原題 ; VERY IMPORTANT PERSON(1961)
 監督 ; ケン・アナキン
 脚本 ; ジャック・デイヴィス、ヘンリー・ブライス
 音楽 ; レッグ・オウエン
 出演 ; ジェームズ・ロバートソン・ジャスティス、スタンリー・バクスター
捕虜収容所を舞台としたイギリス製脱走コメディの佳作。
アメリカでのタイトルは「A COMING OUT PARTY」。オープニングとエンディングに登場するテレビ番組のことらしい。
モノクロだがけっこうファンの多い作品で、ちょっと前にも衛星放送でオンエアされていた。
主人公は大男で天才の科学者というのがユニーク。
テレビの回想番組として話は始まり、イギリス最高の頭脳アーネスト・ピーズ卿(ジェームズ・ロバートソン・ジャスティス)が戦時中のエピソードを話し始める。
1942年、応用航空科学を研究していたピーズ卿は、軍の依頼でドイツ上空の偵察飛行に参加。
ヒゲを剃らないため海軍将校として乗り込むが、対空砲火で生じた機体の亀裂から落っこちてしまう。
捕虜となったピーズ卿は身分を偽り続け、ファーロー中尉と名乗る。
同室となったグラシーはスパイだったがピーズ卿はボロを出さず、お調子者のクーパーと共に小物として収容所に送られる。
ピーズ卿の入った部屋ではトンネルを掘っていた。メンバーはお調子者のクーパー(レズリー・フィリップス)とベインズ、トンネル掘りに命をかけるジョック(スタンリー・バクスター)など。
急いで帰国しなければならないピーズ卿は脱走計画について尋ねるが、かえって信用されず誰も話さない。
所長(スタンリー・バクスターニ役)の閲兵でも本を読み続けるピーズ卿は所長と対立、所長の足を蹴飛ばして独房行きとなる。直後に所長の手入れがあったことから密告者と疑われてしまう。
一週間は楽しめるはずだったクロスワード・パズルをピーズ卿があっという間に解いてしまい、さらに反感を買う。
だが、チャーチル首相からの暗号が収容所に届き疑いは晴れ、ピーズ卿の脱走は所内の最優先事項となる。
まずは脱走騒ぎを起こし、同時にピーズ卿はトンネルに隠れ、まず存在そのものを消してしまう。
他の連中から出るアイディアは厚紙で気球を作るとか、軍用犬の皮を被って犬のふりをするとか実現性のないものばかり。
そこでピーズ卿は、視察に来る三人のスイス委員に化けて脱走する計画をたてる。
歩哨は交代してしまうので違う人間が出ても分からない。
問題は所長だが、ジョックに変装させることにした。
だが、そこにスパイのグラシーが入所してくる。探りを入れてくるグラシーを警戒してごまかすクーパーたち。
いよいよ当日、委員の書類を持ち出して偽造する脱走委員。
小心なジョックは落ち着かない。
変装にコートが必要になったピーズ卿は会議中の委員の背後で持ち去ってしまう。歩哨が変わるなら服装が変わっても構わない気もするが。
グラウンドで騒ぎを起こし所長を巻き込み、その隙にゲートに向かう三人と所長に変装したジョック、見送り役の捕虜委員。
そこにピーズ卿に気付いたグラシーが銃を持って現れるが、所長がニセモノと分からなかったのが運のつき、後ろから殴り倒されてしまう。
後はゲートを堂々と通り抜けるだけだった。
オフィスにふらりと戻ったピーズ卿。クーパー、ボンゾとは、はぐれてしまったらしく捕まったと思っており、秘書に収容所へ食料やクーパーの好きなヌード雑誌の差し入れを指示する。
そこに二人が無事救助されたとの知らせが入った。ピーズ卿は差し入れをキャンセルしてストリップ劇場のチケットを手配させるのだった。
そして再びテレビ・スタジオ。ピーズ卿の前にはかっての戦友たちが次々と姿を現していた。
ボンゾは人気デザイナー、クーパーはインドの伝道師、ジョックは葬儀社社長、所長は何故かセルフ・パロディ的にドイツ軍人を演じるコメディアンになっていた。
大笑いする場面はないのだが、尊大なピーズ卿と正体を知らない他の連中のやりとりとか、人を食った脱走方法とか、思わずニヤリとしてしまう場面が随所にある。
後に「史上最大の作戦」(共同監督)「バルジ大作戦」「素晴らしきヒコーキ野郎」などの大作を手がけるようになるケン・アナキン監督だが、個人的には本作が最高作と考えている。
余談=ジェームズ・ロバートソン・ジャスティスはバイ・プレイヤーとして多彩な活躍を見せた俳優らしい。「ナバロンの要塞」ではゲスト・スターとして出演オープニングでグレゴリー・ペックに任務を与えるジェンセン指令を演じ、冒頭のナレーションも務めた。

謎の要人悠々逃亡!