原題 ; LET IT RIDE(1989)
 監督 ; ジョー・ピトカ
 脚本 ; アーネスト・モートン
 音楽 ; ジョルジョ・モルダー
 出演 ; リチャード・ドレイファス、デヴィッド・ヨハンセン、テリー・ガー
今日は何かが違うと感じたギャンブル好きの男が経験する最高の一日を描くコメディ。原作のタイトルは「グッド・ヴァイブス」。ツキを感じたら思い切って勝負しろというストーリー。思わず競馬がやってみたくなる危険な映画でもある。
トロッター(リチャード・ドレイファス)はギャンブル好きのタクシー運転手。
仲間のルーニー(デヴィッド・ヨハンセン)が乗客の会話を盗聴録音して、競馬のイカサマ情報を仕入れてきた。大穴となるため、わざと8連敗させた馬が次で勝つというのだ。
今度こそツキが回ってきたと信じたトロッターは、喜び勇んで競馬場に向かう。今日は何かが違う、彼は良いヴァイブを感じていた。
景気づけに一杯やるトロッターだが、周りの男たちに自分の負け犬人生が見えてしまう。彼は上客のみが入れるジョッキークラブが夢だった。
ルーニーは先日の乗客が騎手と打ち合わせているのを見かける。間違いないと確信して50ドル賭けるトロッター。
写真判定にもつれ込むが、見事逃げ切っていた。
馬券売り場の男(ロビー・コルトレーン)から720ドルを受け取り、有頂天のトロッター。負けた仲間たちの態度は冷たい。ルーニーも情報に疑問を持ち、結局買っていなかった。
トロッターは、たまたま通りかかった情報源の乗客に礼を言い録音テープを渡す。男はテープの礼に第3レースの情報とジョッキークラブの入場証をくれた。
有り金全部で勝負したトロッターは、またも大勝利。2450ドルになった。
タイを締め勇んでジョッキークラブへ。金持ちのバーニーと連れのヴィッキーと知り会う。
次のレースはスリと間違われて買えなかったが、予想は外れていた。ますます自分のツキを確信するトロッター。
そこに妻のパム(テリー・ガー)から電話が入った。やめると約束したギャンブルに手を出して激怒している。
一方、ルーニーは有り金全部すって、献血ルームで血を売っていた。
ついにパムが競馬場に押しかけてきて、勝った金を取り上げようとする。
トロッターは何とか逃げ出したものの、次はどの馬を買っていいか分からない。そこで手当たり次第に予想を聞いて、誰も選んでいない馬を有り金全部買った。もちろん超大穴。勝てば6万9千ドル。
すっかり馴染みとなった馬券売り場の男は、トロッターが気に入り警備員に送らせる。
パムは、せっかくの賞金全部で馬券を買われてカリカリ。離婚すると言って帰ってしまった。
馬券は的中。トロッターとヴィッキーは大喜びだが、バーニーは情報を隠したと怒りだす。
気取った連中に嫌気がさしたトロッターは、ジョッキークラブを出た。警備員を一日雇うことにして換金に行く。するとルーニーがノミ屋に追われていた。トロッターは借金を肩代わりする。
だが、せっかくの賞金も税金とこれまでのローンを払えば残らない。家に電話するとパムが酔っ払っていた。それでもトロッターを愛しているのだ。
トロッターがシャンパンとダイヤのネックレスを買って帰ると、パムは酔いつぶれて眠っていた。札束を見せても寝ぼけている。
競馬場の酒場に戻ると、すっかりヒーロー扱い。トロッターは全員で最後の大勝負を提案するが誰も乗ってこない。
トロッターは、たまたま厩舎で見た馬の目が気に入り残金全額を一本買い。不人気40倍が8倍となった。それでも勝てば大もうけ。
負けを心配する警備員にトロッターは言う「女房にプレゼントして、親友の借金を返し、新しい出会いもあった。負けても十分有意義な一日だった」と。
勝負は競り合いになる。仲間たちは自分の勝負も忘れてトロッターの馬を応援する。
酒場のマスターも祈っていた。「勝たせてやりたい、憎めない奴だ」
賭けた馬は2番手から追い込み並んでゴールして写真判定に。トロッターだけは勝利を確信していた。
すっかり機嫌を直したパムもやってきた。「全額賭けちゃったよ」「たかがお金じゃない」
その時、トロッターの勝利を知らせるアナウンスが流れる。二人はしっかりと抱き合うのだった。
ムシの良すぎるストーリーではあるが、単なるギャンブル物にとどまらず。主人公が人生に勝ちや金以上のものを見出していく展開が爽やかで作品を魅力あるものにしている。夫婦の愛情や仲間の友情も、さりげなく織り込まれて演出と脚本の上手さを感じた。
脇の登場人物も良い。馬券売りを演じるロビー・コルトレーンも良い味を出している。彼の当たり役は「ハリー・ポッター」シリーズのルビウス・ハグリッド。
余談その一=ジョー・ピトカはCMやMTVがメインの監督で、残念なことに長編映画は本作とアニメ合成作品「スペース・ジャム」の2本しか撮っていない。音楽をジョルジョ・モロダーが担当しているのもMTVつながりなのかもしれないのだが、特に印象的なスコアは書いていない。
余談その二=テリー・ガーは達者なコメディエンヌで、夫に恵まれない奥さん役が多い気がする。初期に演じていた「警部マクロード」の婦警役も面白かった。
のるかそるか