原題 ; WEB OF DECEPTION(1989)
 監督 ; デヴィッド・チャン
 脚本 ; ルイ・ファー
 音楽 ; チュウ・マンホイ
 出演 ; ジョイ・ウォン、ブリジット・リン、ポーリン・ウォン、エリザベス・リー、レイ・チーホン
主演女優三人の演技で見せる香港製サスペンス映画。
ビデオ・パッケージのキャッチコピーは「ジョイ・ウォンが1人2役に挑む、超一流エロテュック・サスペンス!!」。裏にも「妖しく淫美な双子姉妹の血がうずく」とあるが、エロティックな見せ場は全くない。
女弁護士ジェーン・ラム(ブリジット・リン)のもとに脅迫状が送られてくる。内容は5年前に依頼人の遺産を着服した件で、要求金額は100万ドルだった。
株の投機で出した損失を埋めるためにジェーンがサインを偽造してニセの遺書を作ったのだ。
ジェーンはカナダ移住を目前にしていた。彼女は、アシスタントのメイ(ポーリン・ウォン)に犯人探しの協力を依頼する。
だが、そのメイが犯人だった。移民局から移住が認められず置いていかれることを恨んでの犯行だった。
悩んだメイは証拠を焼こうとしてボヤを出し、ルームメイとのクァン(ジョイ・ウォン)に見つかってしまう。
クァンは、メイが犯行を諦めたことを知り、元気づける。
刑務所に入っていたクァンの妹ウォン(ジョイ・ウォン二役)が出所してきた。ウォンはヤクザに借金があり、人違いされたクァンが脅されてしまう。
クァンはメイに相談した。メイは、ジェーンが証券を売って現金化した金を盗み出すよう手引きする。
クァンはジェーンの屋敷に向かうが、不審に思ったウォンが尾行していた。
ジェーンはパーティーに出席しているはずだったが、寝過ごして出遅れておりウォンと鉢合わせしてしまう。
もみ合う二人。ジェーンがペーパーナイフでクァンを刺すと、クァンは引き出しを壊すために持ち込んだ斧の上に倒れこんだ。
ジェーンはメイに助けを求める。
クァンの後から忍び込んだウォンは姉の死を看取り、その死体を隠す。
駆けつけたメイはウォンをクァンと勘違いする。ウォンは適当に話を合わせる。
メイは、脅迫状の件がばれるので警察に通報するのはまずいとジェーンを説得した。
ジェーンは証券会社のミミを疑う。
クァンのアパートに戻ったウォンは取立て屋に襲われる。
屋上から隣のビルに飛び移って逃げるウォン。彼女は後を追って飛んだ取立て屋を突き落とし殺してしまう。
ウォンはマッサージ嬢と称してジェーンの屋敷に上がりこむ。
メイは地下室に隠してあったクァンの死体を発見した。
ジェーンの恋人のリー警部補が訪ねてきた。リーは、ジェーンが未登録のショットガンを持っているのを見つけ弾丸を没収する。
メイは、女がクァンの妹であることに気づき問いただす。
リーは地下室で変な臭いがすると言い出す。メイとウォンはネズミのせいにする。
今度はジェーンが死体を見つけてしまう。今度こそ警察に通報しようとするジェーンをメイは死体を埋たほうが良いと説得する。
ウォンはジェーンを殺して金を奪うと言うが、メイは金は自分が盗むからジェーンを殺さないように頼む。
ジェーンは金を銀行に預けるように渡す。メイは銀行に電話を装おうが、電話のコードが切られていることに気づいたジェーンは金を預けるのはやめたと言う。
一方、ウォンは料理に薬を仕込んでいた。
ウォンとメイの会話を聞いたジェーンは死体の顔を確認。ウォンが姉の敵討ちに来たことを知る。
いよいよ晩餐が始まりジェーンとメイは戦々恐々、結局ほとんど食べない。
そこにミミが怒鳴り込んできた。彼女は自分がジェーンに脅迫されたと勘違いして小切手を持ってきていた。
ジェーンは、その小切手の裏に警察を呼ぶように書いてミミに返す。だがミミはウォンに殴り倒されてしまう。
メイは脅迫の主が自分であることをジェーンに告白し、命を狙っているウォンに気をつけるよう忠告する。
ジェーンは板でメイを殴り倒して斧を奪う。家の外に出たジェーンは後部座席にクァンの死体を積んだ車で逃げ出す。
クァンの死体の下にはウォンが隠れていた。ショットガンを突きつけるウォン。ジェーンは急ブレーキを踏んで、包丁でウォンの手に斬りつける。
ショットガンを落としたウォンは包丁を奪って切りかかる。もみ合ううちに頭を打ってジェーンが気絶してしまう。
山の坂道を暴走する車。ウォンはあわててハンドルを握る。
気を取り戻したジェーンはブレーキを踏むが間に合わず衝突。負傷して這い出したウォンにジェーンは銃を向ける。
そこにトラックが向かってきた。ジェーンは思わずウォンを助ける。
後日、ジェーンは移住の準備を進め、ウォンは過去を捨てて生きようとしていた。
だが、汚職や横領の容儀でジェーンのもとに捜査が入ってきた。
すべては明らかになりジェーンは詐欺罪で懲役4年弁護士資格剥奪。メイは脅迫で懲役2年。ウォンは過失致死で懲役5年。ミミは証券取引法違反で執行猶予2年に処せられたのだった。
香港映画としては脚本がしっかり書き込まれており、水準以上の作品に仕上がっている。スタイリッシュというほどではないが、演出もなかなかシャープ。
クライマックスで、もうひとひねりしてあれば傑作になったのではないかと思う。ただなんとなく警察の捜査が入ったというのではなく、些細な一つのミスから事件の全てが明らかになってしまう、といった皮肉な展開が欲しかった。
主演女優三人のかけ引きも(香港映画なので多少演技オーバーな面もあるが)けっこう楽しめる。
蜘蛛に抱かれた女