラゴンはウルリクを掴み、空中へと運び去る。
ゲイレンはウルリクの指示によって魔よけのアミュレットを打ち砕いた。と同時にウルリクの身体も大爆発を起こした。ドラゴンも落下して爆発する。
ドラゴンの死骸の傍らに佇むゲイレン。そこにやってきた王の一行。王は死骸に剣を突きたてドラゴン退治の偉業を我が物にする。あきれ顔のゲイレンとヴァレリアン。
二人は白馬にまたがり旅立つのだった。
エンディングの軽快なメロディが浮いて感じられるほど、全体がダークな雰囲気に包まれている。
当時のディズニー映画としては、かなり異色の作品で、そのため日本未公開となってしまったのではないだろうか。
従来のディズニー映画ならば、ろくに魔法も使えないドジな弟子の奮戦記をコミカルに描くと思うのだが。
序盤のいけにえの少女が襲われる描写からして、ファミリー映画にしてはかなり恐い。
後半、正義を貫こうとした姫君のあまりにあっけない死の描写は、無残極まりなくて無常感すら覚える。
姑息な王のキャラクター、全編くすんだトーンの映像を含め、見終わってスカッとするエンタテインメントではないのだが、独特の陰影を持っており印象的な作品ではある。
本作が映画デビューとなったピーター・マクニコルは、なかなか芽が出なかったが、変人揃いの「アリーMY LOVE」でもっともエキセントリックな弁護士を演じて人気を博した。
同じく本作で映画デビューしたケイトリン・クラークは、脇役女優として活動を続け、「ブローン・アウェイ復讐の序曲」などに出演したが、2004年に52才で亡くなっている。
ドラゴンスレイヤー