原題 ; FANTOMAS;A L'OMBRE DE LA GUILLOTINE(1913)
 監督 ; ルイ・フイヤード
 脚本 ; ルイ・フイヤード
 音楽 ; 
 出演 ;ルネ・ナヴァール、エドモン・ブレオン、ジョルジュ・メルシオール、ルネ・カール
フランスで大人気を博し全42巻が書かれたという悪漢ファントマの犯罪を描く小説のサイレント版映画化シリーズ第一作目。
パリのロイヤルパレスホテル午前1時、夜の場面だが空は明るい。ロシアの皇族、ソニヤ・ダニドフ公女が帰還する。
12万フランが彼女宛に届けられていた。
突然、ソニヤの部屋にヒゲの男が現われた。手渡した名刺は白紙。宝石をポケットに入れ、逃げ去っていく。
異状を察したボーイがエレベーターで向かうが、待ち伏せされてしまう。ボーイの服を奪った賊は警官を呼ぶと言ってホテルを抜け出す。
名刺にはファントマのの文字が浮かび上がった。エレベーターでは気絶したボーイが発見される。
この事件を取り調べたのは公安局のジューヴ警部(エドモン・ブレオン)だった。
ジューヴは友人の記者ジェローム・ファンドール(ジョルジュ・メルシオール)とベルサム卿が行方不明になった事件について話し合っていた。
失踪事件の担当となったジューヴはベルサム卿夫人を訪問する。
夫人は代理人のグルン(ルネ・ナヴァール)と相談中だった。夫人はグルンに隠れさせ、ジューヴと面会する。
ジューヴは置き忘れた帽子に目をつけ、縫いこまれたイニシャルからベルサム卿の住所録を調べてグルンの住所を知る。
グルンの住居を調べるジューヴ。そこにヨハネスブルグに荷物を運ぶよう依頼された運送屋がやって来る。
運送屋を追い返したジューヴと警官がトランクを開けると中にはベルサム卿の死体が詰め込まれていた。
死体とともにファントマの文字が浮き出る名刺も発見される。
グルンことファントマは愛人のベルサム卿夫人と共謀してベルサム卿を殺害、財産乗っ取りを企んだらしい。
数日後、グルンはベルサム卿の家から出てきたところを張り込んでいたジューヴに逮捕された。
半年後、ファントマことグルンの死刑判決が出た。
愛人を助けようとベルサム卿夫人はサンテ刑務所の看守ニベールを買収する。
看守仲間も引き入れたニベールは、グルンに夫人からの手紙を渡す。
グルンはニベールに夫人を訪問させる。夫人はニベールに10万フランでグルンと面会させるという証明書にサインさせる。
一方、パリでは人気俳優ヴァルグラン(ヴォルベール)主演の悲劇「赤い染み」が大ヒットしていた。ファントマをモデルにした死刑囚を演じる彼は、グルンそっくりのメイクで評判になっている。
その芝居を見たベルサム卿夫人はヴァルグランに美女が待っているとメッセージを出し、舞台の扮装のまま、おびき寄せる。それはファントマの死刑前夜だった。
夫人は刑務所の向かいに部屋を借りていた。ニベールと相棒は、その部屋にグルンを連れ込む。15分だけ面会させる約束だった。
そこにヴァルグランが、のこのこやって来る。夫人は彼に睡眠薬入りのコーヒーを飲ませ、意識が朦朧(もうろう)としているところを看守に引き渡してしまう。
入れ替わったことに気づかないニベールたちはヴァルグランを牢屋に入れる。
翌朝、ファントマの死刑に立ち会うため、ジューヴとファンドールも刑務所にやって来た。
ジューヴは、死刑囚がグルンでないことに気づく。
ファントマの脱獄を知ったジューヴは落胆する。彼はあらためてファントマ逮捕の決意を固めるのだった。
奪った金はたいした額なのだろうが、ファントマはたいして活躍しないうちにあっさり捕まってしまうので、それほど大物の犯罪者には見えない。
後半は愛人ベルサム卿夫人のファントマ脱獄計画が描かれるのだが、モノクロ・サイレント映画時代のメークのせいもあるのか、いかついオバサンに見えてしまい、悪女キャラとしての魅力が感じられない。
共犯者のベルサム卿夫人が、なぜ逮捕されないのかは不明。
原作では無残にも替え玉の役者はそのまま処刑されてしまうのだが、さすがに映画版では助かることになっている。
「ルパン三世/脱獄のチャンスは一度」の原典、ではないのだろうなあ。
ファントマ