年度 ; (1971) |
監督 ; 山本迪夫 |
脚本 ; 小川英、武末勝 |
音楽 ; 真鍋理一郎 |
出演 ; 藤田みどり、江美早苗、高橋長英、岸田森、大滝秀治、高品格 |
名優・岸田森がアタリ役となった吸血鬼で登場する記念すべき作品。 神秘的な雰囲気を強調するためか、吸血鬼に名前がなく「影のような男」とクレジットされている。 柏木秋子(藤田みどり)は、幼い頃逃げた飼い犬を追って妖しい洋館に迷い込んでしまい、女の死体と影のような男(岸田森)を見た記憶を持っていた。だが、成長した今となっては思い出せるのは男の無気味な眼だけだった。 富士見湖畔に住む画家志望の秋子は中学教師をしながら絵を描いていた。 新作の絵にも無気味な眼が描き込まれている。 秋子がいつも寄るレスト・ハウスに白い棺が届けられた。雇われ人の久作(高品格)が蓋を開けると中はすでに空。その背後には影のような男が迫っていた。 秋子は妹の夏子(江美早苗)と二人暮らし、医者の佐伯(高橋長英)と婚約している。 秋子は約束の作業に来なかった久作を訪問するが、そこには影のような男がいた。 あわてて逃げ出す秋子。 ある日、佐伯の病院に富士見湖で発見された女性が入院してくる。女は怪我もないのに異常に衰弱していた。 愛犬レオが草叢で死んでいるのを見つけた秋子は、久作に襲われレスト・ハウスに連れ去られてしまう。 秋子は牙をむいた男に襲われそうになるが、釣り客が来たため助かる。 草叢に戻るとレオの死体はない。家に帰ると夏子の姿も消えていた。 電話で佐伯に助けを求める秋子、そこに散歩していた夏子が帰ってくる。 秋子は夏子にレオや久作のことを話すが取り合ってもらえない。 その夜、病院では入院していた女が逃亡しようとして墜落死した。 同じ夜、夏子は森の中で男に血を吸われていた。 朝になると、いつの間にか戻っていた夏子は秋子に外出などしていないと言う。 秋子が佐伯を伴ってレスト・ハウスに行くと、久作は謎の男が新しい経営者だととぼける。 急患で呼び出された佐伯を送った秋子が部屋に戻ると、そこには謎の男がいた。 一方、佐伯が運転する車の後部座席には久作が潜んでいた。 佐伯は久作に襲われ車外に逃げ出し、追ってきた久作は落雷にあって倒れる。 男は秋子に襲いかかるが、佐伯が戻ると姿を消した。 湖のほとりに倒れていた夏子は、死んだら身体を焼いてと言い残して死ぬ。 佐伯は、秋子に催眠術をかけて幼い頃の記憶を調べようとする。 十八年前、故郷の能登でレオを追いかける幼い秋子。洋館、怪しい老人(大滝秀治)、ピアノの椅子で死んでいる女。 そのころ霊安室に置かれた夏子が蘇えり、看護婦に襲いかかっていた。 発見された看護婦の首筋には二つの傷があった。 佐伯と秋子は、十八年前に秋子が見たものを確かめるため能登に向かう。 記憶を辿って二人が歩いているとレスト・ハウスに棺桶を運んできたトラックが道端に停まっており、運転手が血を吸われて死んでいた。 その先には無気味な洋館が佇んでいる。中には記憶の通りピアノがあった。 記憶が蘇えってきた。口から血をしたたらせた男、秋子を逃がしてくれた老人。 2階の奥には老人が死んで朽ちていた。傍らの小机には老人の日記があった。 老人の一族には吸血の遺伝があり、成長した息子が発症して妻を殺した。老人はそこに迷い込んだ秋子を逃がし息子を監禁したのだ。 その息子は一度死に、蘇えって脱走し秋子の元に現れたのだ。 そこに男が襲ってきた。怪力を発揮して佐伯を追い詰める。 その時、息を吹き返した老人が男の足をすくった。 手すりを壊して落下した男の胸を木材が貫いていた。 絶叫しながら溶解し亡んでいく男。 呪縛が解けた夏子も安らかな死に顔となっていた。 姉妹の確執を絡めて描かれるドラマは良く出来ているのだが、終盤で洋館に舞台を移すあたりの展開が急なのと、クライマックスがやけにあっけないのが残念。 山本監督は、植物的なイメージということで岸田森を選んだと語っている。確かにクールな印象で登場して、突然形相を変え牙をむいて怪力を発揮する岸田森の吸血鬼ぶりは出色の出来。 余談その一=岸田森が吸血鬼を演じるにあたってネックとなったのが身長だったらしい。やっぱり吸血鬼はクリストファー・リーみたいに長身で威圧感を与えた方がいい。ということで岸田森はハイヒールを履いて演じたとのこと。個人的にも、このハイヒールがいたく気に入ったらしい。 余談そのニ=「血を吸う人形」の併映作は山本監督による酒井和歌子主演のサイコ・スリラー「悪魔が呼んでいる」。「血を吸う眼」の併映作はやはり山本監督のサスペンス映画「雨は知っていた」。プログラム・ピクチャーが生き残っていた時代とは言っても、同じ監督の新作2本立ては珍しく、それを2年続けたのは快挙といえるのではないかと思う。 |