レース・ザ・サン
 原題 ; RACE THE SUN.(1996)
 監督 ; チャールズ・T・カンガニス
 脚本 ; バリー・モロー
 音楽 ; グレーム・レヴェル
 出演 ; ハリー・ベリー、ケイシー・アフレック、エリザ・ドゥシュク、ジェームズ・ベルーシ
実話にヒントを得て、ソーラーカーの国際大会に出場することになった教師と生徒たちを軽妙なタッチで描く群像ドラマ。
サンドラ・ビーチャー(ハリー・ベリー)はハワイのコナ・パリ高校に赴任してきた。本来は英語教師なのだが、科学を教えることになる。
生徒のダニエル(ケイシー・アフレック)は科学に興味があり、新型サーフ・ボードをデザインしたりしている。彼は義理の姉シンディ(エリザ・ドゥシュク)とうまくいっていない。
サンドラは科学実習の計画が未提出の生徒に、翌日開催される地元のの科学祭を見学するよう命じる。
ダニエルは会場でソーラー・カー用パネルを見て興味を持つ。ソーラーカー・レースの地区大会で優勝すればオーストラリアの世界大会に出られるのだ。
ソーラー・パネルを出展した優等生は高飛車で、一行はトラブルを起こす。
優等生たちを見返したいマルコは、ダニエルが考案したソーラー・カーでレースに参加しようと考える。
相談を受けたサンドラは2ヶ月後のレースには間に合わないと反対するが、結局押し切られた。
理解のない父親に反発したシンディも仲間に加わる。
残り1ヶ月になったが、うまく車体が組み立てられずメンバーはヤル気をなくしてしまう。
困ったサンドラは技術科の教師フランク・マチ(ジェームズ・ベルーシ)に助力を求める。
フランクは落ちこぼれの手助けなどごめんだと拒む。だが、一番の落ちこぼれでデブのギルバートはあきらめきれない。
設計に自信を持っていたダニエルは、ゴキブリを見て新しいデザインのアイデアを思いつく。
メンバーは再び作業を開始した。ついに試作機が走るまでになる。
フランクは万が一彼らが優勝したらオーストラリアへの引率を担当することを約束させられた。
大会当日、午後から曇ると判断したダニエルは家から盗みだしたバッテリーを緊急に搭載。
小柄なオーニの運転でレース開始。でもバッテリーのボルトを締め忘れてすぐにピットイン。
レース中に壊れる車も続出。
天気が崩れることに賭けて、体重は重いが運転のうまいマルコにドライバー交代。
他の車は日差しが弱まり馬力が落ちていく。ところがマルコの車もバッテリーのボルトが緩んできた。
マルコは手でボルトを押さえ、ゴール直前でトップを抜き優勝する。
優勝できなかったスポンサーの太陽電池会社は、あわててダニエルたちに世界大会で自社のソーラーカーを使わせようとする。
ダニエルたちは申し出を蹴って、自分たちのソーラーカーで出場。
現チャンピオンはユーロ代表のハンス・クーリマン。
レースは6日間の日程で行われる。
マルコが運転するダニエルの車は、ジョイントが外れてスタートからつまづいてしまった。偉そうにクレームをつける大会スポンサーにフランクがかみつく。
ようやく修理を終えたダニエル車は大幅に遅れてスタート。
2日目、ダニエル車はロシア車を抜いて最下位脱出。バスで伴走する連中はカンガルーに大喜び。
シンディの運転中、砂嵐に襲われたがフランクの判断で無事だった。
嵐でトラブル車が続出。ダニエル車は好位置に出る。
その夜、サンドラとフランクは焚火を囲む。サンドラは離婚したばかり。フランクは海軍の事故で仲間だったギルバートの父を失い、この地で教師となったのだった。
3日目、メンバーの一人で数学に強いウニはギルバートが気に入り、オーニに変人扱いされる。
ダニエルが道を間違え、危うくマルコとケンカになりそうになる。最下位となりながらも中継地点に辿り着いた。17台がレースを続行している。
その夜、スポンサーがダニエルにわざと負けるよう話を持ちかける。悩むダニエル。二人の姿を見たブラズは不信感を抱く。
4日目、昨晩遊びすぎたシンディは体調不良でドライバー交代。
校則を破って飲酒していたことがばれたシンディは運転メンバーから外される。彼女は父親が離婚したショックから立ち直れずにいた。
5日目、気温が高くなる。オーニが発熱して運転交代。
ギルバートのアイデアで高速ギア運転し、マルコは上位に出ようとする。調子に乗った彼は無理に2台同時に抜こうとする。
その時、前方から2台の大型トラックが迫ってきた。間一髪で避けたが、道をゆずらなかったマルコにハンスは激怒する。
仲間内でもケンカとなり、ブラズはスポンサーと話していた件でダニエルにくってかかった。
いよいよ最終日、運転手は二人だけである。スポンサーのセルティック・チームが1位で優勝。2位以下も次々とゴールしていく。
運転するマルコの様子がおかしくなった。熱中症で錯乱したらしい。
仕方なく自信のないウニが運転を交代。ところが機器がショートして煙を出し始めてしまう。ブレーキが利かず、火を吹いたソーラーカーは崖っぷちに引っ掛かってようやく止まった。
脱出できずパニックになるウニ。ギルバートがフロントガラスを割って救出した。
コナ・パリ高校リタイヤかの知らせに有頂天になったハンスもクラッシュ。
ダニエルが修理に成功したが、登録してある運転手の残りは体重が重すぎるギルバートのみ。
フランクはリタイヤを決めるが、ダニエルが反対。ソーラーパネルを外して軽くし、バッテリーで完走する案を出す。
ブラズが手伝って急きょ改造。修理の終わらないハンスを抜く。
沿道でも声援が続くが、坂道でバッテリーが切れてきた。一行がバスを降りてギルバートを励ます。
ハンス車に追い抜かれはしたが、坂を登りきることに成功した。最後の下り坂は体重が物を言ってスピードが出る。
慌てたハンスは転倒。前輪が外れて火花を散らしながらもコナ・パリ高校は完走を果たした。
観客が一斉に押し寄せてくる。すっかり話題をさらわれたスポンサーは渋い顔。
ハワイに戻った一行は浜辺で儀式を行う。ヤシの実に花、レースのドライバー・タグ、シンディはアルコールのビン、フランクは葉巻、そしてサンドラは結婚指輪を入れて火をつけ流すのだった。
「クール・ランニング」や「アフリカン・ダンク」などの実話を元にしたスポーツ・コメディが流行ったころの一本。
派手な見せ場はないが、テンポ良くきっちりとまとめて好感の持てる作品に仕上がっている。
バッテリーに頼って勝利を得たり完走を果たしたりする展開は、ちょっとソーラーカー・レースのエコ精神に反する気もするが。
地獄の女スーパーコップ」とか「クライムTOダイ」とか、トレイシー・ローズ主演でボンクラ・アクションを撮ってたチャールズ・T・カンガニス監督にしては上出来の部類で劇場未公開なのが残念。
エリザ・ドゥシュクも出ていることだし、DVD化してほしい作品。