シー・ウルフ
　原題　；　THE　SEA　WOLF(1993)
　監督　；　マイケル・アンダーソン
　脚本　；　アンドリュー・Ｊ・フェナディ
　音楽　；　チャールズ・バーンスタイン
　出演　；　チャールズ・ブロンソン、クリストファー・リーヴ、キャサリン・メアリー・スチュワート
「荒野の呼び声」が有名なジャック・ロンドンのもう一つの代表作「海の狼」をドラマ化したテレフューチャー。
ＩＭＤｂを見ると「海の狼」はこれが少なくとも９回目の映像化。その後１９９７年にはドイツで映画化され、現在ティム・ロスやネーヴ・キャンベルの出演でテレビ・ミニ・シリーズ版が製作中らしい。
親の遺産で暮らす作家ハンフリー・ヴァン・ウェイデン（クリストファー・リーヴ）は友人のパーティーに出席していた。
退屈したハンフリーは小型フェリーでシスコへと向かう。船上で彼は幸運のマスコットを落として捜しているフラクセン・ブリュウスター（キャサリン・メアリー・スチュアート）と出会う。
マスコットを見つけた途端、警察が踏み込んできた。フラクセンと父親はスリの常習犯だったのである。
その時、フェリーが大型客船に衝突され、瞬く間に沈んでしまう。
ハンフリーは気絶しているフラクセンとともに海を漂う。彼は一隻の帆船を見つけた。
それはウルフ・ラーセン船長率いるゴースト号だった。
ハンフリーは船上で意識を回復するが、フラクセンは出血がひどく意識不明のままだった。
ラーセン船長はハンフリーを無理矢理キャビンボーイにしてしまう。ラーセンはゴースト号の法律なのである。
この仕事はこの船で一番下の階級であり、ハンフリーは船員のクッキーに威張りちらされる。
そんなある日、ハンフリーは船長室の書架にシェークスピアやミルトンなどの文学書が並んでいるのを見つける。
ラーセンは今まで素面（しらふ）のときのピカード医師しか話し相手がいなかったと言う。
ハンフリーは船長にクッキーが自分の財布を盗んだ話をする。叩きのめして取り返せ、というのがラーセンの答えだった。
ピカード医師は、フラクセンのうわごとで彼女が泥棒と知った。ハンフリーは二人の秘密にしてフラクセンの尊厳を守ろうと提案する。
今回初めて乗船したジョンソン（マーク・シンガー）は、不満ばかりもらしていた。ラーセンは彼を叩きのめして嵐の海の見張りにつかせる。
ジョンソンは何昼夜もマストの上で見張りを続けさせられた。このことが原因で船長への不満を漏らす船員も出始める。
意識を取り戻したフラクセンは、父親の死を知った。
ジョンソンを降ろすように進言するハンフリーに、ラーセンは命など価値がないと言い返す。
ラーセンは叛乱が起きかけていることも気づいていた。ついに彼はジョンソンを降ろすことを承諾する。
回復したフラクセンにラーセンは船室を与えた。
ハンフリーは、アザラシ漁に向かっているというゴースト号の目的が他にあるのではないかと疑っている。
ピカート医師は、たまたま大晦日で飲んでいたときに少年の急患があり手術に失敗して死なせ、それ以来酒びたりになったという過去があった。
ラーセンはトランプでクッキーから１８５ドルを巻き上げた。それはハンフリーが盗まれたのと同額だった。
手にした者に権利がある、と船長はハンフリーに言う。
ハンフリーは、いつか出版しようと船上のことを日記につけていた。ラーセンは彼に生い立ちを話す。だが、途中で眩暈（めまい）を起こして黙り込んでしまう。
ハンフリーはピカードに船長の頭痛について相談する。医師も気づいているのだが、直す手立てはなかった。
ハンフリーは、初めてクッキーにやり返す。
ある夜、クッキーは船室に忍び込んでフラクセンを襲おうとする。気づいたハンフリーが飛びかかる。
ハンフリーは、ナイフに傷つきながらもクッキーをマストに叩きつけてぶちのめす。彼は、あやうく止（とど）めを刺しそうになるが、笑いながら眺めているラーセンに気づき思いとどまる。
ラーセンは、ハンフリーを調理室長に昇進させた。
フラクセンは、父が元手品師で金持ちしか狙わないデュマの作品に登場する人物のようだったと話す。
ゴースト号の船員はアザラシ狩りの名目で小舟を出し小島に上陸したが、実際は海賊行為をしているようだった。
ゴースト号の隠し部屋に大砲が積まれているのを船員のリーチたちが発見した。
アル中を治したピカードは船を降りて長年住んだサンタバーバラにかえって結婚する決心をした。しかしジョンソンがラーセンを狙って投げたアイスピックが彼の胸に刺さり命を落としてしまう。
ピカードの葬儀とともに、ゴースト号から人間性が消え失せていった。
ラーセンの頭痛はひどくなり、このことをバラしたら殺すとハンフリーを脅す。
船長はジョンソンの死刑を宣告した。
その夜、船長と航海士チャンドラーが船員たちに襲われ海に落とされてしまう。
だが、ラーセンは甲板に這い上がってきた。犯人について見ていた者も口をつぐむ。
船長室でラーセンはハンフリーに銃を渡し、俺を撃ってみせろと挑発する。
ラーセンは撃てなかったハンフリーに、何も変っていない、買いかぶっていたと言う。
翌朝、ラーセンは叛乱分子もジョンソンも許し、マケドニア号襲撃を提案する。マケドニア号の船長はラーセンの兄デスだった。
船長はスパイとしてクッキーを告発。クッキーは船員たちに海に落とされる。
サメの姿を見つけた船員たちはあわててクッキーを引き上げるが、片足を喰われてしまう。
今度はクッキーが船長への殺意に燃えるようになる。
ラーセンは兄を殺そうとする動機を詳しく語らない。だが、彼の頭痛は兄に殴られた後遺症だという。
フラクセンは船長に自分が泥棒だったことを告白した。
ハンフリーは、フラクセンとともに小舟で脱走する計画をたてる。
操舵の当番を替わり舵を固定して時間を稼ぎ船を出す。
マケドニア号襲撃に賭けるラーセンは二人を追おうともしない。
小舟は嵐に遭って荷物を失ってしまう。小舟で漂流する二人は砲声を耳にした。
二人は沈没しかけて漂流するゴースト号を見つけ、ハンフリーが食糧と水を求めて乗り込む。
するとラーセンが縛られていた。船員全員が兄デスに寝返ったのだ。
船と運命をともにする気のラーセンは、ハンフリーを道連れに船長室に閉じこもる。
追ってきたフラクセンは自分もハンフリーとともに死ぬと言い切る。
その毅然（きぜん）とした態度に打たれたラーセンは二人を逃がす。
ハンフリーの漕ぐ小舟が離れていくと、ゴースト号は波間に沈んでいく。
やがて二人は陸地を発見するのだった。
原作は読んでいないので、どの程度忠実なドラマ化なのかは分からない。
理由の語られない復讐に執念を燃やし船と運命を共にするウルフ船長の姿はジュール・ヴェルヌが生み出したネモ船長を連想させて興味深かった。
残念なことは愛妻ジル・アイアランドを亡くし７０歳を超えたチャールズ・ブロンソンは枯れてしまい往年の迫力が感じられないところ。
せめて１５年くらい前だったら良かったのにと思う。
以前紹介した「汚れなき瞳の中に」にも出ていたレン・キャリオーが儲け役のピカード医師を好演している。
若い二人を演じたクリストファー・リーヴとキャサリン・メアリー・スチュワートはいまいち見せ場がない。これもちょっと惜しく感じた。
マイケル・アンダーソン監督の演出は、まあ手堅くまとめたというところ。５０年のキャリアを持つが８０歳を迎えて、さすがにこのところ新作を撮っていない。１９７０年代以降に、これといった作品を撮っていないのが残念。