年度 ; (1968)
 監督 ; 湯浅憲明
 脚本 ; 長谷川公之
 音楽 ; 菊池俊輔
 出演 ; 村井八知栄、高橋まゆみ、北原義郎、浜田ゆう子、三宅邦子、平泉征
楳図かずおの原作ということになっているが、個人的にはほぼ完全にオリジナル・ストーリーの脚本ではないかと思っている。
確かに同名の楳図かずお作品もある。手元にはないので正確には比べられないのだが、ストーリーが似すぎているのが逆に気にかかった。
「へび女」で人気を博した楳図かずおが、今更財産目当ての犯罪者が変装するなんていうストーリーを描くかどうかも疑わしい。
私の憶測だが、人気の楳図かずお原作というふれこみでスリラー映画を作ることにしたが、脚本は「警視庁物語」シリーズでミステリー作家でもある長谷川公之。
へび女なんて非科学的なもの書けるかと、犯罪映画にしてしまったのではないだろうか。
その後に雑誌社のタイアップで、楳図かずおが脚本を元にコミック版を描いたのではないかという気がする。
楳図かずおはヒロインを助ける運転手役でカメオ出演もしている。
南条家で通いのお手伝いが、謎の老婆に投げつけられた蛇でショック死するという描写から始まる。心臓麻痺で片付けられるのだが、ストーリー的には全く意味がない。
孤児院で育った小百合(村井八知栄)は、別れ別れになっていた家族が迎えに来て南条家の一員となった。
母親、夕子(浜田ゆう子)は交通事故で記憶喪失気味、小百合のことをタマミと呼んだりする。
そんな折、父、吾郎(北原義郎)は毒蛇の研究でアフリカに旅立つ。
真夜中目が覚めた小百合は、夕子が食事を運んでいるのを目にする。しかもその食事は、いつの間にかなくなっていた。
仏壇から不気味な顔が覗くこともあった。
更にベッドに蛇が這っていたりするが、お手伝いのしげ(目黒幸子)を呼んでいる間にいなくなる。
ついには不気味な女まで現れる。そのことを夕子に話すと、夕子は小百合にタマミ(高橋まゆみ)を会わせる。タマミは小百合の姉だが、屋根裏で暮らしていた。
小百合は自分の部屋でタマミと暮らすことにする。タマミの頬には奇妙な傷があった。
タマミは図鑑のカエルの絵に魅入ったりする。小百合が悪夢から目覚めると大事にしていた人形が壊されていた。
ある日、小百合はタマミの背中が蛇のようなウロコに覆われているのを見た。しげに話しても嘘つき呼ばわりされるばかり。
別の夜、姿を消したタマミを夕子としげが探しに行っている間に、タマミは自分が蛇だと言って小百合を脅す。
小百合は、孤児院で働く林青年(平泉征)に相談する。
林が院長の山川(三宅邦子)に話すと、院長は確かに南条家には自分を蛇だと思い込んでいる娘がいて、施設に入っていると聞かされていた。院長は母親が父親に内緒で娘を連れ戻し、かくまっていたのではないかと推理する。
タマミは小百合を部屋から追い出して屋根裏に住まわせようとする。母と姉に同情した小百合は従うことにした。
屋根裏の隙間から覗いた小百合は、タマミがゴムマスクを被っており、素顔にはケロイドがあることを知る。悲しみにくれる姉に、小百合は同情を深める。
今度は屋根裏の窓から白髪魔が覗き込む。
母としげが病院に出かけた隙に、タマミは小百合を脅して追い出そうとするが、小百合はこの家で父の帰りを待つと言い切る。
その夜、小百合が夜中に目覚めると部屋中にクモが放たれており、白髪魔が首を絞めてきたため気絶する。
気づいた小百合はロープで家を脱出しようとするが、見上げると白髪魔がロープを切っていた。
孤児院に逃げ延びた小百合は、院長からタマミが南条家の本当の子供ではないことを聞かされる。生まれた時、病院で取り違えられてしまい、その後真相が分かったのだが、実の母親が死んでいたため、そのまま南条家に引き取られたのだ。。
院長は吾郎に手紙を書くことにするが、白髪魔に殺されてしまう。
そこに夕子が病気で倒れたという連絡が入る。罠ではないかと疑った林も同行するが、ロープでバイクを倒され二人とも捕まってしまう。
タマミは酸で小百合の顔を焼こうとするが、林の毅然とした態度に迷い始める。
白髪魔がタマミをそそのかした真犯人で、南条邸に放火して小百合と林を焼き殺そうとする。しげが白髪魔の正体で、タマミに入る財産の分け前を狙っていたのだ。
林は燃え上がる火の中で小百合を救出、夕子を助けに再び屋内に向かう。
一人になった小百合に、しげが襲い掛かった。
近所のビル工事現場に逃げ込む小百合。宙吊りになった小百合を突き落とそうとするしげ。
犯罪に嫌気がさしたタマミは、しげを止めようとしてビルから落下、下にいた夕子にぶつかってしまう。
駆けつけた警官に逮捕されるしげ。
タマミは命を落とすが、夕子はショックで正常な記憶を回復した。
心の美しさを取り戻したタマミの死に顔は、かってなく清らかだった。
小百合はタマミの墓に、外見に惑わされない人間になることを誓うのだった。
幽霊や妖怪のふりをして脅すという犯罪ドラマは、この頃よくあったが(当時の「ザ・ガードマン」夏の怪談シリーズなんて全部そうだった)、冷静に考えると犯罪としてはかなり幼稚でオマヌケ。
怪談スリラーは作ってみたいけど非科学的なものはイヤ、てな感じなのだろうが、結果的にはかえって説得力のない展開になる場合が多い。
本作でも追い出したって相続権はなくならないだろうって気になってしまう。
まあ、タマミのほうは邪魔者を追い出したかっただけで、財産狙いのことはラストに知ったようだが。
「大怪獣ガメラ」シリーズを手がけた湯浅監督の演出は可もなし不可もなしといったところ。
全体のテンポは悪くないし、ラストもうまくまとめているが、「血を吸う」シリーズのようなショック演出の冴えは見られない。
タマミが小百合を脅そうとカエルを手で引き裂く場面があって、ここが一番怖かった。
それにしても蛇娘、白髪魔その他の造型は何とかならなかったのか。
単に予算の都合というより、作成者のセンスの問題という気がするほどひどい。
余談=村井八知栄は「河童の三平」のカッパのカン子が当たり役。本作以降の消息は知らなかったのだが、「映画秘宝」によるとプロボウラーになったらしい。
蛇娘と白髪魔
ストーリーは基本的にラストまで
紹介してあります。
この作品はDVDが発売されているので
鑑賞が可能です。御注意ください。