原題 ; SERIAL MOM(1994)
 監督 ; ジョン・ウォーターズ
 脚本 ; ジョン・ウォーターズ
 音楽 ; バイジル・ポールドゥリス
 出演 ; キャスリーン・ターナー、サム・ウォーターストン、マシュー・リラード
キャスリーン・ターナーが、ブチ切れ殺人鬼ママに扮したブラック・コメディ。
サトフィン家は一見普通の中産階級。ママ、ビヴァリー(キャスリーン・ターナー)、歯科医の夫ユージン(サム・ウォーターストーン)、長男チップ(マシュー・リラード)、長女ミスティ(リッキー・レイク)の4人暮らし。
青空の景色から始まり、オール・アメリカンな中流家庭の朝食描写。
そこに二人の刑事がやってきて、近所のドッティ夫人に嫌がらせの手紙が届いたという。切り抜いた活字を貼り合わせたものだ。
にこやかに対応するビヴァリーだが、刑事が帰ると早速ドッティ夫人に嫌がらせの電話。
スーパーの駐車場でビヴァリーが狙った場所に、そうとは気づかずドッティ夫人が車を停めてしまったことを根に持っているのだ。
チップのホラー映画マニアぶりを、家庭に問題があるのではないかと詮索したスタビンズ先生は車で轢き殺した。
学生のルー・アンが目撃したが、彼女はヤク中で有名だった。
すっかり興奮したビヴァリーは、夜の営みも激しかった。
翌日、刑事が聞き込みに来た。目撃された青いワゴンに乗っているのは、父兄の中でビヴァリーだけなのだ。しかもサトフィン家にある雑誌の文字が切り取られているのを見つけた。
ゴミ収集人と仲の良いビヴァリーは、ゴミの分別をしないローズマリーの悪口を言い合う。
ビヴァリーはローズマリーの家に行って陶磁器の卵を割り、ドッティに罪をなすりつける。
ユージンの歯科医院に刑事がやってきて、ビヴァリーが猟奇殺人に関する本をまとめ買いしていたことを突き止めたという。
ミスティをふったカールがガールフレンドを連れて蚤の市にやってきた。いちゃいちゃする二人に腹を立てたビヴァリーは、ローズマリーが買った火かき棒を手にトイレで襲撃。見事刺し殺した。
抜いた火かき棒の先に内臓がくっ付いてくるのは、ハーシェル・G・ルイス監督へのオマージュなのだろう。「悪魔のはらわた」っぽい気もするが。
カールのガールフレンド役にはトレイシー・ローズがゲスト出演。監督の前作「クライ・ベイビー」で起用した関係だと思う。恋人を殺されても、すぐ刑事に色目を使うヴァンプぶりを発揮。
死体が見つかって会場は大騒ぎ。ローズマリーは、ビヴァリーの靴や火かき棒に血が付いているのを見つけてドッキリ。
ミスティは、自分たちが嫌っている人間を母親が殺しているのではないかとチップに話す。
刑事は、ローズマリーやドッティから、ビヴァリーの異常行動に関する証言を集めていた。
夕食のときスコッティがビヴァリーを疑っているという話題が出た途端、彼女は姿を消す。家族はスコッティを殺しに行ったに違いないと大慌て。
ビヴァリーは日曜に治療の予約を入れてバード・ウォッチングの邪魔をしたスターナー家に侵入。ハサミで妻ベティを刺殺。夫ラルフは表に逃げたところに窓からエアコンを落として片付けた。
家族はスコッティの家に駆けつけるが、彼はエロビデオを見ながらマスの真っ最中だった。何も知らない家族は思い過ごしだったと、ひと安心。
翌日、ついに警察はパトカーを連ねて派手な尾行を開始。家族もラジオでスターナー夫妻の死を知って愕然。しかも容疑者はビヴァリーだと報道する。
それでもビヴァリーはとぼけ続けるが、顔を見た近所の人間は叫んで逃げ出す有様。
日曜の教会でも注目の的。ハサミの指紋がビヴァリーと一致して、ついに逮捕状が出た。ビヴァリーのくしゃみが発端となって教会はパニックに。
ドサクサまぎれにビヴァリーはチップとともに逃亡。彼はバイト先のビデオ店にかくまう。
ビデオを巻き戻さずに返したババアがいたので、早速ビヴァリーは家までつけて叩き殺す。
その現場をスコッティに目撃されたビヴァリーは、包丁を手に追いかける。車に飛び乗った彼に「シートベルトをお締め」と包丁を振りかぶる逃げられてしまい、バンを奪ってさらに追う。
ライブ・ハウスに逃げ込むスコッティ。有名な殺人鬼ママは人気の的。すぐに入れてもらえた。
スコッティめがけて照明を落としたうえ、スプレーをバーナーにして火をつけた。ステージで倒れたスコッティに、ロック歌手がアルコールを吹きかけ、さらに燃やす。
さすがのママもここで逮捕。ライブの観客からは「シリアル・ママ」のシュプレヒコールが起こった。
やがてビヴァリーの公判が始まる。彼女は弁護士を解雇、自分で弁護すると言い出す。
あくまで無罪を主張するビヴァリー。
証言台に立ったドッティはビヴァリーに挑発され下品な悪態をついて法廷侮辱罪で逮捕され退廷となった。
ミスティはシリアル・ママ・グッズで荒稼ぎ。チップも事件のテレビ化版権で一儲け。ママ役はスザンヌ・ソマーズに決定した。
ルー・アンの証言はヤク中で信憑性がない。
サトフィン家のゴミ箱から殺人関係の本を入手した刑事も、ゴミ収集人が味方するビヴァリーが反撃。刑事のゴミからポルノ雑誌を手に入れていた。
ローズマリーもゴミ分別をしていなかったため、陪審員の心象が悪い。
そのうえ法廷にスザンヌ・ソマーズが現れたため、裁判官も証人も気がそぞろ。
のぞき魔ピックルスがカール殺人を目撃していたが、ビヴァリーは机の下で股を開閉させて興奮させ証言をくずしてしまう。
スザンヌ・ソマーズは、善良な主婦が濡れ衣を着せられたと記者会見。
2日後、冤罪を主張するビヴァリーはついに無罪を勝ち取る。家族は戦々恐々。
自由の身となったビヴァリーは、早速秋なのに白い靴を履いていた陪審員の女をブチ殺すのだった。
この陪審員を演じているのは新聞王ハーストの孫娘パトリシア・ハースト。誘拐事件されテロに参加したことで有名。
最後にビヴァリー・サトフィン本人は映画に対する協力を一切拒絶したとのテロップが出る。
テロップ通りビヴァリー・サトフィンは実在の人物らしいのだが、ジョン・ウォーターズ監督のぶっとんだ演出ぶりは、とても実録物とは思えない。
キャスリーン・ターナーのブチ切れオバサン怪演ぶりが圧巻。他の登場人物も皆エキセントリック。
夫役のサム・ウォーターストンは知的な役柄の多いヴェテラン俳優。個人的にはジェリー・シャッツバーグ監督の遅れてきたニュー・シネマという感じだった「スーパーカー・フェラーリ青春の暴走」で演じたストッカード・チャンニング扮する車泥棒の不良娘に翻弄される弁護士が印象深い。
長男役のマシュー・リラードは「スクービー・ドゥー」シリーズのシャギーが当たり役。幅広く活躍する個性派だが、オタクっぽい役が一番似合う気がする。
シリアル・ママ